07:赤点を回避せよ! きらり、背水の陣!?
今日は日曜日だが、俺は早起きなんだ。8時過ぎにはもう起きている。理由はただ一つ。
「兄ぃ、プリガル始まっちゃうじゃん。早くして」
「はいはい。つーか俺も見るんだから、もうちょいテレビから離れろ」
妹との唯一の接点、プリガルこと、プリティガールシリーズ。可愛くてチャーミングな女の子が戦士として戦う女児向けアニメだ。はっきり言って俺の様な輩が見るものじゃないし、中学にもなった妹の観る向けでは無い。妹はプリガルを見る時は朝ごはんに俺の作るフルーツサンドを所望する。無論俺も食べる。俺の方はフルーツの甘さだけで甘さを控えめに、妹は虫歯ができそうなほどのクリームを付けろと言ってくる。
このアニメを俺達兄妹が見ている理由としては、妹は好きな男性声優が出ていること、俺はストーリー性と百合展開を期待している。俺はアニメに関してだけ言えば百合展開は好きだ。もちろん、現実でも俺のハーレム達が俺を中心にして百合を展開するのも全然ありだ。それも萌えの一興だ。
兄妹二人で女児向けアニメを見てる姿は6才くらいの姉妹が見てるようにウキウキしていた。だがそれもつかの間。プリガル前半戦が終わり、CMを挟んだ頃に玄関のインターホンが鳴った。どちらが出るのかとモメ会いになったがそこは長兄たるもの、というより強制的に使役される。兄は不利なのだ。仕方なく、玄関を開けてみると、そこには傘をさして茫然と立ちつくすきらりさんがいた。長雨と強めの風のせいか、衣服が少し濡れていたので一旦、誰にも見つからないように僕の部屋へと上がらせ、バスタオルを貸してあげた。
落ち着いたところで、彼女に来た理由を聞いて見た。
「どうしたんですか急に。こんなに朝早く、しかも大雨の時に......」
彼女はバスタオルで顔を隠して肩を揺らしている。えっ、、泣いているのか? いやいやいやいや! 待ってくれ、思考が追いつかん。いきなり俺ん家に上がって泣くとか完全、事案発生してんじゃあねぇか! とりあえず、落ち着いてくれとなだめた後、彼女は意を決したようにバスタオルを顔から外して
「あのさ、勉強教えてほしいんだけど!!」
「はい???????」
ここは駆け込み寺でも、寺子屋でもねえんだぞ。はいそうですかと言って教えられるほど俺も天才でも、ガリ勉陰キャでもない。かといって目の前の彼女よりかは勉強には切羽詰まっていない。勉強においても俺は中途半端な存在なのだ。
「うち留年するかもってせんせーに言われて......。でもモブッチと一緒に進級したいの! だからうちが進級できるようにモブッチが勉強を、見てほしいの! いいでしょ~?」
そのためにわざわざ俺の所に来たとなったら一肌脱ぐしかない。とりあえずは次の学期末テストに向けての勉強をしよう。それさえやって入れば小テストがあったとしても何とかなるだろう。
「とりあえず、きらりさんは得意な科目と不得意なものとかありますか?」
「うーん、、体育は好き。数学とか英語はイミわかんないし、国語は眠いし......でも、一番得意なのは、保険体育かな?」
身体を少し寄せ付けてきて、猫なで声で言ってくる彼女のどこから突っ込めばいいのか分からない。(意味深)何だこの最高の流れは。いや、だが、俺はsch〇〇l d〇ys で学んだんだ。肉体関係を持つのは悲しみの向こうへ行くルートしかないんだってな。だからここは、一旦頭を冷やして冷静に対処するんだ。だから俺はただのイチャラブがしたいだけなんだ。......そうだここはあいつの出番だ!
「うん、とりあえず俺達だけで勉強がはかどるかわからんし、もう少し頭のいい奴を呼ぼ。」
「ええ~? 二人っきりが良くて、こっち来たのに」
「二人っきりだと、いろんな意味で勉強が捗らんでしょう?」
俺だって、二人で勉強したいさ。だが、平然と彼女と二人でいられる自身がありません! 助け舟を呼ぶしかねえ! という訳で
少しして、彼は来た。
「助けに来てやったぞ。ついでに冷やかしにも来た。」
なるほど、そういう魂胆だったのか。変に快諾が早いと思った。まあ、いいだろう。背に腹は代えられん。と言う訳でれんれんも加わり、三人で勉強会をすることになった。れんれんは主に、英語と国語を、俺は何とかできる程度の数学、結構出来る方の日本史を、化学基礎、生物基礎は二人でできるで所ときない部分を分担しながらなんとかきらりさんの脳がショートしないように懸命に教えた。
「はぁ~つかれたわ。モブッチ、膝枕して~」
「えっ、ああ、どうぞ」
急な展開だが、きらりさんは疲れていたんだろう。その辺を配慮して俺は彼女に膝枕をした。これはなんだ。こみ上げる煩悩を押さえつけ何とも言えない表情をしてれんれんに目をやった。れんれんは一通りの仕事を終えてスマホを取り出していじっている。すると急にニヤニヤしてこちらを向いている。静かな空間の中、そいつはそっと自分のスマホの画面を見せてきた。画面にはいつの間にか俺がきらりさんを膝枕してるところを盗撮していた。
おい、無音カメラは犯罪だろと思いながら、小声で削除しろや嫌だの喧嘩を繰り広げたが、ちょっとこの冷やかしは俺自身悪い気はしなかった。写真も割と絵になるような感じだった。
まぁ、俺の顔が菅田○輝とか松阪○李だったら、もっと映えてたんだろうなぁと思ってグダグダ過ごした。
きらりさんが起きた頃にはもう、辺りは暗くなっていて夕方の6時過ぎだった。きらりさんは頬を赤らめ、とっさに起き出した。
「今日は、ありがと。モブッチ、それにれんちゃん。また明日ね~」
慌てるように立ち去って行った。可愛い。 かみしめて、あえてもう一度言おう。......可愛い。
喜びと尊さをかみしめているとれんれんも「俺も帰るわ。じゃ、明日徴収に行きますのでー」とテレビの受信料をもらいに来る人のようにボソッと言って立ち去った。ホントこいつはちゃっかりしてやがる。
今日みたいなてんやわんやも続くといいな。明日も、いい日になるよね? 天使ちゃん(かみさま)。
『へけっ!?』
えっ、この声は? まさか、ハムスターの!?
『いいえ、あなたのサポーター、天使ちゃんです❤ ちょっといいかな?』
突然、今度は窓から颯爽と不法侵入してきた神様が俺の前に再び現れた。
『もしかしたら、私の力が地上では弱くなってるのかわかんないけど、信男くんがハーレム築いてるのを奇妙に思ってる子がいるから気を付けて行動してねって伝えに来たの!ホントは昨日言いたかったんだけど、いろいろあったし。今日も、お楽しみだった見たいだし?』
彼女のいたずらな笑いは俺を惹きつけるが、同時に彼女の言葉に不安が募った。この間の藤田はその一人だったのかも知れない。明日、覚えてたら話を聞いて見よう。
彼女には「わかった。気を付けておくよ」と言っておいた。彼女はじゃあねと言って、空に駆け上がった。一瞬でどこかへ消えてしまったが、不安までは消えてくれなかった。
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