第三章 護衛と言う名の仕事
3章-01話 出会いと遭遇
出立の一時間程前、
出発前の点呼というヤツである。
これなくしては、ミッションは始まらないというお約束の事例であった。
コンボスの総長マリーベルが話していた。
「今回は、皆で護衛対象を守りつつ奮戦奮闘を行ってくれ、L-FTPではグランシスディア・ゼロではなく、グランシスディア・エイトの開発領域までの長旅になるが、気を抜かず皆持ち場に噛り付いて欲しい! グランシスディア・エイトの開発領域の開港まじかの空港に我々が一番乗りで降りられる権利を得た、そこからは地上をひた走ってグランシスディア・ゼロまでいく。各機材のロッキングチェックを忘れるなよ、不整地滑走路らしいからな!」とマリーベルが言い切って、「今回のウチのキモ、サブリーダーと魔業機パイロットを紹介する! サブリーダーは皆どこかで聞き覚えがあるだろう、あのアーガイン・ムナクラ・アーセリカル殿だ!」と言われたのでやむなく台の上に登っていく。
「今回、サブリーダーの大役を仰せつかったアーガインだ! 各位、気を抜かずミッションに挑んでもらいたい」と俺は言葉少なく締めた。
「魔業機パイロット二名前に!」とマリーベルが言うと。
エルフのお嬢さんとコモンレースの年若い男性が、台の上で俺の横に二人並んだ。
エルフのお嬢さんが太刀袋の和紋を見せつつ「ニス家、アスカ・アラ・ニスと申します」と言い一礼した。
ニス家と言えば、俺の故郷
夢名蔵家も銘家ではあるが先代が名城主であっただけで後継者の噂はあまり聞かないところを見るとニス家よりも格下になったのであろうと思われた。
流石に家紋と家名まで出されてはタジタジになるのも仕方なかろう。
「アレクサー・エイモンです」とコモンレースの若い男性が辛うじて会釈をした。
「以上が重要人物の紹介だ!」とマリーベルが言い放った。
それが解散の合図でもあるかの如く、皆が皆元の持ち場についてロッキング作業を開始したのであった。
それは俺のチームでも変わらなかった。
L-FPTでの船旅は僅かに五日であった。
その間は特に皆、一様に部屋に入り黙々と見張りや武具の修繕や準備や用意を行っていただけで特に何か騒ぎは起きなかった。
以前行った
無事ランディングも終了し、イザ出発となった段で事件は発生した。
大型飛竜の襲来である。その数何と百匹以上、空前の事件ではあった、我々は出鼻をくじかれ、L-FPTの船内での待機を余儀なくされたのである。
他の一般乗客も管制塔より外に出ては危険との報があり、それに
一匹辺りの全長が約二十五メートルもの、大型の肉食飛竜の群れである。
グランシスディア・ライン正騎士団とブルーアジュール準騎士団からなる
こうなればL-FPTといっても格納庫内で震えている他は無い。
我々も同様であった。
一匹程度ならば何とか出来ようというものだが百数十匹もいるのだ、当然我々にも何もできないのであった。
嵐が過ぎ去るのを、ただただ待つしかないそんな状況だったのである。
そして三時間ほどが過ぎた辺りで、警報が解除されたのであった。
外に出ると外のコンテナ類はぐしゃぐしゃだった。
転がされたPtやFPt等の残骸が、転がり凄惨な風景を見ることにはなった。
格納庫内に居たおかげでその目に遭わずに済んだのである。
運の悪いことにMMまでもヤラレていた。
正騎士団騎では無い様だが、準騎士団騎らしかった「MMまでもがヤラレルのか……」と誰かが呟いた。
MMとは基本的に全高二十メートルサイズの魔動機兵のことである。
主に戦闘用に作られたそれは、どの兵器をもってしても負けなしと言われるほどの強さを誇る。
だからMMが
それから少し経って、チケットを係員に渡し終えるとコンボスから隊列についての説明が来た。
横最大二列、縦に九両が並ぶ隊列でMMは前後に一機づつMMの左右には車両を置かない事が決定された。
また対空監視を厳にせよとの報も得た。
先頭はコンボス、その後ろに初心者組と重砲車A、MM車両A(エイモン)、カーゴ並列、カーゴ並列、カーゴ単車、MM車両B(ニス家)、重砲車B単独、そして
またカーゴが、
そうして車列は走り出すのである。
最初は伐採された木々を見ながらひた走る、次に荒野に出た。
各車両のGPSをリンクさせほぼ同一の車両とみなし加速していくのである。
とはいっても最大速度を超えるわけにはいかない。
百二十キロメートル時の速度をピッタシ維持して走る。
対空監視組には入れ代わり立ち代わり作業を行ってもらう。
なぜ荒野なのかと言うと、道路整備に金を掛けない州が増えているかららしかった。
それもそのはず旧来のPtでは地に足をつけて走るが、FPtになると浮遊移動になるので道路そのものが要らなくなると考える州が増えたためである。
大地に在るのは行き先表示と固定GPSユニットだけである。
しかしタイヤ付きの車両が完全に廃れたわけでは無かったので、多少の整備費で済むGPSユニットや行き先表示板が無くなったわけではないのである。
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