第4話 『異能』とは
とりあえず状況を整理しなおそう。
俺は今日、朝に普段話もしない高尾さんに、普段会いもしない屋上で会った。
そして夕方に場所と時間指定で呼び出された。
そうすると暴漢が襲ってきて攻撃を受けた。黒ずくめでフードを被った男……不審過ぎて悪目立ちするだろうに。
髪の色は金髪、身長はなんとなく同じくらいか。蹴りの威力が人間離れしていた。
廃工場に逃げ込んで隠れたが、あえなく見つかってやられそうになったところで目の前に球体が現れてその後、地響きがあった、と。
で、その球体をぶっ潰したのが目の前の高尾さんだということだ。
「とにかくありがとな、助けてくれて」
俺は高尾さんにそう言った。
「あれは、あたしじゃないわよ。あなたの後ろにいる菊川さんのおかげ」
えっ!? 驚いて俺は後ろを振り返った。そこには筋骨隆々とした格闘家のような男が立っていた。
背は高いな……それよりも纏っている強さがよくわかる、威圧感のある佇まいの男がいた。
「いつの間に……」
「いや、最初からいたが」
と、俺の疑問に何事もないように答えた。いや、何か一言くらい言ってくれよ、驚くだろ……
「えっと、遅れましたが俺は
とにかく挨拶は重要だ。相手から挨拶して欲しいところではあったが相手はどう見ても年上だ。
「
力が取り柄っていうレベルか? 何か金属の玉が千切れてるぞ。厚さ5cmくらいあるんだが。
どうやって力であんなことになるんだ? 確かに腕は俺の足の太ももくらいあるが……
とにかくどういうことか聞いてみよう。
「すみません、いきなり襲われて何が何だか……状況が全くつかめないのですが、何かわかります?」
「あぁ、オレも高尾に連れて来られてな、何から話したものか」
高尾さんをチラと見ると、目が合った。ニコっと笑った気がする。いや、ニヤっかも。初めて笑っているところを見た気がする。
「君には『異能』が目覚める可能性があって監視してたの。昨日あたりから予兆が強くなったから、こうやってお話しようと思って呼び出したのよ。まさかこんなことになるとは思ってもいなかったけどね」
「『イノウ』が目覚めるってどういうことだ? というか『イノウ』って何なんだよ、地図でも作るのか?」
「伊能忠敬じゃなくて、『異能』よ!」
ツッコミが早い。高尾さんは前から俺を監視していたらしい。そもそも『異能』っていうものがよくわからない。何か特殊な能力っぽいが。
高尾さんはよくわかっていない俺に解説を続けた。
「『異能』っていうのは一言で言うと超能力よ。由来は知らないけど『異能』って呼んだ方が楽だからじゃないかしら。あたし達は『異能』を開花した、『異能者』を集める組織にいるの」
「わかった。でも『異能』が使えるようになりそうな奴がいたらその場で声かけたらいいんじゃないのか? 俺は酷い目にあったんだが」
「ええ、久我山君の言うことは尤もね。ただ、能力覚醒時は危険があるのよ。その人の能力の根源が『発現』することが多くて」
高尾さんは俺の作ったと思わしき鉄の玉を軽く手のひらでぺしぺしと叩いている。
「これが俺の……『異能』? だっていうのか?」
自分が生み出した物とは思えない。今も夢を見ているかのような感じだ。わかるだろ? 非日常な風景を目にした時、理解できずにそれが日常のように見えてしまうっていうのは。
「状況から見てそうでしょうね。無我夢中で『異能』が『発現』する例は多いのよ。で、一応聞くけども久我山君はどうしたいの? 選択肢なんてほとんどないけどね」
「選択肢ってどういうことだ?」
「あたし達の仲間になるかどうかってこと。それ以外の選択肢なら久我山君が決めてね? 仲間にならなかった場合、そんなに愉快な未来ではない気がするけど」
「何かさらっと怖いこと言ってないか!? というか仲間になったらどうなるんだ?」
「そうね、まずは『異能』の訓練をしてもらうわね。学校には普通に通ってもらうわ。そのためにあたしがいるのだもの。その代わり早く自分の身は自分で守れるようにはなって欲しいわね」
『異能』の訓練、ね。学校には通わないといけないと。しかし大事なことが言われてないな。
「高尾さん、一つ聞きたいんだけど俺が仲間になったことに対する俺にとってのデメリットは何かあるのか?」
「そうね、デメリットね……戦力として招集されることがあるわ。異能を使って様々な問題事を解決するのがあたし達の仕事なのよ。依頼に対しては報酬が出るし、悪くないわよ?」
「で、問題事ってあれか? さっき俺が襲われたような事か?」
「ええ。『異能』に関してはもう見たと思うけど普通の人と明らかに違う力を発揮できるの。訓練次第だけど戦車並の強さになる人もいるわ」
戦車並ってやばくないか? 銃で死なないレベルだぞ。もう少し疑問をぶつけてみるか。
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