第13話 東の国の王
俺たち三人は神々しく光る門を通り、ゴールディーンズの中へと入って行く。
「すごいな」
「まるで東京ね」
「トウキョウって?」
イースは俺とシロハが
説明しようと思ったが、説明しても信じて貰えそうもないため異世界から来たことは隠しておこう。
「あー、俺とシロハが読んだ本にそんな街が出てきてそれによく似てたからつい口に出ちゃったんだ」
「なるほどね! じゃあ今度リョウくんの読んだその本読ませてよ!」
「あ、ああ、わかったいつかな」
俺はシロハに「分かったか?」と、目で伝える。
シロハは「分かったわ」と言っているような目で俺の目に伝え返した。
「なんかこの街暗いわね……」
「こんなとこひとりじゃ出歩けないよぅ……」
イースは俺に体は寄せて怯えていた。
しかし、怖いのは俺も納得だ。
建物は全てがすごく高く、太陽の光は入ってこないので、建物の中の光で微かに道が照らされているような状態だ。
しかも人も全くと言っていいほど歩いていない。
ヴァニラ王国とは違って、国の面積は狭いが国の体積はこちらの国の方が大きいだろう。
「とりあえず城向かいましょ」
「そうだな」
地図を開きながら歩いているシロハに俺と俺にくっついているイースはついて行く。
「ここみたいね」
目の前には外壁が全面金色の超高層ビルがあった。
おそらく、街の外から見た時に雲にも届きそうなビルがこれだろう。
俺は入口らしきところのスライド式の扉を開ける。
さすがに自動ドアではなかったか。
俺たち三人は、
「すいません、ヴァニラ王国のヴァニラ王から使用人として送られてきた者なのですが王様に合わせてくれないでしょうか?」
「分かりました、今確認致しますので少々お待ちください」
そう言うとスーツ姿の使用人は既に描いてあった魔法陣の上に立つと消えていった。
数分が経ち、使用人が戻ってくる。
「確認が取れました。本来、王と会うことは出来ないのですが今回は特別だそうです。ではこちらの魔法陣に皆さん入ってください」
俺とシロハとイースは魔法陣の中に入った。
「ではテレポートさせます」
スーツ姿の使用人の言葉と共に目の前が真っ白になった。
数秒後、白以外の色が見えるようになったのを確認して魔法陣から出る。
「王はこちらです」
先程とは違うスーツ姿の使用人は目の前の扉へと案内している。
俺たち3人は目の前の扉を開き中へと入る。
「初めまして」
中に入ると、白く長い髭を生やした70代位のおじいさんが話しかけてきた。
「初めまして」
「君たちがヴァニラ王からの使用人じゃな、まぁそこに座りなさい」
俺とシロハとイースは王とテーブルを挟み、ふかふかのソファに座る。
「それで要件なんだい?」
「ヴァニラ王の弟がこの国に交渉をしに来たはずなんですが、どこにいるか分かりますか?」
「すまないが、わしは記憶喪失らしいんじゃ、だから過去のことは全くおぼえておらんのだ」
「どういうことですか?」
王が記憶喪失とはどう言うことなんだろう。
「わしは王様だったらしいんじゃが王様になった記憶はない、記憶喪失とは言ったが失ったのは『思い出』じゃな」
「どうして記憶喪失になったんでしょうか?」
「わしは覚えておらんのだが、8年前に西、東、南、北、そしてヴァニラ王国の王様5人で西の国とヴァニラ王国の間にある、バゼイヴァイクという町で交流会を開いたらしいんじゃ、その帰りに何者かに出会い記憶を失った。わしたちの馬車はみんな記憶を失ったんじゃが、他の四国の馬車も何者かに会ったらしいんじゃ──そしてそこからはわしは記憶障害が起きている。記憶障害が起きてるのはわしだけらしいんじゃが、7日前の
大きな五国は大昔からこのような状態だったのではないらしい。
そして今大切なのは、王様が記憶障害という状況だ。
「ヴァニラ王の弟の居場所とかって知ってるんですか?」
「知っておるぞ」
「ヴァニラ王に連れて帰ってこいと言われたんですが、連れて帰ってもいいでしょうか?」
「いいわけないじゃろう」
王様は「何バカなことを言ってるんじゃ」という顔をした。
「じゃあどうしたら返してくれるでしょうか?」
「では──」
王様は、座っていた椅子から立ち上がった。
「君、賭けをしないかい?」
──と王様は、俺にそう言った。
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