第19話 アロエの依頼 ~前編~
──今だ!
俺は今しかないと思い相手に全身全霊で切りかかる。
「──リョウくんだめ!」
シロハが珍しく大声で叫んでいるが、俺はもう止まることは出来ない。
そして、俺と相手は同時に倒れた。
◇◇
「うっ……気持ち悪いよ〜」
シーラが今にも吐きそうな顔をしていた。
「大丈夫か? って大丈夫な訳ないか」
リョウはボケとツッコミを一人二役した。
「そんなことより、どうしてシーラちゃんもこの馬車に乗っているのかしら?」
「え……? シロハお前、連れていかないと思ってたのか?」
「え、ええ連れていかないと思ってたのだけれど……」
「そうか、もちろん連れていくに決まってるだろ!」
シロハとリョウの会話が成り立っていない中、メルは爆睡。
「夜が明ける頃に着くと思うから安心して眠ってな」
「ありがとうございます」
馬車を運転しているウッドにそう言われ眠ることに。
海で遊んだため、揺れる馬車でも案外すぐに眠りに着くことが出来た。
「──おいみんな起きろ!」
ウッドの声でメル、リョウ、シロハは目を覚ます。
「ん〜? なーにー?」
メルが寝ぼけたような声でウッドに聞く。
「あれ見ろ!」
ウッドの指が指す100メートル程先の場所には魔物だらけの街があった。
魔物だらけだけならまだいいのだが、魔物が作ったかのような禍々しい街になっていた。
「な、なにあれ……」
メルは困惑の表情を浮かべ、後ろに一歩下がった。
「すまないがここからは徒歩で向かってくれ、あそこに近づくのは非常に危ない。もしこの馬車にマーキングでもされたらこの馬車で帰れなくなってしまうからな」
「分かった、じゃあ行くぞ」
「ええ」
リョウはシーラをおんぶして馬車を降りる。
「おい、そのお嬢ちゃんも連れていく気なのか?」
「ああ、だが強いから大丈夫だ、それにこいつが行きたいって言いだしたんだしな」
「分かった、またな死ぬなよ」
「ああ」
ウッドとリョウは言葉を交わし、
「──エアロトルネード」
リョウは、スキルでシーラから学んだエアロトルネードという風魔法を使い、街付近の魔物を一斉に蹴散らしながら走る。
「凄いね! 『詠唱』なしで魔法使えるなんて!」
「凄いことなのか?」
「え、知らなかったの? 詠唱なしで魔法を唱えれるのは、極め抜いた魔法だけなんだよ?」
「へ、へぇ〜」
リョウは自分の頭をポリポリとかき、照れたような仕草を見せながら走り続ける。
「全部の家の壁や屋根が紫だなんてこの街の人はセンスの欠片もないのね」
「いや、魔物の仕業だろ」
「うん、街が魔物のナワバリになると、魔物たちはそのナワバリに自分たちの物、って目印をつけるの、そしてこの街の目印がこの紫色って事だね」
リョウとシロハは「納得」と頷いた。
「しかし街の中には魔物が全く居ないのね、これなら聖呪の短剣を見つけ出すなんて簡単すぎるわ」
「おいおいフラグをたてるな…………え?」
リョウは気の抜けた声を出した。
「────貴様ら何者だ?」
大きな体に紫に染った大きな鎧、そして大きな剣、全部が人間の5倍程の大きさをした者がリョウ達に問いかける。
「え……っと」
リョウとシロハとメルは驚きと困惑で、言葉が出なかった。
「シーラ達は〜、聖呪の短剣を取りに来たんだよ!」
シーラがリョウの背中から飛び降り、腰に手を当てて「ドヤァ」と言わんばかりの顔をした。
「聖呪の短剣っていう物なら全部壊してしまったのだが……すまないことをした」
「えー、なんで壊しちゃったのー?」
「呪いを解かれてしまったら困るからな」
「えー、呪いを解きたいから取りに来──」
──その瞬間、紫色の騎士は風のような速さで移動し、紫色の
「もう一度聞こう、貴様らは……何者だ?」
紫色の騎士がシーラの首に剣を当てたまま聞く。
「──エアロハリケーン!」
その声とともに、シーラ以外の者は風で吹き飛ばされた。
「……いたた」
リョウは目を覚まし、シロハとメルは紫色の家の壁にもたれかかっているのを確認する。
「シーラ!」
リョウは、シーラのもとへと走っていく。
この時若干シーラの背が縮んでいるように感じた。
「貴様も『人間』か?」
紫色の騎士はさっきの攻撃は全く効かなかったかのように堂々と立っている。
「ああ、そうだが?」
「そうか、それは残念だ」
紫色の騎士はリョウの目の前に一瞬にして現れ切りかかるが、リョウはその攻撃を上手くかわす。
「貴様何者だ?」
紫色の騎士は一度攻撃を止め、問いかける。
「人間ですが? さっきも言いましたよね?」
「そんなこと知っている。名前を聞いているのだ」
「名前が知りたいなら先に名乗るのが礼儀ですよ」
「名前はない、だが『
「そうですか、俺の名前はリョウです」
「リョウか、人間臭い名前だな」
「そりゃあ人間ですから」
暗黒騎士は剣を構え切りかかるが、リョウはそれ難なくかわす。
「貴様なんで攻撃してこない?」
「なんででしょうね? 自分が一番わかってるんじゃないですか?」
「なんの話だ?」
「本で読んだんですよ。あなたの呪いは『間接的あるいは直接接触すること』が条件だってね」
「それは本の話だろう?」
「どうでしょうね? シーラのあの状態を見れば本の内容が本当だって確信しちゃいましたよ」
暗黒騎士はもう一度攻撃を止める。
「ハハ、フハハハハ、それがどうした? それがわかったからってどうするつもりなんだ?」
「『接触せずに倒せばいい』だけです」
「ちなみに致命傷を与える魔法なんてそうそうないぞ?」
「戦っている時に敵の言ってること信じる馬鹿なんていませんよ」
「じゃあ本に書いてあったていうことは嘘ってことか?」
「さぁどうでしょうね?」
リョウは暗黒騎士の攻撃をひたすら交わし続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます