2章-04話 到着

 一週間後、いつも通りに過ごしているうちにギルディアスの首都ギルドシティーの貨物港に辿たどり着いたわけであった。


 PTパーティーメンバーにはいつも通りだったが、旅人初心者であるグレンにはいつも通りとはいかず寝るのに散々苦労したと愚痴をこぼしていた。


「一週間も、輸送にかかるとは、大分すごい所まで来なければならなかったんだな。その節はすまなかった」とグレンが俺に言った。


「まだ身の振り方は決まって無いんだろう? なら旅人同士だ、俺は確かにギルドに所属して冒険者職をしてはいるが似たようなものさ」と俺は相槌あいづちを打った。


「ここからは風景が目まぐるしく変わるから、いちいち質問には答えてやれないぞ? 俺のFPtフローティングパワートレーラーの運転が主だからな」と答えるに留めて、コクピットルームにグレンと一緒に入り込んで行った。


 流石にPTの皆はいつも通りの位置に座って待機しており、流石慣れて来たなと思わせるだけのものは有った。


 副操縦者コパイロット席にナーシャが、通信管制席にマリとアイネが、レーダー航法席に甚九郎ジンクロウが、出力制御管理席にゼルベルオスとリズがすでに座っていた。


 グレンがこの前座っていた左前方の監視者席に座った。


 皆その位置配置には文句を言わなかったところを見ると、了承していると思えるものであった。


 そして俺もFPtの主操縦者メインパイロット席に着いた。


 皆から、「起動OK!」「周囲ぐるい問題なし!」「GCTギルドセントラルタワー管制から早く来いとの連絡来てます!」とそれぞれの連絡と報告が行われた。


 まずはM-FTPミドル-フライングパワートランスポーターの貨物室から降りなければならないわけだ、降りてすぐに検問が待っていた。


 とはいっても、皆ギルド証で確認が取れたので誰も時間は取られなかった。


 ココまではいつも通りだ、かされていること以外は。


 そこから直ぐに飛行高速路線フライハイウェイに乗せた、これならばGCTまで一直線に近いルートが取れるからだ。


 道は混んでいなかった、むしろ少々飛ばしても怒られない勢いで道が空いていた。どうやらGMギルドマスター権限での交通管制が敷かれているらしかった。


 余程、興味がおありだったのだろう。



 GCTまで普通なら三十分かかるところが二十分で行けたのだから、尋常では無かったことの表れであった。



 着いてからも特権待遇の嵐であった。


 本来ギルドの主たる権限を持つ、GMに会うのには様々な確認や認証が必要になるのである。

 これが最低でも三時間はかかるといわれるものであったが、我々は武装もそのままに十五分でフルチェックが行われた。


 そして、直ぐに謁見えっけん室に通されたのであった。


 謁見室でもその特別待遇は続き、魔導強化された最高硬度のクリアクリスタルを一枚介しての謁見となったのである。


 グレンの左右に俺とゼルベリオスが付き、右はアイネ、マリ、ナーシャの順で左は甚九郎、リズの順で広く長い机に座らされただけであった。


 椅子には剣帯が左右に巻かれている、ナイツでも武器の置き場に困らずに謁見可能なものであった。


「GMヨナ・ヴァシュマール三世閣下のおなーりー」と言う声がクリアクリスタルを通して聞こえた。


 一度全員起立し、一礼を行う。


 グレンは客人だが、俺たちは上司に会うのであるから。


 そのグレンも、俺と同じように作法にのっとり起立し一礼を行っていた。


 開口一番ヨナ様が聞いた。


「グレンよ、この世界はどうじゃ? おぬしからはどう見える?」と聞かれたのである。



「まだ一部分しか見ておりません、可能ならば彼らと共に旅がしたいのですが許可いただけますでしょうか! 様々な物事を見て、更なる知恵を付けたいのです。私は仕えた王より解き放たれた者としての役割を持っております、“この世界を知れ”と」とグレンがそのように言った。



「ギルドに所属し世界を見て回るか、それもまたよき答えじゃ。良い眼をしておる」そうおっしゃったヨナ様が不意に俺に話を振った。


「アーガイン・ムナクラ・アーセリカルよ、おぬしは人望が厚いようじゃな、今までの記録がそれを示しておる。此度の一件、まことにご苦労であった。彼、グレン・ラインの心境の変化もそれが原因と思われる。ルディアス皇国王族との謁見は無くしてもよいな? 王族との謁見を望まぬのであれば、卓上にパスカードを置くように、こちらで預かろう」とヨナ様が長い話を言った。


 次の瞬間、グレンはふところからパスカードを出すと丁寧な所作でパスカードを卓上に置いた。



 それを見た俺も同じように、パスカードを卓上に置いたのであった。



 それを見たヨナ様は追加で「ギルドランクの適性を出してもらうといい、歳が少し跳ねるがそれも一興いっきょうよ」と笑いを交えながら言われたのであった。


 謁見はこれにて終了した。


「というわけで厄介になる。アーガインと呼んでいいか?」とグレンに聞かれた。


「いいぜ、よろしくな。皆、頼もしい仲間が増えたぞ! 部屋はあのままでいいな?」と謁見室の中で軽く話し合った。

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