夜明け
夜明けになると僕の部屋の窓をカリカリと引っ掻く音がする。
毎日毎日。
ベッドで横たわる僕の頭側の窓から。
カリカリカリカリカリカリカリカリ。
ほんのりと明るさを含み始める部屋の中に響く音。
(今日もうるさいな)
不思議と怖くはないが起床時間よりも早くに起こされるのは気持ちのいいものではない。
特にここ数日音が大きくなっている。
苛立ちが限界に達していた僕は思い切り布団を剥いで窓の方を向いた。
「……」
しかしそこには何も存在していなかった。
薄い生地のカーテン越しに窓枠がぼんやりと見えるだけで、音の原因となるものは何もいなかった。
「なんだよ……」
僕は思い切り頭をかいた。
「いたっ!」
同時に頭をかいた手に鋭い痛みが走った。
反射的に腕を振ると何かが床に落ちていった。
恐る恐る屈んでその何かを見ると。
「人?」
その何かは小さな人のような形をしていた。
しかしその顔に目や鼻はなく、大きく端が裂けた口だけが存在していた。
カリカリカリカリカリカリ。
先程まで聞こえていた音を思い出した僕の手は再び頭頂部付近へ。
「ひっ!」
手で触れたそこには深い深い穴が空いていた。
痛みもなく血も出ていない。
ただ穴が空いていた。
すべてを飲み込んでしまいそうなほどの深い穴が。
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