05:雨はすばらしいと思えた。



ほとんどの人間は梅雨が嫌いなはず。俺もその一人で授業中、とてもじゃないが憂鬱だった。


当然体育は体育館での授業だ。俺が嫌いなバレーボールである。しかし、今日は大変楽しい。


なぜなら、同じクラスのきらりさんと隣のあやさんのクラスと合同での授業だ。



ああ、これは俺の推し二人が眼前で見れるしあわs・・・ゴフッ



「おーい、大丈夫か? って、こいつか、ならいっか。」



マジふざけんな。謝れってんだよ。ボールに当たった頭に手を当てているときらりとあやが変えつけてくれていた。そしてボールに当ててきた奴に注意していた。



「おい、モブッチに謝れよ~。シロー。」



「マスターに何するんですか。ちょっと待ってください、手当てするんで。」



「あ? あぁ、悪いな。モブ男。」



クラスメイトの子は俺にばつが悪そうに謝ってくれた。今まで体育のできない俺に意図的にボールを当ててきたヤな奴だったから少しすっとした。俺はいいねえ、悪くないよぉ。とご満悦だったが、れんれんは少しあきれ顔をしつつ俺を無視したようなそぶりだった。


俺はそれを気にした。そう言えば最近、あいつと連絡もろくに取り合って無かったっけ。手当てしてくれたあやさんたちにお礼を言って、れんれんに話しかけてみた。



「れんれん、どうしたんだよ。大切な友達が怪我してるんだぞ。」



「別に・・・知らないし。手当してもらったんだからいいだろ!」



「何だよ。・・・最近、連れなかったのは悪いと思ってるよ。それで怒ってんのか? ていうか妬いてる?」



「別に違うし。もう、どうでもいいけど。…勝手に女と遊んでろよ。」



何すねてんだ? 仕方ないじゃないか、俺は青春ライフで忙しかったんだ。


その後も、れんれんには話しかけるも、ああ。や、おう。などの覇気のない返事ばかり。挙句は無視もしてくる。今までこんなことなかったのにな。こういう時、どうしたら、、こんなにもあいつが拗ねるのはゲームでぼろ負けした以来だな。


ちょっと、ここはあやさんに聞いて見よっと



昼休み、あやさんと二人きりで昼デートとしゃれこんだ。あやさんは丁寧に俺の話を黙って聞いてくれていた。正直、こういう奥さんがいたら、世の中の旦那さんは、浮気とかしないんだろうなぁ。と思いながら、真剣に話して行くと、あやさんが口を開いた。



「・・・そうですか。廉さんと喧嘩したんですね。私に相談していただき、ありがとうございます。でも、この件はマスター自身がもう決めているのではないですか?」



内心、どきっとした。俺自身が決めている? もやもやした気分があるから相談に乗ったのに…。考えていると、後ろからやわらかな重みがずっしりときたと思ったら、きらりさんがいて



「貧乳との抜け駆けは無しって言ったっしょ、モブッチ。話聞いたけど、貧乳の言う通り、モブッチはもうれんちゃんと仲直りする方法、知ってるでしょ。うちらはいいから、今日は一緒に帰っておいで?」



そっか、一緒に帰る。俺は最近、あいつと疎遠になっていたんだった。今まで、一緒だったのが当たり前だったのがあいつは当たり前じゃなくなってしまっていたのか。今日は、いや、今日からもあいつとの時間は作りたい。だって、かけがえのない友達なのだから。 



「蒲生さん、さっきから貧乳というのは私の事ですか?」


「だって、貧乳じゃん。うちより。」


「そんなはしたない言葉、マスターに言わないでください。それに、私は身も心もおしとやかに育ってるんです! あなたのように下品には・・・」



「ちょっ、、!! 下品じゃないし、ねえ、モブッチ、男ならおっぱいおっきい、、ってもういないや。」




――――――――――――――――



放課後、なんとかごねてれんれんと一緒に帰ることができた。傘が邪魔でしゃべりにくい距離感だけど・・・



「女の所に行かなくていいのかよ。」



「今日はお休みだ。」



「楽しそうだな。俺がいなくても・・・」



「ごめん。」



俺の謝罪が意外だったのか、びっくりしてこちらを振り向く。



「お前が、真剣に謝んの初めてかもしれね。」



「謝るようなこと、したことないからな!」



「いや、お前この前、ゲームに夢中になってた時、俺のプリン食べたろ!」



「そだっけ?」



れんれんはあきれ果て、しまいには腹を抱えて笑っていた。彼の笑っている姿はいつもの通り快活なあいつに戻っていた。



「もう、いいよ。今日、俺ん家こいよ。 後、プリンおごれ。」



「そんなん、俺らの厚い友情の壁に比べれば安いもんだ。」



といって、俺はいつもしないような友達ムーブの腕タッチをぎこちなくした。ヨシッ! と息まく俺にれんれんが改まって、、



「なあ、俺、お前のハーレム作るって言う夢、隣で見届けてもいいか?」



「へ? なんでまた。」



「俺にはお前みたいにロマンや、夢なんて無い。けど、友達の夢は俺の夢だ。その夢、見届けたい。面白そうだしな。付き合ってもいいか?」



「・・・フン、いいぞ。俺の夢を見届けさせてやる。最前列でな。」



こうして、れんれんと俺は熱い友情の握手をしてれんれんの家へ向かって行くのだった。


ありがとう、あやさん、きらりさん。



雨は止み、晴れやかに輝く空には、珍しく大きな虹がかかっていた。

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