エクセロット

第17話 8歳の王様

 俺とシロハとメルは、ウッドさんの運転する馬車に乗り南の国、『エクセロット』に着いた。



 遠くからザーザーと波の音が微かに聞こえる。


「ここあっついね〜、リョウくん」

「そうだなー」


 俺にくっついているメルに「あっついならもっと離れろ!」と言いかけたがやめておいた。


「暑いならもっとリョウくんから離れたらどうかしら?」


 と、シロハは服をパタパタさせながら言った。


「ぐぬぬ……」


 メルは悔しそうな顔をして俺から少し離れた。




 街に入るとそこには、リゾート地のような街が広がっていた。

 街の下の方には浜辺があり、太陽でサファイヤのように輝く青く大きな海がある。


「うわぁ〜、綺麗だね〜」

「そうだな」


 俺たちは街の下の方にある青く大きな海に飛び込みたい衝動を抑え、城へ向かった。




 城の中に入るのは簡単で、誰でも城に入ることが出来るらしい。


「すいません、王様に会わせて貰えませんでしょうか?」

「もちろんいいですよ! でも確認したいので少々お待ちください!」


 民族衣装のような服を来た女性は駆け足でどこかへ行った。


「ヴァニラさんによれば王様って今8歳ってことよね?」


 シロハが問いかけてくる。


「でも年齢が8歳なだけで、精神年齢とかがどうなのか……」

「でも8歳の王様ってどんな感じなんだろ! 気になるなー、可愛いのかな?!」


 メルのテンションが高くなってきている。


「確かにな……」


 俺はシロハの言葉に共感したはずだったのだが……


「そうかしらリョウくん? 私の方が可愛いわよね?」

「ちょっと何言ってるか分からない」

「あらまぁ、上手くうけながしたわね」


 シロハとそんなことを話していると、民族衣装の女性が小走りで戻ってきた。


「シーラ様には確認取れました! では着いてきてください!」


 俺たちは民族衣装の女性について行く。

 メルはすごくワクワクしていそうな顔だつた。




 大きな扉の前で立ち止まり、民族衣装の女性が開いた扉の中に入る。



「「「……あ」」」


 俺たちは口をポカンと開く。


「初めまして! お兄ちゃん! お姉ちゃん!」


 王様(綺麗な水色のショートボブの少女)は、お兄ちゃんやお姉ちゃんと言っているので、精神年齢も子供にもどされたのだろう。


 いやいやそこじゃない。


 問題は俺たちが扉から入った時、つい口をポカンと開いてしまった少女のやっていた事だ。


 少女は──机の書類を破いていたのだ。


 普通は8歳なら、ある程度常識はあるはずなのだが、この少女はまるで精神年齢5歳くらいだ。


「あれじゃまるで赤ちゃんね」

「俺も思った」

「わ、私も思った……ま、まぁ可愛いけど……」


 俺も透明感があり、且つ可愛らしい顔をした少女だ、と思った。


 ロリコンじゃないぞ?


「お兄ちゃんたちどうしたのー? 遊びにきたんじゃないのー?」


 水色髪のショートボブの少女は頭にクエスチョンマークを浮かべていた。


「お名前を教えてくれるかな?」


 メルが優しく聞く。


「シーラはー、『シーラ』って言うの!」

「シ、シーラちゃんは今何歳なのかな?」

「シーラ今8歳!」

「ちょっと難しいかもしれないけど、10歳の時の記憶とかはあるのかな?」

「10歳の記憶ってなぁに?」

「わ、分からないなら大丈夫なの……」


 シーラは歳と一緒に記憶も無くしてしまったらしい。


「そんなことはいいからシーラと遊ぼうよ!」


 シーラは俺たちと遊びたいそうだ。


「じゃ、じゃあ何して遊ぶ?」

「あの海の上で戦うやつ──」


 俺たちが入ってきた扉がバタンと大きな音を立てて勢い良く開く。


「シーラ様が仰っているのはズバリ、海上魔法対決シー・マジック・バトルです!」


 いきなりなんだ? と思ったがそこは置いておこう。

 民族衣装の女性が説明を始める。


海上魔法対決シー・マジック・バトルとは、その名の通り海の上で魔法を使って戦うのですが、そこには何個かルールがあります」


 民族衣装の女性は一度一呼吸置き、説明を続けた──


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