3章-04話 地方都市ヴァルブク

 新人達のPTパーティーと別れ、早朝に地方都市ザナートを旅立った。

 新人達は辛そうにしていた、依頼が守れなくなったのだから当然であった。

 俺は新人達にこう言った「ツキは誰にでも巡ってくる、しょかえるヒマが有ったらFPtフローティングパワートレーラーを直して次の依頼に備えるんだな。俺らだって運の悪い時ってのはあるもんなんだ」と。



 早朝に出たのは、新人が居なくなったことによる戦力ダウンを懸念して、次の地方都市に早く向かうためである、次の地方都市はヴァルブクという名だった。

 ヴァルブク……聞きなれない名前だと思ったら名称変更を掛けたらしい、前の名前はもう少し長くて言いまわしにくい、ドリドッドルという名前だったように思った。


 再び、時速百二十キロメートルでの進行が始まった、今度は荒野であるが平地であるのでこの速度領域だった。

 コンボスのマリーベルにはヴァルブクまでならば、この速度域でなら遅れを取り戻せるという勝算があった。


 ただ懸念事項は他にもあった、大型の肉食飛竜種に狙われる恐れがあったのだ。

 戦力ダウンしているところに持ってきて、コイツの相手はかなりしんどいと思われた。一体程度なら我々だけで始末はできるという自信はあったが、相手は大体において複数なのだ。逃げることもままならず餌になってしまう事であろう。

 対策はなくただひたすら逃げることが、推奨されるという戦術しか思い当たらなかった。重砲ヘヴィーバレルの存在を忘れていたわけではない。当てられる腕か、当たっても効果があるのか不明だったからである。


 俺らの仕事は、対人・対機械問わず、小物を叩き潰すのが主な任務であるからであった。ダンジョンなんかで出会う宝の番人等とはワケが違うのだ。

 相手は空中を悠々と飛ぶ飛竜なのだから。


 午後も過ぎ夕闇迫る中、荒野の上を疾走している時だった。コンボスからの対空警報のアラートが全車に通達された。ただ、まだ相手はこっちを発見してないと思われるイエローアラートだった。


 丁度俺が運転している時であったため「対空警戒、厳にせよ!」と俺は言った。


 このFPtを真面まともに運転できるのは、PT内では二人だけであった。

 サブリーダーのナーシャと、リーダーの俺だけなのである。


 幸いにも、このアラートを鳴らした飛竜達とは、遭遇戦闘に発展しなかった。

 僥倖ぎょうこうと言ってもよかったのである。


 ヴァルブクには、コンボスの予定通りの時間に到着した。

「ヴァルブクからグランシスディア・ゼロまでは、直線で走れる平地であるのと障害物すらない未舗装道路である点で、飛竜から狙われやすくなる」とのことだった。


「俺らは、この先のグランシスディア・ゼロまでの護衛でいいんだな?」とコンボスに直接通信で聞き返した。

 コンボスからは「それで構わない、この輸送護衛はそこまでだからな」と返答が来た。

 どうやら、他の護衛からも似たような返信があったらしかった。

「現地に着いたら、そのまま現地解散だ! 支払いはすでに済ませてある、ギルドの支部に行って報酬をもらうといい」とコンボスからの通信が全車に入った。


 そしてヴァルブクで一夜を過ごした、仮眠していた俺たちが戻るとナーシャ達が交代で仮眠に入った。

「このミッションが終わったら少し休憩を取ろう、休息も大事だ仕事だらけってのはご勘弁だなと車内通信に乗せた」と俺が言うとゼルがそれに突っ込んできた「休みもいいが、腕だけは鈍らせないでくれよ、アーガインの旦那!」それに「ぬかせ! それくらいで腕が鈍るのは、普段の鍛錬が足りん証拠だ!」と返してやった。事実である。



 そして、グランシスディア・ゼロへの行進が始まった。

 皆時速を百二十キロメートルに設定し、リンクを組んで動くのである、ただしコンボスとサブリーダーの俺の車両はリンクに入っていない。不整地であるがゆえにPtパワートレーラーには苦しそうだが、それ以外の車両は皆FPtフローティングパワートレーラーであるため地面に足を取られたりはしていなかった。

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