06:君の名前を教えて!?



今日は待ちに待った土曜日だ。今日は誰かとデートしようかな?それともれんれんと遊ぼうかな~。まったく、リア充とは忙しいな!


ウキウキしながら朝ごはんを食べていると、インターホンが鳴った。画面を見るとそこには天使ちゃんがいた。そう言えば最近、話してなかったな。


玄関を開け、迎え入れる。



「お久しぶり!モブちゃん今日の予定は?」



「特に、無いけど・・・。」



「現状報告がてら、ピクニックに行きませんか?」



お、いいね。天使ちゃんとのデートは初めてかもしれないな。そうと決まれば準備をしてくると言って着替えて近くの公園まで歩いていった。天使ちゃんが持っているのはお昼ご飯だろうか。王道のピクニックバッグだ。まあ、梅雨シーズン真っ盛りだけど、今日は雨降らないらしいから絶好ではないがピクニック日和だ。



「ん? あっ、、これですか? ちょっと地上の生活のために料理してみたんだ。お昼で食べましょ。」



「神様が作った人間の料理ってどんなだろ。やっぱ、おいしいのかな。」



「ヘヘ、期待してください♪」



いやぁ、まいりますなあ。モテるというのは。舞いあがっていると公園に着き、天使ちゃんに報告した。



「なるほど。札杜さんに蒲生さん、まだ、私の知らないところで増やしていたわけではないようですね。そして、なによりもうれしいのは現出を使えたことだよ!おめでとう、これで能力者の基本はバッチリだね。それにしても、モブちゃんは巻き込まれ体質なのかな?」



ふふっと笑う彼女はとても可愛い。あやさんも好きだし、きらりさんも好きだし、、もう、みんな大好き! 最高! さて、話してたらもうお昼時だ。天使ちゃんはピクニックバッグからお弁当箱を二人分取り出し、俺は、お箸を受け取り、いざ開封!!



ほかほかの日ノ丸ごはんに玉子焼き、一口サイズに入ったトマトスパゲッティ、小ぶりの海老フライ。どれもおいしそうだ。



「「いただきます!!」」



先ずは玉子焼きを一つ、口の放り込む。 彼女の愛情弁当をかみしめる。・・・・・・え? まずい、、いや、まずいというより味がない。トマトスパゲッティは・・・う、薄い!!


一体どうなってるんだってばよ?



「ど、どうしたの? もしかして神様基準だから薄い?」



こうなれば正直に言うべきか? おいしいと言うべきか?



「やはり、薄かったみたいねえ。いやさ、神様の世界って意外に質素で薄味なのよね~。この間コンビニ?とやらのポテトチップス食べたらさ、塩辛くって!! ほんとびっくりしたよ。」



「こっちもびっくりしたよ。パスタがソースついてないのかなぐらい薄かったし、ソースとかもついてないし、やっぱり、神様ってのはほんとみたいですなあ。」



二人して、向かい合ってケタケタと笑い合っていた。 そうすると向こうの方から公園で遊んでるであろう子供が泣きながらこちらに突進してくる。と思いきや、天使ちゃんの胸にダイビング。・・・このマセガキめ、そこかわr、、いやいや、どうしてくれようか…と拳を振るおうとしたが天使ちゃんが止める。優しい声でどうしたの?と聞いていた。


マセガキは



「こ、怖い女の人が、、ママを。」



「ハァ、ハァ、、ちょっと待って。 ってあれ、マスター、それに転校生の方。」



まさか、この子を追いかけてた女の人って、、、と思って顔をあげるとへとへとになったあやさんがいた。あやさんに持ってきたお茶を飲ませて一旦落ち着かせて話を聞いて見た。



「すみません。 実はこの子多分、迷子なんですよ。お母さん探してるうちに知らない所に来てたみたいで。うるんだ顔の彼を放っておけなくて声をかけたらこのざまで。どうやら、私を人攫いかなにかだと勘違いしてるみたいで。」



そうだったんですね。天使ちゃんに抱かれていた彼はいつの間にか寝ていた。だから、そこかわr、いやそんな事より、どうにかしてこの事態を何とかしないと


すると天使ちゃんは子供の背中を優しくポンポンと叩きながら、



「大丈夫ですよ。 このお姉さんも私たちも、君の味方だからね? ホントに迷子なの?」



子供は



「うん、気付いたらママがいなくて、びっくりしてそしたら怖い顔のお姉ちゃんが話しかけてきたから怖くて逃げたの。」



「うん、これはあやさんにも非がありそうだね。」



「面目ありません。マスター。 デート中申し訳ありませんが、一緒に彼の母親を一緒に探してくれませんか。私、子どもとどうやら相性が良くないようなので。」



こんなに困り果てたかわいいあやさんを見たことがない。こうなれば三人で探すしかない。



「天使ちゃん、この子の母親、探してあげよう。」



「おっけー。じゃあ、この子を最初に見つけた所からね。」



それじゃあ、こっちです。とあやさんがリードし、連れていく。そこは公園の中心にある案内板だった。案内板で見る公園は予定より広かった。三人は地図とにらめっこをしながら今後の作戦を練った。



「この広い公園を探し回って親と入れ違うより、交番に行った方がいいですかね。」



「あやさんの言う通り、かもね。」



「そうだね。おまわりさんならたぶん大丈夫でしょ、ってあの子は?」



天使ちゃんの言う通り、近くに子供がいない。焦って辺りを探すと案内板の向こうに広がる草原で蝶と戯れていた。ホッとしているのもつかの間、なんと、超豪速球でボールがあの子の方に向かっているではないですか。こちらからだと間に合わない位置だ。だけどあきらめず、声をかけ、その子のもとに向かう。遅すぎる。



その瞬間、冷気が左ほほを突き抜けた。一瞬の出来事だったが、あやさんは剣を抜いていて、辺り一面氷が張られていた。よく見ると、野球ボールだったものが真っ二つに割れてコトっと落ちていた。


さすがは居合抜刀術の達人。お見事。



「大丈夫か。」



立ちつくす子供に声をかけるあやさん。子供はあやさんに抱きつき、すごいを連呼して目をキラキラさせていた。あやさんとの間も万事解決したので俺達は無事彼を送り届けた。彼の名前は「山風楓」らしい。


少しの間、楓君と一緒に待っていると無事、母親がきてくれた。俺の魅力の効果があったのかめっちゃ感謝された。後、あまりにも仲良くなってあやさんと離れたくないってなってしまった。その時、とっさに彼女が両手でコソコソしているとパッと見せるとそこにはスノードームがあった。



「私お手製のスノードームです。季節違いですけどね・・・。これは私との友情の証です。これで寂しくないといいのですが」



楓は喜び、すんなり、母親の元に帰っていった。それにしても器用だな。母親と楓は何度もこちらを振り向き、お礼を言って夕焼けに消えていった。まったく今日はとんでもない一日だった。


・・・そう言えば



「あやさん、いつそんな芸を?」



「あっ・・・すみません、マスター。あれ、本当は月曜日、マスターに見せてプレゼントするために練習したんですけど・・・。仕方がありません。また、ディスプレイを買って、、」



「いいよ。また今度、見せてよ。出来れば冬とか。」



確かにそうですね。と彼女は笑って見せてくれた。この笑顔で今日の一件はチャラだな。まったく、俺はどこまで優しいんだか。



夕焼けを見送りながら、これからも楽しい日々になりますようにと思い、三人とも分かれて家路に着いた。



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