4章-03話 人探し(前編)

 俺はその場で久々に符術を使用し都会に多いカラスをくみ上げた。

 流石に皆の前で組み立てる術は少し緊張があるが仕方がない。

 同時に四匹組むと開いている窓に向かって投げ、術を発動させた。

 瞬間的にカラスが四羽宙に舞っていく。


 そのままサーチの札を媒介にして同時に四つの映像を管理し人探しを開始する。それをしている隣で魔導を媒体にした増幅術をナーシャが俺に掛け始めた。



「さすがに大将達に術では勝てないけどおいらには勘と目があるんだ、行こうグレン」とアイネが走り出した。 グレンもそれに追随する。


 データパッドを開きながら、一般の歩行者のふりをしながら、目標地点に近づいていく、「警備の人が多いね」、とかいいながら廃墟をのぞき込む。警備人員だけを割いた形になっていた。「チェッここはスカかぁ」とアイネがいった。「そうでもないぞ」とグレンが指さした警備会社の名前が入ったバンが一台停車している。警備会社の名前からデータパッドで存在する会社かどうか確認をする。実在する会社の様だった、アイネはそのままガードをグレンに任せるとハッキングを開始した。今この会社が受けているガードの中でも強度が高い件はっと、スラスラとペンを走らせながら二か所に絞り込んだ。「OKグレン、移動しよう」というと次の箇所に向かって走り出した。



 そのころマリは甚九郎ジンクロウとともにサリーネの誠神殿に向かって歩いていた。

 二人とも装備とはいっても冒険者でいう装備だけなので、特に街中では目立たなかった。

 すぐにサリーネ神の誠神殿に着いた。サリーネ神は広く教義を正義としているのでわかりにくい難解な教義を要求されるのであるが、信奉者はほかの神に比べても多いほうだった。


 神官の階位を見せ神殿内に入っていくマリ、ここの高司祭とも話ができてしまうランクであるため精神と時の部屋を借りるという話を高司祭にした。目的は病んでいる精神の救済だと告げた。甚九郎と一緒に精神と時の部屋へ入り、瞑想を開始する。甚九郎は見張り役でありマリのガードである。


 魂魄界に魂を飛ばすマリお目当ての魂には今回は大きな目印がある。

 それを元手に魂の探索を開始した。



 俺は一~四の番号を振ったカラスで空中から視界を広げて探索している。しかもただの探索ではない魔力探査である視界に映り込んだ対象に魔力で術式が掛けられていないかそしてその術式は何なのかを探せる便利どころなのである。

 しかもナーシャによって増幅されているので一気に数百人単位で探せてしまうようになっているのである。

 三番のカラスに異常な反応が感知された、攻撃を受けているというものであった。すぐさまほかの近いカラス二と四を向かわせて状況の確認を行う。一はそのまま廃墟上空を探知するべく飛ばしている。

 廃墟内にはレース種はおらず、動物のみが探知で見えている。三は回避行動から立て直し攻撃された方向を見た、そこには式神が存在していることを探知できた。二と四を使って三と一緒に式神を撃破しに動かす。

 式神としての術の強度はそんなに高くないらしい三セットで十分押せるところまで行くと式神は大破崩壊した。術式同士を絡み合わせて式神の術式を破壊したのである。単純な式神だからできたのではあるが、式神がいるというそこは何なのだろう? 一般的な場所ではないような気がしたのでそのまま三匹一緒に陣を組み探査をかけることにした。そして一では気配すら感じられなかった廃墟をあきらめ二~四のバックアップに回すことにした。データパッドの欠片であるデータとリンクしているので地図に三匹がいる場所を投影できるのである。そこは旧製紙工場と表示されている廃墟であった。



 魂魄界から魂を探すマリに吉報が寄せられた。「旧製紙工場の方に何かある、探れないか?」であった。


 流石に魂魄界にデータパッドは持っていけないので、音で聞いているわけだが、「旧製紙工場ってあの広い跡地かい?」とマリは話すことにした。


「そうだ、式神がいた明らかに罠か何かある。霊体視で何か変なものは見えないか? 雁字搦がんじがらめにされている魂など発見出来たらTop賞だぜ」と俺の声がした。



 帝都警備と名のついたそのバン、その会社をハッキングしているときに明らかに逆ハッキングを受けそうになったのでアイネはハッキングを強制終了させ線を追えないように逆探知ラインをカットした。


「帝都警備が旧製紙工場で大規模な警備線を張ってる。グレン移動しよう」とアイネがいう。


「一旦FPtに戻ろう」とグレンがいったとき、アイネとグレンは囲まれていた。



 瞬間加速でアイネを抱きかかえ、跳躍移動で囲みを突破した。

 ノーマルや只のナイツでは追ってこれない速さである。


 一人だけ追随するものがあった。それはノーマルやナイツではなかった。

 一言で表現するならMMである、「軽装級」とグレンがいった。相手が相手だった回避せざるを得ない、当たれば粉みじんである。


 グレンはポケットの中の緊急シグナルコールを発信した。



 リズがグレンのコードを確認した。

「コールグレン緊急でしゅ、場所は旧製紙工場跡地内部でしゅ。近くにMMの反応を検出しましゅた」とリズが全員に語り掛けた。



 急ぎ、俺は四羽にしたカラスの半式でMMの妨害に入った。

「これでもくらえ」センサーを一部殺すことのできる高エネルギー照射体である。半式(符術)でカラスを作成する際に組み込んでおいた対電子妨害の一種である。あと数回放てるが妨害くらいにしかならない。


「そのままデータパッドを音声通話モードにしながら話し始めた、墓穴か地雷か本命かどれかを引いたぞ!」



「旧製紙工場跡地に巨大な霊体反応があるよ、本命かも」とマリがいって瞑想を解いた。解いてすぐにデータパッドにリンクをかけ旧製紙工場跡地の霊体があったあたりにバッテンを書き込んだ。



「私もすぐ行くそれまでもってなさいよ」とマリがいうと甚九郎とともに駆け出した、直ぐ息切れするが、ギルド仕様の無人タクシーで一番近い門まで急行させた。



「そのMMには所属表記が、無ければ攻撃して潰してしまってもいいぞ」と俺がいって、「ナーシャ、跳ぶよ」というとナーシャの前に手を差し出して異界魔法で瞬間転移を用意した。


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