幕間
後日談:クリスマスは今年もやってくる
冬休み二日目であり、如月信男の誕生日の翌日、12月25日はもちろんのことながらクリスマスである。
信男のクリスマスは今までとは一味も二味も違うだろう。
「クーリスマスはこっとっしもやーってくるー♪」
鼻歌交じりに近くのモールへと足を運んでいた信男だった。彼の目的はそう、クリスマスデート。集合スポットでもある「けやっとくん像」の前に堂々と待つ。すると小走りでこちらに向かってきた女性が現れた。札杜あやだった。彼女はポニーテールに青いマフラーをして愛らしい顔の半分くらいをかくしていた。
「すいません、待たせましたか?」
「ううん。待ってないよ。あやの今日の髪型いいね!」
「た、単なるポニーテールですよ!?」
「いやいや、ポニーテールは正義だから。なんというか、グッとくる?」
「はやく、い、行きましょう!//」
あやをつれて商店街を歩く。今日は体育祭できらりとのじゃんけんを制したあやが気になっていたという映画を見る約束をしていた。信男はベタなデートでもクリスマスにやることならばなんでも特別だと感じていた。しかも人生で初めてのちゃんとしたデートとなると内心は非常にアガッている。
「そういえば聞いてなかったけど、何の映画見るんだっけ?」
「それは、行ってからの秘密です! はやくマスターと一緒に見たいです。」
「なあさ、今日だけはさ、マスターって呼ぶのやめない?」
「えっ// ではなんと?」
「下の名前でいいよ。」
「じゃあ、の、信男さん…?」
「なに?」
「映画館、、つきました。」
商店街にある大きな映画館。そこには俺の好きなアニメの映画やら恋愛ものまで様々なポスターが張られていた。信男は恋愛ものを見る覚悟をしていた。信男は自ら恋愛ものを見ることはないのでより緊張感があった。あやはいつもより上機嫌になってポップコーンを買いに行っている。映画館の受付にはやはりクリスマスということもあってかカップルか、親子連れがたくさんいる。昔の信男なら唾を吐いていたかもしれないか。今の彼は余裕があるのか優しいため息をついていた。あやの方はどうやら買い終わったようで戻ってくると
「じゃあ、行きましょうか。」
「うん。」
受け付けに行くとあやは二枚分のチケットを渡してくれた。恥ずかしながら空いた手で二人は手をつないだ。自分たちの観るシアターに着くと信男は少し嫌な雰囲気を察した。というのもシアターにはこれから見る映画のポスターが張られているのだ。そのポスターはどう見ても恋愛ものではない。血が滴ったような文字で書かれている。
「私、実はホラー映画好きなんですよ。好きな人や恋人ができたら一回は行きたいなって…。だめ、ですか?」
「い、いや!? だだだだだ大丈夫だよ!! 全然平気!! ちなみに血とか出る?」
「はい! スプラッタです! あっ、でもちゃんとラブストーリーとかもあるみたいですよ。」
「『13日に消えた館』か…。まあ、あやと一緒だから大丈夫か!」
信男はクリスマスに見るもんじゃないなと思いつつもあやのいつもとは違う可愛い笑顔を見て見ざるを得なかった。彼は勇気を出してシアターの中に入った。座ると信男は情けない小声で“手、つないでていい?”と尋ねると口パクでハイと言ってくれた。その顔は一生忘れないだろう。
映画は1時間40分だったが、信男にとっては2時間ほどの体感時間であったという。少し、彼はやつれていて、忘れないと言っていた顔さえも吹き飛ぶような映画だった。
信男はよぼよぼになったように歩きながら彼女に感想を述べた。
「やっぱピエロ、、こわい…。」
「やっぱり、苦手だったんですね? すみません。デートですから、やっぱり恋愛ものとかの方がよかったでしょうか。」
「いや、全然。 むしろ俺も恋愛ものの映画って苦手だからさ。ホラーの方がましだよ。それにあやが一番見たかったものとか、好きなものが知れたよ。…今日はありがと」
「また一緒に来てくれますか?」
「今度はホラー無しにしない?」
「今度は信男さんの好きなものを見ましょう!! それでおあいこ? です!?」
そういって映画館を後にした俺たちは近くの喫茶店でクリスマス限定のケーキを食べて帰宅した。長いようで短いデートだった。如月信男は帰りにSAN値回復のため、少し放心状態で好きなアニメのDVDを借りて帰った。
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