第15話 『イース』
俺は王様のギルさんとヴァニラの弟「ヴァニラ・サーヴェルト」ともにイースとシロハのところへ戻る。
「あ、リョウくんおかえり!」
「おかえりなさい」
扉を開けるとシロハとイースが出迎えてくれた。
俺は歩いてくる時にギルと話していたことをイースに話す。
「イース、この人知っているか?」
「……なんで?」
イースの笑顔は消え、真剣な表情に変わる。
「イース、お前の下の名前はなんだ?」
「……なんで?」
「下の名前を教えてくれ……」
イースは一度大きく息を吐き口を開ける。
「『イース・メル』、『イース・ギル』の息子」
俺はギルさんの名前を少し前に聞いていたからあまり驚かなかったが、シロハは驚いたようだ。
「でも、お父さんは私のことを忘れちゃったらしいんだ……だから私はそれに耐えられなくて……」
「そうだったのね」
シロハが優しく言った。
あの時メルが、ヴァニラ王に呼ばれた理由を言い忘れたっていうのは嘘で、一緒に着いてきて欲しいから理由を言わなかったんだろう。
メルが理由を言っていたら俺たちは『メル』1人の方が早く済むだなんて言っていたかもしれないしな。
「だけれど、この国に来たのは初めてじゃないのかしら?」
「来たの初めてなの、だけど8年前一度夜遅くにここの国を出てヴァニラ王国に逃げたの……お父さんに忘れられてたのが悲しくて……」
『メル』の目には涙が浮かんでいた。
メルのお父さんギルも、涙目になっていた。
「メルさん……ほんとに思い出せないんじゃ……すまないね……」
「大丈夫だよお父さん、悪いのは全部こういう風にしたやつらだから、お母さんの
メルは決意を固めたようだ。
「私、お父さんとお母さんをこんなふうにしたヤツらを絶対倒す!」
「ありがとう……メル……」
ギルは頬を濡らし笑顔を作った。
俺とシロハとメルは馬車でヴァニラ王国へ戻り始める。
「メルって親居ないって言ってなかったっけ?」
「ごめんなさいリョウくん……嘘ついてたの……」
「ま、まぁ大丈夫だよ」
「しかし、案外一日で解決しちゃったわね」
馬車の外は茜色の夕日がゴールディーンズのビルで隠れかけていた。
「ていうか、この人がヴァニラさんの弟?!」
「そうだぞ! なんか問題でもあるか?!」
サーヴェルトはメルとテンションを合わせて話している。
「えっと、見た目がちょっとね……」
「あ、ツーヴェルトにはまだ聞いてないのか……」
「何がですか?」
「いや、聞いてないならいいんだ、戻ったら分かるかもな」
「何それ気になるよ!」
俺たちは馬車でワイワイ談笑しながらヴァニラ王国まで向かった。
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