第4.5話 俺のスキルとは…(裏)

 ──私は目が覚めるとベッドの上に寝ていた。


「ここはどこかしら」

 そんな言葉を口にして、心を落ち着かせる。

 ここは見た感じ牢屋だと思う。

 まず私が真っ先に頭に浮かんだのは、リョウくんだ。

「リョウくんはどこに行ったのかしら」

 早くリョウくんの所に行かなくては。


 私は檻を蹴破ろうとした。が。ビクともしない。


「あ、おはようございますシロハさん」

 何者かが牢の外から小声で話しかけてきた。

「ハリー?」

「はい、ハリーです」

「ここを開けてくれないかしら、はやくリョウくんのところに行きたいのだけれど」

「はい、今開けます」

 ハリーはそう言うと、ポケットに入れてあった鍵を取り出し、牢の扉を開け、私が外に出たのを確認すると、鍵を閉めた。

「ありがとう、恩に着るわ」

 そう言い残し走り出そうとした時──


「──ちょっとまって!」


 私はびっくりして、足を止めた。

「1つお願いを聞いて貰えないかな?」

「何かしら、急いでいるからできるだけ早くしてもらいたいのだけれど」

「僕のお父さんを倒してくれないかな?」

 何を言うかと思ったら、自分の親を倒して欲しいだなんて。

「それは、後で私のせいにして、通報したりする訳ではないでしょうね?」

「しないよ、それに多分そう思ってるのは僕だけじゃない、妹もお母さんもきっとそう思ってるはずだ」

「じゃあどうしてあなたのお母さんはあなたにを飲ませたのかしら」

「それはお父さんに逆らうと殺されちゃうからだよ」

「それは怖いわね」

「本当は僕を寝かせてあの洞窟まで運んだのは妹のリリーで、三日前はお父さんが帰ってくるから逃がしてくれたんだと思うよ」

「じゃあ寝かす必要はあったのかしら」

「僕は起きてたら絶対にそんなことはリリーにはさせないよ。リリーを危険な目に晒すくらいだったら僕は大人しく死ぬ方を選ぶからね」

「それで、今日お父さんが出張に行くから連れて帰って来い、って事だったと言う事ね」

「だけど君たちがリリーの予定より1日早く連れて帰ってきちゃったのが失敗だったんだ。それにもう、僕がこの家にいることはお父さんにバレてる。お母さんが僕の分のを作っちゃったからね。あと、お父さんは君の彼氏さんを殺して、スキルを奪おうとしてるんだ」

 彼氏じゃないけれどね。

「そういうことだったのね」

「だから君に僕のお父さんを殺して欲しい」

「分かったわ、何か武器があればさっさと殺せるのだけど」

 ハリーはポケットから鞘付きのペティナイフを取り出し、私に渡す。

「じゃあお願いします」

 ハリーの目には微かに涙が浮かんでいた。

 だが、私にはそれよりもリョウくんを殺そうとしているやつの事しか頭にない。

 私はリョウくんのいる牢の方向へ歩き出す。

 すると、リョウくんの牢の前ににハリーのお父さんが現れる。

 話はよく聞こえないが、リョウくんのスキルのことについて話している様子だ。

 良かった、報酬は貰えて。

 あと、微かに聞こえてくる話を聞く限り、ハリーのお父さんの名前はケリーのようだ。


 リョウくんの牢からケリーが離れるのを確認する。

 早くリョウくんの場所にいきたいな──


 ──30メートル先のケリーの方向へ走りだした。


 ──ケリーの顎を右足で蹴り上げ、後方に倒れかかったケリーの大事なところを左足で蹴り飛ばした。


 ──股間を蹴られ痛がっているところで、みぞおちに右膝を入れ、怯んだところでケリーの数少ない髪の毛を掴み、顔面に右膝を思っきり入れた。


 ──ポケットからペティナイフを取り出し


 ──鞘を取り


 ──ナイフを構えて


 ──心臓目掛けて突き刺した。

 ナイフは刺しっぱなしでいいだろう。

 そしてケリーは声も出せずにその場に倒れ込んだ。

 まだ生きているかもしれないが処理はハリーにお願いしよう。

 ハリーに合図を送り、私はリョウくんの元へと向かう。

「あら、もう起きちゃってたかしら、遅れてごめんなさい」

 私は牢の中のリョウくんに話しかける。

「シロハか」

「ええ、あなたの愛しのシロハよ」

「どうしてここにいるんだ?」

「助けに来たからよ」

 私はそう言い、ケリーを強くなった足でリョウくんの檻を壊した。

 そして私とリョウくんは外に出たのである──



 ──だが、このをリョウくんにするのはやめてとこう。



 ちなみに「ケリーを」はダジャレよ。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る