Chapter II Country

第10話 仲間

 俺はシロハと共に闘技場を出ていこうと、出口へ歩き出す。


「ちょっとまって〜」


 後ろから声が聞こえてきた。


「いやよ」


 これは隣から聞こえた。


「はぁ、はぁ、追いついた」


 後ろからの声の主はイースだった。

 ここまで追いかけてきて息切れをしたらしい。といってもそんなに離れていなかったはずだが。


「なんの用かしら?」


 シロハがイースに尋ねる。


「私も一緒について行きたいの!」


 イースはいつにも増して真面目な顔でそう行ってきた。


「いやよ」


 シロハはいやらしい。


「え……なんで……? 嫌われることしちゃった?」


 イースは心配な顔をした。


「リョウくんに付きまとってることが嫌だわ」

「なんでよ?! リョウくんはシロハさんと付き合ってるの?」


 イースはシロハの言葉にムキになった。


「俺は『彼氏いない歴=年齢』だぞ」

「あら、そうだったのね。こんなにかっこいいのに……周りの人には見る目がないみたいだわ。まあでもそっちの方が私にとっては都合がいいのだけれど」

「ならいいじゃん! 別にリョウくんとシロハさんは付き合ってる訳でもないんだから!」

「今はなのだけれど? 将来は結婚すると誓いあったわ」

「いつだよ!」


 俺はいつの間にか結婚を誓い合ったらしい。


「冗談よ。それでリョウくんはイースさんを一緒に連れていきたいのかしら?」


 俺に判断を任せるとは。

 俺は優柔不断なので、どうしたらいいか考えてみよう。


 ステータスは、シロハとある程度戦えてただけの技量とステータスはあるため連れていく価値はあるだろう。

 だが、俺とシロハに着いてこれるのかは不明だ。

 それに、シロハと喧嘩になったら俺がすごく居心地が悪すぎるぞ。

 しかし、やっぱり仲間が増えるのは嬉しいため、一度連れて行ってダメだったら連れて帰ればいい。


「イース、いいぞ」

「え!? ほんと!? やったー!」


 イースは喜んだのだが、シロハは真面目な表情だ。


「冗談がすぎるわよ、リョウくん」


 普通に冗談ではないのだが。


「よく考えなさい。一人の命を私たちが預かるということなのよ? その重さを十分理解した上での承諾なのかしら? 私には命を預かることは到底出来ないわ。それでも連れていくって言うならいいのだけれど……」


 やっぱり親の承諾は必要事項か。


「親に承諾は貰ってるのか?」


「──私、親は居ないの」


 イースの声のトーンが下がったのがわかった。


「ごめん」


 俺は謝った。


「大丈夫だよ? よくある事だし! そんなに謝るような事じゃないよ!」


 イースの声のトーンは元に戻る。


「しょうがないから、いいわ。仲間にしてあげるわよ」


「ありがとう! じゃあ──」


 シロハはイースの言葉を遮った。


「──だけど、何個かルールを作るわ。リョウくんの半径2メートルに近づかないこと。リョウくんに伝えたいことがあるときは私を通して伝えること。リョウくんの寝ていいのは──」


 イースもシロハの話を遮った。


「──そんなんじゃリョウくんと全く近づけないじゃん!」

「あら、やっぱりリョウくんに近づくのが目的だったのかしら」

「違うよ! じゃあ勝負しよう! 今からできるもので」

「そうね、いい提案だわ。じゃあリョウくん何かを勝負を考えてくれないかしら」


 え、俺か。

 結局俺に来るのか。


 簡単に出来る勝負と言ったら、ジャンケンなどの運勝負だが、これじゃイースが有利すぎる。


 ならば……


「あっち向いてホイでどうだ」

「なにそれ?」

「それは何かしら」


 あれ? 知ってるのって俺だけ?

 イースが分からないのは分かるが、なんでシロハも分からないんだ?


「じゃ、じゃあルールを説明するぞ。ルールは簡単、ジャンケンをして……って、ジャンケンのルールは分かるか?」

「分かるよ!」

「そんなの分かるに決まってるじゃない」


 ジャンケンは分かるのか。


「じゃ、じゃあ説明を続けるぞ。ジャンケンをして勝った方は、上か下か右か左を指さし、負けた方は、上か下か右か左を向いて、買った方の指と同じ方向を向いてしまったら負けだ」


 あ。

 今思ったのだが、じゃんけんとあっち向いてホイってあんまり変わらないんじゃね?


「ルールは分かったわじゃあ早速やりましょ」


「うん! リョウくんの作った勝負楽しみだな〜!」


 俺が作った訳ではないがな。


 俺の掛け声でジャンケンをして、シロハはパー、イースはチョキ。


「あっち向いてーホイ」


 俺の掛け声に合わせイースは上を指す

 そして、シロハは上を向いた。

 やっぱり1回で終わってしまったか。

 でも、この勝負をシロハは知らないでくれてよかった。

 それとも知らないふりをしたのか。

 この勝負にわざとまけて、イースを連れていくために。


「イースの勝ちだな」

「やったー! これでリョウくんと一緒に旅できる!」

「あら、おめでとう。運で負けたわ」

「運も実力ってやつだよっ!」


 とりあえずこれからは仲間なんだから仲良くして欲しい。


 シロハとイースは睨み合いながら歩き出した。

 俺はその後ろをついて行く。


「あ! そういえば、王様に呼ばれてるんだった!」


 イースがそんなことをいきなり言う。


「あら、爆弾発言ね」


 俺とシロハとイースの三人は王城へ歩き出す。

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