28:如月信男の珍事③ ~連廉誘拐事件を解決しよう!~

握られた怒りの鋭い拳は信男には当たらなかった。

木村は何度も、何度も拳を当てようとするが信男はマジックステッキによるシールドでかわしていった。


「先輩、もうやめましょう。 あなたは俺にあんな仕打ちをされて懲りたはずだ!」


「うるさい!! お前は、いちいちぼくの癇に障るやつだ。降星会ではないが、僕はお前みたいな不埒で、不道徳なやつは大嫌いだ。だから、お前を消す! 人生という道を二度と踏ませなくしてやる!!」


縄で椅子に縛られている廉がガタガタと解こうとしながら

「お前に助けられたくねえよ!」


信男は飄々としながら木村の攻撃をかわしながら

「お? ツンデレかな? ま、とりあえずこの最悪なバースデーパーティーから抜け出そうぜ。」


「よそ見するなぁ!!」


木村が腕を怒りで突き動かす。信男はその腕を掴み、足を胴につけて


「あんたは、とことん腐ってる!!」


木村を突き放すも、木村はなおもこちらに立ち向かう。木村は怒りと、少しの涙を浮かべながら


「愛を求めて何が悪いんだ! お前だって、俺より貪欲に女を求めてるじゃあないか!!」


木村は信男を一方的に殴り続け、怒りをぶつけ続けた。


「しかも、お前は相手の許可もなしに、ハーレムにしていく!!」


「俺は、みんなといちゃついて、友達になりたいだけだ!! お前は、強引が過ぎる! 確かに俺も強引な個性さ。でも、亜莉須先輩だけは、彼女は個性で惹きつけていない。だよな、廉!」


「ああ、あの人は食えないけど、彼女自身の意思であいつと行動している。その点においては一点の曇りもない、」


「「初めての女友達だ!!」」


「ああああ!! しゃべるなぁ!!」


木村裕也は錯乱し、暴力に訴えかけた。どれも、信男はまともに受けてしまった。

信男は少し口を切らしながらも、手でぬぐい取って


「あんたの拳は全ッ然ッ、痛くない!! 俺の個性使い始めの方がイタいわ!」



信男は殴られている間にも机から何かをあさっていたのだった。そこにはカッターナイフが置いてあった。


信男はカッターナイフを取り出すと、木村に向けてちらつかると、木村が


「なんだ、お前も典型的な陰キャだな。刃物で脅すなんて馬鹿げてる…」


信男は、ニヤついてカッターを戻し、すぐさまあらぬ方向に指さし


「あっ! 亜莉須先輩!? あ、『木村さんと話がしたい。』って連絡が来てる!! どーゆーことだろー??」


木村はうろたえながらも廊下へ慌てて出ていった。

 取り出したカッターで縛り付けられた廉を救出する信男は


「早くほどいてあの人のもとへ向かわないと!!」


「なら、俺にかまわないでさっさと倒せよ! 」


「だって強いんだもん。 だからさ、悪いけど、手伝って?」


「はぁ? ああ、もう!今回だけだぞ!」



信男は廉が自分のお願い事に弱いことは分かっていた。救出が終わると二人は急いで、廊下を走った。

木村は目の前だ。だが、その前に作戦が必要だ。信男は廉に策がないか話を持ち掛けた。


「なんか、策はないですか、コウメイ殿?」


「あいつはフィジカルは強いがメンタルは弱そうだと俺はみた。 煽りでせめて、お前の能力で一気に攻め立てる!! これしかないだろ!!」


「そうだな、俺もそう思っていた!」


「後だしはズルいだろ。」


二人は木村の背後を全力で追うも全く追いつかなかった。

信男と廉は皮肉にも運動をあまりしないインドア男子なので持久力はまるでないのだ。


ヘトヘトになって追いかけていると突然冷気が走り去っていった。

あやと御笠麗美だった。麗美はあやが氷で作った板で、あやは靴にスケートのようなブレードをつけて颯爽とあやの作っている氷の道を滑走していった。


「マスター、お待たせしました。 足止めします!」


「ダーリンのために、人肌脱いじゃうもんね♡」


二人は両端から攻めていって、木村を追い抜き、あやは氷でできたロープを麗美に手渡した。


「冷た!! この即席スキー板を割って、一気に駆け上がる!」


木村はロープに当たるまいと上半身を天に向けるが、減速してこけてしまった。


「「今です! (今よ)」」


麗美、礼の掛け声がかかり、信男と廉は一斉に畳みかけた。


「「かかってこいや! マザコン野郎!!」」


予定通り、木村は一心不乱にこちらに向かっている。廉に離れるように信男はいうとマジックステッキを取り出し、左手を添えて


「恥ずかしいなって言ってられるか! ラブリー・ロイヤルフローラル・ハリケーン/愛・注入+(ラブ・フォルテシモ)!!」


木村は毒が抜けたような穏やかな表情になり、やさしさに包まれながら失神した。

だが、彼の精神力は絶えていなかった。


「あの攻撃で立っていられるなんて、ゴキブリ並みの体力だな。 失神して尊死する前にここからいなくなるんだな。」


木村は弱弱しい声で応答した。


「まあ、待て。 うぅ、エモい…。 降星会:会長の、降谷一星の秘密を教えてやるから見逃してくれぇ!! まあ、言ったとしてもあいつはお前たちには捕まらない。なぜなら、あいつは二つの人、」


木村が何か言いかけたその時、黒いイルカが彼を飲み込み、出現してきた黒い暗闇に引きずられていった。


廉は青ざめた表情で信男に問いかけた。


「おい、大丈夫か。 元々、お前は静かにハーレムしてウハウハしたいんじゃないのか?もう、あいつらにかかわらないで、普通の文化祭を過ごそうぜ。」


「いや。大所帯になれば、自然と静かにはいられないだろ。それに、木村の発言を聞かせないようにしたってことはいよいよ俺を、ひいては俺たちを目の敵にして他の生徒に俺たちを見せしめにして言うこと聞かせるだろうよ。するとどうなる?」


「あいつの言いなりで、学校を不自由に暮らすことになるな。」


「違う、俺の好感度が下がって女の子に振り向いてもらえん!」

廉は、信男の言ったことに肩透かしを食らうも、彼らしい答えだと思ってしまった。もう、たしなめることはせず、気持ちを切り替えるためにも、話題を変えた。


「うん、とりあえずは文化祭を成功することだ。明日また放課後、仕切り直して練習しよう。」


「その前に!!みんな、大丈夫? ちょっとだけ付き合ってほしいんだけど、、」


「いいよ、ダーリンのためなら。」

「はい、マスター。」


信男は廉とあや、麗美を家庭科室に連れて戻り、きらり、愛海、亜莉須と合流した。5人は何が起こるのかわからなかったが、信男は家庭科室に置いていたカバンから何かを取り出すと


「ほい、誕生日おめでとう。 れんれん。」


5人は驚きと共に拍手を送りながらみんなでバースデーソングを歌った。


れんは少し、ぎこちなく笑い

「こんなにとんでもない一日の誕生日はないな。特に、女の子に囲まれるのは中々ない。ありがとう。」


「おい! れんれん、お前今日は主役譲ってやったけど、俺の誕生日、12月24日ではちゃんとプレゼント用意しろよな!!」


今日はみんなで輪になって笑いあった。

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