第2話 どっかで見たことあるような……
大半の人が初日は親を探す小鹿みたいになってる。
小学生の頃から毎年経験しているけど慣れない、クラス替えとはそういうものだと俺は思っている。
今日もどうせそうなのだろうと思い少しの不安を感じていた矢先、聞き覚えのある声が聞こえた。
「うわ勇作と一緒のクラスかよ!最悪じゃん!」
嬉しさをこぼしながらそう言ったのは
嘘下手かよ。舞い上がってるせいでボケ雑になってんぞ。実際、普段の奴はもっと鋭い。俺は今思ったのとは別の本音を言ってみた。
「俺は直哉と一緒で嬉しいけどな」
「うわきもっ」
相変わらずふざけた野郎だ。多分言われてニヤニヤしてるお前の方がきもいぞ。何でこんな奴と仲良くなったんだったかな。
そんなこと思いながらニヤニヤしてると、直哉がさっきの悪口から続けた。
「てかさてかさ、環奈ってどのクラスになったか知ってる?」
「いや知らないけど……また同じになれれば良いよな」
「だよなー。いやーマジで来てくんねぇかなー」
相変わらず正直な野郎だ。
こいつの言う環奈とは、
ちなみに俺と直哉と環奈は1年の時同じクラスだったので、3人共仲が良い。例によって直哉は環奈のことが好きらしく、その事実を直哉本人が俺に言ってきたせいで途中からアイツの手伝いをする羽目になった。でもそのくせ環奈にまだ告ってないのが、彼の以外なところであり彼らしさでもある。まぁ気持ちは分かるけど。
俺と直哉がこんなやりとりをしていると、ガラガラと教室のドアが開いて美少女が入ってきた。そいつは今まで続々と入ってきていた女子とは一線を画す整った顔つきをしていて、心無しかオーラを纏っていた。既に入室済みの10名程度の男子達が一斉に視線を飛ばしたが、彼女の方はそんなこと慣れていると言わんばかりにまるで気にしてない。そして俺と目が合った。
「あ!勇作に直哉じゃん!」
そう言うと彼女は、背中まである明るい茶色の髪を揺らしてこちらへ向かって来た。が、4歩目の右足を前に出したところで急ブレーキをかけて来た方を振り返った。
「ほらキョー、行くよー」
その声に引っ張られるように、もう1人美少女が入ってきた。その子は美少女と言うより天使に近く、俺は一瞬で視界を掴まれた。後頭部のしっぽをふりふり揺らしながら足早に天使がこっちに向かってくる。心臓がキュッと縮んだ。この時死んでもおかしくありませんでしたと俺は後に語ることになる。
「やー、今年も一緒じゃん!2人共よろしくー!」
「おおおおお!よろっす環奈!」
直哉の頭の悪い返答に引っかかって俺は我に返ることができた。あー、良かったなー直哉。否、本当に良かったのは俺の方である。
今更になるが、これは4月6日の話だ。
翌日あんなことになろうとは、この時はまだ思うはずもない。なにせ俺は、既にあのポニーテールの天使に心を預けて、頭の中のお花畑に水やりを始めていたわけなのだから。ちなみにガーデニングの趣味は無い。
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