エクセロット

第20話 アロエの依頼 〜後編~

 リョウは暗黒騎士の攻撃をかわし続ける。


「貴様そろそろ疲れてきた頃なんじゃないか?」

「俺はまだ全然行けるぞ?」

「はっ、そうかい」


 暗黒騎士の攻撃が早くなった。


 攻撃をかすりでもしたら即負けだ。

 歳をいじられて、赤ん坊にでもされたら無抵抗で殺されてしまうだろう。


 そしてリョウは自分の腰の剣をつかんだ。


「──アイスフィールド」


 リョウの魔法で暗黒騎士の足元が凍り、滑りやすくなった。


「──エアロハリケーン!」


 先程シーラの使っていた技だ。


 ものすごい強風とともに暗黒騎士は少し体制を崩した。


 リョウはそれを見逃さなかった。



 そしてリョウは全力で斬りかかった。


「──リョウくんだめ!」


 シロハが珍しく大声で叫んでいるが、リョウはもう止まることは出来ない。


 そして、俺と暗黒騎士は同時に倒れた。



 ◇◇



 柔らかい。


「……ん」


「ふふ、おはようございますリョウさん」


「あ、おはよう、って誰!?」


 ほんとに見覚えがない。

 水色髪のショートボブに可愛い顔……


「誰って酷いですねリョウさん、イースですよ? 覚えてませんか?」

「イ、イースか」

「はい! イースですよ? リョウさんのおかげで呪いが解けたので元の姿にー! どうですか?」

「どう……って」

「子供の時より可愛くなりましたか?」


 子供の時って俺たちは幼なじみかよ。

 しかし可愛い。


「か、可愛いと思うぞ」

「そ、そうですか……ありがとうございます……」


 俺はシーラに膝枕された状態から見上げるようにシーラの顔を見たが、照れたようだ。

 俺も人のことを言えないが。


「膝枕どうですか?」

「い、いいぞ」

「ど、どんな風にいいですか?」

「柔らかくていい匂いがしてふわふわして……」

「分かりました! もう大丈夫です!」


 シーラは顔を真っ赤にして照れ、深くしたに俯いたが、膝枕している俺と目が合い、そっぽを向いた。


「そういえばシロハとかはどこ行ったんだ?」

「多分街で遊んでると思います」

「そうか……」

「あの……元に戻してくれてありがとうございました。何かお礼をしたいんですけど何かありますか?」


 シーラは照れながらも話しかけ続けてくれる。


「お礼か……」

「はい、わたしにできることならなんでも……」

「そうだな……」


 シーラの心臓の音がシーラの太ももを伝って俺の耳に届く。

 シーラの心臓の音はかなり早い。


「じゃあ……」


「ゴクリ………………あ、今この城はわたしとリョウさんの二人だけですよ? 城のみんなにはどこかに行っておいてもらいました」

「そうか……じゃあ」


俺はわざとらしくためを作った。


「仲間になってよ」


「はい喜んで……ってわたしなんかがリョウさんの仲間になっていいんですか?!」

「わたしなんかってシーラは王様だろ? わたしじゃないだろ」

「そ、そうですね、では、これからも末永くよろしくお願いします」

「ああ、よろしくな」


 こうしてシーラは仲間になった。





「あらシーラさん、城の人達を追い出したらしいわね? リョウくんと何をしていたのかしら?」

「何もしてませんよ?」

「あら、本当かしら? あなたの脚からリョウくんの匂いがするのだけれど?」


 え、そんな俺って匂うの? こわ。


「ふふ、ちょっと膝枕していただけですよ」

「まぁいいわ、膝枕くらい私もしたし、私はリョウくんと『寝た』こともあるのだから」


 実際には睡眠薬で『寝かされた』んだがな。


「わ、私もリョウくんと『抱き合った』よ!」


『抱き合った』と言うよりは俺が『抱きつかれた』んだけどな。


 三人の間ではビリビリと火花がちっているように見えた。


「とりあえずヴァニラ王国に戻ろうか、ヴァニラさんがどうなったかも見たいしな」


 俺とシロハとメルとシーラは街の出口の馬車に向かった。




「あれ、ウッドさんどこ行ったかしってるか?」

「わたしは知らないです」

「私も知らないわ」

「私も〜」


 ウッドさんが居ないと馬車で帰れないな。


「馬車が必要ならすぐに呼びますよ」

「ああ、頼む」


 シーラは人差し指と親指で輪っかを作り、それを口に入れて笛のような音を出した。


 数秒後、馬車が後ろから猛スピードでやってきた。


「凄いな、なんだそれ?」

「指笛って言います、知りませんでしたか?」

「リョウくん、指笛知らなかったの? 出来ないのは分かるけど指笛知らないって少数派よ」

「そ、そうなんだな」


 人は皆、シーラのやったことを、指笛と呼ぶらしい。



「どこまで行きますか?」


 馬車を運転する若い男性が聞いてきた。


「ヴァニラ王国までお願いします」

「分かりました」


 そう言うと、若い男性は馬車を出した。






 俺はヴァニラ王に2つ依頼をされていた。

 それもこれも報酬のためだ。

 まず1つ目の依頼は暗黒騎士を倒し、呪いを解くこと。

 2つ目はシーラ王を連れてくること。

 2つとも運良く達成出来たが、別に達成する気はなかった。

 報酬なんて正直どうでもよかったからだ。

 5億以上の大金を持っているのにお金なんて欲しくはないし、地位が欲しい訳でもない。

 今回は愛しのシーラちゃんの為に依頼を受けた迄だ。

 俺は前の世界で死んだからこの世界に来たのだ。ここまで依頼を受けていたのは俺が強いから受けていただけで、正直無理して依頼を受けたくはない。

 つぎ死んだらどうなるか分かりっこないからな。



 と、勇者や英雄に憧れかけた自分にそう言い聞かせた。


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