Chapter III War

第21話 国のみんなはどこへ?

 ヴァニラ王国に着き、街の異変に気づいた俺たちは、真っ先に城へ向かった。


「ねぇ、やけに静かじゃないかしら?」


 シロハは街を見渡し不思議そうに首を傾げる。


「ヴァニラ王国ってもっと賑やかでしたよね?」

「うん……街を歩いている人が誰も居ない時なんて見たことないよ」


 シーラとメルは少し不安な顔をしながら仲が良さそうに話している。


 そう、ヴァニラ王国に到着した時になぜ真っ先に城に向かおうとしたのか。それは、街を人が1人も歩いていなかったからだ。

 しかも、若い男性の馬車の運転手に、ウッドがいなくなった事を聞いたが、何も知らないようだった。

 そして、王になぜ街がこんな状況なのかを聞くため、城に向かっているのだ。


 城の目の前、いつも城の門の前には誰かがいるはずなのだが、誰もいないため、鍵が閉まっている門をよじ登り、城の中に入った。



「城の中にも誰も居ないわね」

「そうだな」


 俺は城の中を見渡した。

 城の中の電気も着いておらず、人の気配も俺ら以外には感じられない。


 俺たちはこの不気味な雰囲気の中、特に会話することなく王様の部屋に入った。



 王様の部屋に入ったが、やはり王様は居なかった。

 するとシロハが、俺たちと王様が対面して話した時に挟んだテーブルの上に4つ折りになって置いてある手紙のようなものを手に取った。


「これ手紙かしら」


 シロハは、そう言いながら4つ折りになっている紙を開くと、書いてあることを一語一句完璧に読み上げた。


「今、俺とサーヴェルトや国民達は全員北の国、『ストレガルト』避難している。きっとここの国に西の国の人々が攻めてきたということは、シーラ王女の年齢は戻ったということだろう」


 ここで、シロハは一度喋っていた口を止め、紙は2枚重なっていたようで、上にあった紙を2枚目の下に重ね、再び読み始めた。


「これから、西の国と戦争になるだろう。もちろん、我々が負けることは無い。しかし、この前も言った通り、俺は全部の国と仲良くなりたいのだ。だからできるだけ被害は抑えたい。そこでだ。君たちに先に西の国の兵力だけでも潰しておいて欲しい。俺とサーヴェルトも『ストレガルト』で装備を整えたら、他兵士達と一緒に後からヴァニラ王国の防衛と君たちの援護に向かう予定だ。健闘を祈っているぞ」


 ヴァニラ王国国王ヴァニラ・ツーヴェルト、と締めくくり、シロハは紙を4つ折りにしてテーブルの元あった場所に戻した。


「じゃあどうしようかしらリョウくん」


 どうして西の国と戦争になっているのか、や、どうしてシーラの年齢が戻ったら西の国の人々が攻めてくるのか、など色々気になる点があるが、とりあえず王様の命令だ。西の国へ向かうしか無い。そして一件落着したなら、この国で平凡に暮らすとするか。


「わかった、とりあえず西の国へ向かおう」


 すると、シーラは少し不安そうな顔をした。


「……本当に私だけで大丈夫なんでしょうか。……リョウさんの力を疑っている訳ではありません。しかし……」


 と不安そうな顔をしているシーラに、メルが笑いかけた。


「大丈夫だよシーラ! 私、結構運良いから!」


 すると、シーラの顔から不安の色が少し消え、ほっと息を吐くと不安の色はスッキリと消えた。


 その後、城を出た俺とメルとシーラとシロハは、馬車の止めてある南の入口へ向かい、ここまで乗せてきてくれた若い男性の馬車へと乗り込み西へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る