27:如月信男の珍事② さらわれたヒロインはれんれん!??
文化祭まであと一週間前と迫ってきていた。
俺たち手芸部は人形作りも舞台装置も出来上がり、仕上げの段階へとすすめ、台本も本好きの愛海さんの脚本で仕上がっていたので手の空いたもので読み合わせをしていた。
『あなたが、神“モモン”に選ばれたモモ太郎なのですね。奴隷の身の私を救ってくださりありがとうございます。どうか、私をオーガ退治に連れて行ってください。きっと役に立つはずです。』
『役に立つか、ついて行くどうかは私のこのエクスカリバーを見てから決めてくれないか。』
『すごく、大きいです/// は、早くお閉まいください!!』
信男は首をかしげながら
「うーん、ちょっと下ネタはなぁ…。セクハラだし、文化祭の内容っぽくないよ。」
愛海は眼鏡をくいっと上げて
「ナローでは常識よ。男子ウケはいいと思うわ。」
信男は首をかしげて
「ナロー? とにかく、悪いけど進行につまづきそうな下ネタはカットにしてくれる?」
「麗美さん、下ネタ好きそうだから入れたんだけど…。仕方がないわ。」
御笠麗美は頬を赤らめて
「そこまで私、下品じゃないわよ!?」
きらりが不服そうな顔で
「てかなんで、普通にいるわけ? あんた、モブッチのなんなの?」
「彼女よ? 当たり前でしょ。みんなもそうなんでしょ?」
あやが、腕を組んで麗美の方を見て
「そうですが、あなたは日も浅いのにマスターとベタベタしすぎです。」
「別に好きであることに時間なんて関係ないでしょ。逆に、私はあなたたちよりも短い時間でダーリンとの距離を縮めた...。そうでしょ?」
信男に腕を組んでアピールする麗美にきらりたちが引きはがそうとするもなおも抵抗する麗美に内戦ぼっ発まじかの二人に信男が入り込み
「ま、ま、まあまあ、ここはさ、俺に免じて穏便にしよ、ね?」
二人は懲りたのか、散り散りになっていった。呆れた表情で見ていた愛海が、ふと思い出したかのように
「そういえば、姉さんがまだ来ていないわね。」
信男も思い出したかのように
「廉も来てないな。あいつ、どこで道草食ってんだ?」
話していると、ドアが開き、亜莉須先輩が倒れてきた。愛海と信男が肩を貸して椅子に座らせて心配しながら
「姉さん、大丈夫!? どうしたの、何があったの?」
「き、木村さんが、」
「木村って、姉さんにストーカーしてたっていう、あの木村裕也!?」
信男は優しくなだめるように
「大丈夫、ここに来れば俺が守りますから。少し休んでください。」
「それどころじゃない…。廉くんが私の代わりに人質になっちゃってて、ごめんなさい…。」
「目的は?」
「信男君を倒して私と復縁すること」
亜莉須先輩が信男に手紙を手渡すと信男は眼つきを変えてメモを握りしめた。
愛海が怒りのあまり立ち上がり、むしゃくしゃしながら
「ああ、ほんともう最悪!! 復縁とか、そもそも付き合ってもないじゃん。」
信男は愛海に冷静になるよう肩に手を置き、座らせて亜莉須先輩に向かって
「亜莉須先輩が負い目を感じることはないよ。悪いのは木村さんと俺より目立ってる廉だよ。あいつら、この手で、ちょっと痛めつけてくるから。安心してて!!」
亜莉須はクスっと笑って
「廉くんは痛めつけなくてもいいよぉ~。もぉ~。」
「きらりさん、先輩のこと愛海さんと看てて。 あやさん、麗美さんは俺と来てくれる?」
「モブッチが言うなら、仕方ないっしょ。愛海っち、先輩を寝かせて。ウチのポジティブパワー分けるから!」
「はい!」
あや、麗美、そして信男が3年生の教室のある棟へ向かっているとあやが
「マスターが言うのなら、仕方がありませんが、、このメンバーには少し不安です。」
といったが、信男は明るく
「だって、きらりさんと行ったら二人喧嘩しちゃうでしょ。それに俺は彼女のこともっと知りたい。みんなも彼女のことを知れば、仲間になれるでしょ?」
あやは何も言及せず、信男と一緒にいられる時間ができるなら何でもいいと思っていた。麗美もまた、信男のことを知りたいし、好きでいたいと思っていた。
亜莉須先輩が手に持っていたメモ帳によると木村は3年C組にいると分かった三人は3年C組と書かれたプレートのついた教室に入っていった。
だが、そこにはピアノが置かれていて黒板の上にはよく知らない偉そうな人物像が並んでいた。ここは3年C組ではなく音楽室だとでも言うのだろうか。すると、信男たちは自分たち以外に一人、座り込む人物を見つけた。信男は面識があったようで
「おまえ!! 木村の腰巾着!! えっと、
「二階堂だよ!! お前、人の名前覚えるの苦手か? ま、いいけど。ここが音楽室なのは大体察しがついてると思うけど、、混乱してるみたいだね。」
「そらそうだろ!! どうなってんだよ!」
「おまえ、ほんと記憶力ゼロだな。俺の個性は<嘘つき>なんだから、偽装くらい当たり前にできるだろ。」
「お前に用はないんだよ、二階堂!!」
「俺にはある。木村さんが手を下すまでもない。」
あやは冷刀を現出させて二階堂に向けて
「なら、こちらもマスターが手を下すまでもなく、私“たち”があんたを倒す。」
「あら、クールちゃん私と組みたいの?」
「一時共闘です! あなたも私も信男さんの恋人として、守れるものを
あやは信男の方に向き直り
「マスターは先に、廉さんの救出を!!」
「ありがとう! 二人とも気を付けて!!」
音楽室を後にする信男を見た二階堂は子供のように分かりやすく地団駄を踏み
「うぐぐぐ… よくも、、なあんてね。 おれのホントの狙いは君たち、取り巻きの足止め。だって、先輩、女子には大抵優しいんだから、負けちゃうに決まってんじゃん。」
「なんにせよ、向こうは彼に任せるしかないよね。クールちゃん。」
あやはムッとした表情になりながらも二階堂に切りかかった。
だが、二階堂は余裕の表情を見せて紙をあやに貼り付けた。よくわからない攻撃に驚くも、続けて切りかかるも全く刃が当たらなかった。まるで磁石が反発するように刃が二階堂を避けていくのだった。
「何を遊んでるのよ!! 媚鱗粉(キスケイル)!! 」
色欲蝶の鱗粉は空を舞い、二階堂を刺激した。
「な、動けない!!」
「そりゃそうでしょ。 私の色香に誰もが身も心も硬くなる。本当に美しいもの、艶めかしいものを見たとき、人は息を呑み固まるのよ。それが、私自身の個性、<
「たしかにエロそうな顔つきしてるけど、自分でビッチっていうか? ええい、俺から離れろ!! ライアー・フィアー!」
二階堂に悪戦苦闘する二人を背後に感じながら信男は本当の3年C組の教室へと走っていた。
「二人のためにも、亜莉須先輩のためにも!! 俺は木村を倒す!! あっ!!ていうか、廉、あいつ今日、誕生日じゃないか??厄日かよ、あいつ。去年もなんか、骨折したとかなんか言ってたし…。」
3年C組と書かれたプレートを疑念の目を向けながら、恐る恐る扉を開けてみると縄に縛られた廉と縄を持った木村裕也が悠々と机に座っていた。
「この時を待っていた。如月信男、、亜莉須は僕のものだ!!」
白い手袋をぎゅっと握りしめて信男に突進する顔は夕焼けに照らされてわからなかったが、見開いた目は憤怒相の明王のようだった。
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