作中の用語と設定

【序章に登場する用語】


*「ゲネルバ」

カリブ海上、ジャマイカとキューバの中程に浮かぶ総面積二万二千キロ平方メートル余りの小さな島国。


九世紀頃には土着文明が栄えていたが、一六世紀の到来と同時に「コンキスタドール」と呼ばれるスペイン人が入植し、先住文明を征服、労働力として先住民を酷使する時代が二百年ほど続いたことで、先住文化は完全に廃れた。

スペイン人の支配が終わり独立した後は、アメリカ人侵略者と彼らの引き連れたプランテーション企業による新たな搾取が始まり、その中で国民の中に、社会主義に対する切望が高まる。

冷戦が始まると、アメリカの東海岸をICBM(大陸間弾道ミサイル)の射程内に捉えることのできるその位置から米ソ双方に注目され、一時は社会主義政権が発足されかけたが、CIAの破壊工作により、閣僚が全滅したことで達成されず、これ以降、ソ連・KGBが後方支援する社会主義勢力は武装闘争に訴えかけるようになる。さらに、キューバ危機が生じて以降は、腐敗した現地政権では共産化を止められないと判断したアメリカもCIAを通して、ゲネルバ国内のシンパを扇動し、「ゲネルバ革命軍」を設立させ、陸軍特殊部隊群(グリーンベレー)による軍事訓練、CIAによるダミーカンパニーを通した武器密輸を行った。

一九七五年現在、ゲネルバ国内では腐敗し、実行支配力の弱い政府のもと、アメリカの支援する「ゲネルバ革命軍」とソビエトの支援する共産ゲリラが、しのぎを削っている。


地理については、内陸部にある土着文明の古都は完全に廃れ、西側に細く伸びた半島にスペイン人が自身の貿易のために築いた港湾都市、カプロリウムが現在の首都となっている。



*「ゲネルバ革命軍」

長年の植民地支配とプランテーションによる搾取で政府の支配力の弱まったゲネルバ国内に、アメリカ帝国主義に対する反抗心を契機として、市民の間に広がり、ソビエトの支援を受けて武装勢力と化した共産ゲリラに対抗するために、アメリカ合衆国がCIAの裏工作によって作り上げた親米の武装勢力。

グリーンベレーによる教育・軍事訓練を受け、高い練度を保つ上に、CIAからダミーカンパニーを通して裏流しされた最新銃器を使用する。


主力武器はCIAから横流しされたFN FALライフルだが、共産ゲリラから流出し、国内で安く裏取引されているAK-47も多く使用する。

一部、吸収したゲネルバ国軍から獲得した旧式装備も使うが、それでも未だに第二次大戦前のボルトアクション式小銃が主力の国軍と比べると圧倒的に先進的な装備を使用する。


しかし、一年前、アメリカ側で「ゲネルバ革命軍」への非公式・非合法の軍事支援が政治家のスキャンダルの一部として発覚したことで、CIAから一方的に支援を打ち切られ、それを好機と見た共産ゲリラに攻勢をかけられ、複数の拠点を連続して失っている。


創作のモデルとなったのは、中米ニカラグアの親米反政府組織「コントラ」。



【第一章に登場する用語】


*「特殊戦用特殊部隊」

ソ連との本格的な全面戦争が発生した際、本国内部または戦闘地域において、指揮系統の破壊や各種工作活動を行うであろう敵国特殊部隊を殲滅するため、対特殊部隊用の特殊部隊として大戦終結直後の一九四七年に陸軍内に発足された極秘部隊。

所属は陸軍だが、それ以外の三軍からも最優秀の隊員達を集めていた……、


しかし、ソ連が核爆弾の開発に成功したことで、相互確証破壊の理論から米ソの直接戦争発生の可能性が薄くなり、戦争の形態が局地紛争に変化するに従って、その存在意義は徐々に薄くなり、朝鮮戦争以降、人員や予算の規模も削減され続けて、現在部隊に所属する隊員達が優秀ではあるものの、原隊で問題を起こし、戸籍上死亡扱いされたものばかりなので「ゴースト」の俗称で呼ばれるようになった。



*「シンボル」

メイナードやリアム・エクランドが所属し、アメリカ上院議員のファーディナンド・モージズが首脳幹部の一員を務める思想集合体(いわゆる秘密結社)。


よりバランスの取れた世界調和とあるべき世界のために世界政府樹立を目的としており、アメリカ以外にもソ連にも同胞者(クレムリンの最高幹部にも「シンボル」の首脳幹部が所属している)が存在する。



【第四章に登場する用語】


1:「愛国者達の学級」

第二次世界大戦集結直後の1949年、発足されたばかりの中央情報局(CIA)が大戦の動乱で身寄りを無くした戦争孤児達を世界中から集めて結成した特殊作戦グループ。


隊員達は七歳から十四歳の子供達で戸籍上はどこの国にも存在せず、死亡した扱いになっているため、訓練や生活は最低限の人権を無視したものとなっており、訓練中の死者も多く出している。破壊工作や戦闘、殺人の訓練は当然のこと、語学など一般的な教養も学ばされ、成績が一定以上に達さない者もやはり"処分"される。


訓練キャンプはアメリカが支援する南米の某国にあり、隊員達は自分がどこの国に所属しているのかを知らされていない。これは後に述べる「愛国者達の学級」の最終的な目的のためである。


また、総指揮官のロキの意向によりメイナードのような年齢制限を超えた青年も部隊に配属されている。


・「愛国者達の学級」の目的

幼少期から過酷な訓練と教育を課すことで一流の工作員を育成する一方で、「愛国者達の学級」では国に対する忠誠などは教えておらず、彼らがどこの国に所属するのかも伝えられていない(戸籍上はどこの国にも属さないが…)。

これは将来、同盟国がアメリカ合衆国の意に沿わない経済的・政治的・軍事的決断をした際に、条約や国際関係の観点から直接的な軍事行動を取れない同盟国に対して、第三者のテロに見せかけて破壊活動を行うための工作員を「愛国者達の学級」が育てるいるからである。仮に工作員が捕らえられたとしても、戸籍上はどこにも属さない(存在しない)上に所属する国家の知識が元からなければ、拷問などを受けてもアメリカの関与は疑われずに済む。そのために高度な破壊工作や教育は施しても国への忠義などは一切教育していない(その代わりに指揮官の命令には絶対服従という原則だけは経験と洗脳で叩き込ませる)。


例:NAFTA(北米自由貿易協定)をカナダが離脱しようとした場合、その活動の中心になっている政治家の暗殺・もしくは事務所への爆破テロを「愛国者達の学級」の工作員が行う。テロ直前に上官が工作員に「お前はイスラム過激派のメンバーだ。」と刷り込ませておけば、もし工作員が捕まったとしてもアメリカの関与は発覚しない。




2:「サブスタンスX」

物理学者のユーリ・ホフマンと生物学者のイリヤ・ポモシュニコフの共同研究で開発された"新しい概念の物質"。

ある一定の範囲内にある物質の核分裂反応を抑制し、核分裂や核融合の技術を用いた兵器や施設の稼働を不可能にする性質を持つ。加えて、他の物質に働きかけて、自己の核分裂抑制反応を伝染させる性質も備えており、一度空気中に放たれると地球上の全ての核兵器・原子力設備を無効化する威力を持つ。

但し、核分裂抑制反応と伝染作用は不可逆的であるため、一度解放されれば、その能力を封印することは不可能。そのため、現在は外の物質と作用し合わない〜う、"物質"を強力な電磁力で閉じ込めた特殊容器で保管されている。


その正体は一九七〇年九月十二日に月の表面探査を行ったソビエト連邦の無人探査機「ルナ16号」が回収してきた、"自己増殖能力"と"物質への寄生能力"を備えた半生物物質と核分裂を抑制する新元素の"サブスタンス0"とを融合したものである。尚、"サブスタンス0"の開発はユーリ・ホフマンの研究によって得られ、半生物物質の標本からの分離と"サブスタンス0"との融合はイリヤ・ポモシュニコフの手によって完成した。

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