第22話 私に偽装? はぁ? なめてんの?
ああ、ロゼス王国楽しいです。私は雑魚処理で火薬式の古臭い銃を使うような貧弱もので低い冒険者ランクじゃあなくなりました。冒険者の仕事はあまり来ませんが、ハンターギルドで賞金稼ぎが普通にできます。あまり犯罪者が居ないので探しもの中心なんですけど。
自分の足で生活している感じがすごくします。楽しいです。
あまり一つの街に滞在すると、博士に見つかるというのが難儀なんですけど、今のところ超城塞都市ロレパックで楽しく生活できています。
後顧の憂いを絶っておきたい、つまり神王国の戦力を削っておきたいなーなんて余裕な考えも生まれました。
そんな生活をしていたのですが、ちょっと最近、私が暴力や狼藉を働くという話が流れてきました。んー、今のところ名声が結構あるので私が本当にそういうことをするわけがないと思ってくれているのですが、犯人を捕まえて悪名を高めるようなことをやめさせないと、ここで楽しい生活を送るのに不都合ができてしまいます。
なので、探偵というか犯人探しをすることにしました。んー、そういう探偵系のスキルは【観察と看破】くらいしか持っていないので難しいのですが、追い詰めてやります。私に喧嘩売るとかふざけんな!
まず聞き込みをしましょう。被害にあった方Aさん(匿名)によると……。
「もう顔かたちや小さい身長なんかの特徴が完全に一緒だったので牡丹さんかなと思ってさ。挨拶をしたんだ。そうしたらニヤニヤしながら路地裏に連れ込まれて、殴る蹴るの暴行をさ……。牡丹さんがそんなことするはずがないので、誰かが変身していると思って僕が持っている【看破】をしたんだけど、どうも牡丹さんらしくて……。牡丹さんがそんなことするはずないよね?」
「私がそんなことして、メリットがあるとは思えないですよね。なにか、違和感はありませんでしたか?たとえば……お洋服がいつもと変だったりとか」
「んーいつもの洋服だったと思うけどな。綺麗なワンピースを着ていたよ」
[ひだりて:時間帯を聞きたいですね。場合によっては武装して外にいたかもしれません]
「えーと、いつだった?」
「1週間くらい前かな。スラムに近い所だった、うかつに近づいたのが失敗だった……」
「おかしいな、その時はモンスター討伐を私はしていたんだよ、帰ってきたのは3日前なんだ。ハンターギルドに聞いて、確認してくれると嬉しいな。私じゃあ絶対ないからさ」
「うん、違う野郎だとは思ってるんだ。そこは疑ってない」
「ありがとう、情報提供もありがとうね」
ここからわかる情報は何だろう?
[みぎて:まず、行動の把握ができないような人物だってことだお]
[ひだりて:罠ははれそうなんですが、まだ情報が足りないです]
Bさんに聞きました。
「はっきり言います。私の処女を奪いました」
「え」
「本物でも偽物でも関係ないです。私の最初を奪われたんです。あなたという存在を恨みますよ、私は」
「……ごめん」
「あやまっても、帰ってくるものではありません」
[ひだりて:厳しい話ですが、なにで奪われたかを幻惑で惑わしてでも聞き出しましょう]
「ナニデ、ウバワレタカ、ワカル?」
「……それそのものです」
「私はどれだけ変装や偽装、変身しても女性なんだ。どうやってもそれは作り出そうとも思わない。私、拷問されたからね」
「……そうですか。場所は、スラムに近い所です……」
[ひだりて:またスラムですね]
[みぎて:スラムじゃないと、変装できないのかお?]
[ひだりて:変装がやりやすいのでしょう]
スラムで痕跡を探そう。
観察をしつつ、看破を所々でやりましたが、痕跡は探し出せませんでした。
こんなことをやっているときに、ついに悲惨な事件が。Dさんが私の偽物によってかなりの重傷を負ってしまったのです。
時はついさっき。現場に急行しました。
「Dさん!」
「あが……あがが……」
「今すぐ回復します! 死なないで!」
「あ……あ……。うん、大丈夫。くそ、人目があるところで思い切り殴ってきた。このままじゃ牡丹さんがここに、ロゼスに、いられなくなってしまうよ」
「……、あの、思いっきり殴ったんですよね?本当に私だったら正直顔がトマトをつぶしたようになっているはず。武装はなにを?」
「なにも。ただ、冒険の服装だった。狙うスマッシュと叫んだのははっきりと覚えてる」
[ひだりて:冒険服装ということはレザーアーマー。でも槍までは作り出せないんですね。ただ、スキルは本物と同じものを持っていると推測できます]
[みぎて:痕跡が探し出せないとなると、変装系のスキルプラス、誤魔化されてるお。越えるスキルを手に入れないと探し切れないお]
場所はスラム。そしてだんだん行動がエスカレートしている。このままじゃ死人が出ちゃう。
……また借金生活か……。
明くる日。早朝から私はスラムで目を光らせていました。見渡せるように、スラムの中心にある教会の尖塔の上で。
あ、あいつ! 変身した、違う人間に! 潜伏忍び足で追いかけよう!
そうして、人のいないきわめて悪臭があるところで、やつは私になりました。
「やあ、変身君。ついに私になる瞬間を掴んだよ」
「な、なんでわかった!? くそがっ!」
逃げたぞ、まずは【看破】!
すると見る見るうちに透明な人間になりました。
ハンターギルドで聞いたモンスター、ドッペルゲンガーです! 私を忠実に再現できるということは上位のモンスターもしくは中ボス的な存在!
「にがさないよ! 【追跡】!」
私の網膜に、追跡されている人物の逃げているルートが直接表示されます。科学なスキルだなあ……。
追跡! 追跡! 追跡!
逃がさない! 逃がさない! 逃がさないよ!
追いかけまわすこと数刻。ついに袋小路に追い詰めました。
「なんで完全にバレたんだ……チクショウ、チクショウ」
「ドッペルギャンガーフフフフフ程度のクラスだと、私のスキルプラス1くらいは身体を変える時に上乗せできるようなんだねえ……」
でもねえ、わたしねえ。特異体質だからねえ。
「レベル一つ上げるくらいなら、私が新しいスキル手に入れたり、既存のやつのレベルを1つくらいあげれば、一気に上回れるのさ。理由は教えないけど。じゃあ、捕まえて、各種必要なところに連れまわしてあげるからさ、そのあと、スキルジュエルになってくださーい」
念力の縄でぐるぐる巻きにした後。各種場所に連行して、自白させまくりました。
「もういいっすかね、守衛さんやギルドの皆様」
皆様もう大丈夫ということで、ドッペルギャンガーフフフフフの首をちょんぱ。未鑑定スキルジュエルを手にしました。鑑定してもらうか。
「はっけよーい、のこった! のこった! のこらなかった!」
んー。何も言うまい。
「はぁはぁはぁはぁ。これは、【化ける】だね。その名の通り化けることができる。レアだからスキルまで全部【化ける】ことができる、というわけだね。お疲れ様牡丹ちゃん」
取り込みまして。うん、終わりですね。
スキルは化けられても、累乗体質や、見えないところで新しく取り込んだスキルまでは化けられなかったってことだね。
ああ、探偵業は疲れるな。
――スキル――
観察 Lv2
看破 Lv3
追跡 Lv1
自白強要Lv1
――レア――
化ける Lv1
――お金――
借金5000ドルエン
――――
はぁ。成長済みのLvのジュエルを買い集めて取り込んだから、めちゃくちゃな借金がまたできちゃったよ。はぁ……。
私を狙ったのは、たぶんユウシャサマパーティか神王さんなんだろうなあ……。ほかに恨み買ってないもの。
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