1章-06話 最期の騎士

 アイネが勘で、「みんな、戦闘の用意をお願い、何か居る。重たい物を着込んだ、妙な墓守がいる。騎士かもしれない。蓋を開けたら、飛び出してきそうだ。オイラは蓋を開けたら、中に侵入して様子を探って来たい。だから皆でそいつの足止めをお願いしたい」と言ったのだ。



 こういう時のアイネの勘は優れておりほぼ間違いないゴーレムに後衛PTに混じるように命じると、魔導剣抜刀を行い魔導太刀を抜いた。


 甚九郎じんくろうにゴーレムのバックアップに回ってもらう。



 後衛戦力はなるべく一塊ひとかたまりになってもらい被弾を減らす作戦で行く。


 後衛戦力のバックアップはゼルに任せた。


 リズが珍しく精霊を呼んだイフリートである。


 リズの勘もまたえていた。


 相手が不死騎士なら炎が有効ではあるのだ。




 問題はそいつが、意思を持っているかどうかだった。


 意思の有る無いで、騎士の強さと格が決まるのだ。




 今回は異界魔法も投入するべく呪文待機もする。


 使うのは相手の動きを阻害するタイプの魔法である。


 コレに掛かれば、回避力を大きくそこなわすことができるのだ。


「開けるよ!」とアイネが言う。


「いつでも!」と全員が準備を終えていた。


 スイッチで開くタイプらしい。


 スイッチが押し込まれ、墳墓が横にずれていく。


 その瞬間、中から赤い瞳の不死騎士が飛び出してきた。


 かなり速いが、俺が対応できない速さでは無かった。



 ソイツを空中で異界魔法で絡め捕る。


 するとそいつは、そのまま俺目掛けてソニックブレードを打ってきた。


 確かに騎士の技だ、「引き受けた!」と言ってソニックブレード自体をすべて斬り払った。



 流石に全ての技を封じ込まれた騎士がうめくように、「貴様何者! 我が王の封印を解かせはしない」と言った。


「冒険者だ! 解かせてもらう! アーガイン・ムナクラ・アーセリカル押してまいる」と答えを返した。



「貴様! 武将か冒険者にまで身をやつしたか」と返答が帰る。



今時いまどき流行らないぜ! 職ではかるのは」と大仰おおぎょうに返してやった。




「今は二九〇四〇年だ、少しは話が分かるのだったら未来を見な!」もう大戦おおいくさは終わっているのさ。




「なんと! 三千五百年も経ったというのか! 信じられん!」と戸惑っている様子だったので、もう一押しだと考えた。



 マリもいつでも聖句を唱えられる準備をしているのが感覚で分かる。


 リズはイフリートに待機を命じた。


 ナーシャはいつでも回避の補助に回れるように、インタラプト術式を構築済みのようだった。



「今なら考えようによっては、新たな王に使えることもできよう! いかがする!! 全ては、お前の望み次第だ!!」と、不死者とは言え意思の有るものを斬るのはあまり気が進まないのでこう言ったわけだ。



「今は王政ではないが、グランシスディアは比較的度量の大きい国だ。紹介ならしてやらんことも無いぜ」とは言ったが、最も研究対象にされそうな気はするが……。



「それか、ギルディアスに来るか? あ、三千五百年前ってことはルディアス皇国時代か、今はギルディアスという国名に変わっては居るが、当時の皇の眷属がまだ残っていると聞く。俺からの推薦ということもあれば多少は融通が効くかもしれないが……どうするかは、お前次第だ。俺と斬りあってここで朽ち果てるもよし、未来を見据えるもよし! 俺に負ける気は無い! すでにお前は詰んだようなものだ。どうするか返答やいかに?」と長い口述を行った。



「くっ! 確かに手詰まりだ! 私の負けを認めよう。ルディアス皇国に連なる血族がいるなら私は仕えてみたい、紹介を頼めるか? 私はグランシスディア王国、近衛騎士団長グレン・ラインと申す」と空中で器用に魔法に捕まえられながら納刀した。



「我が王の封印は解かれるのも仕方がなさそうだな、ギルディアスの皇にも面会を頼みたい」とグレンが言った。


「武装の解除は行ってもらう、まあギルドマスター相手では俺も勝てないからなんとも言えないが。一応規則なんでな」と言うにとどめた。



「墳墓に入らしてもらってもよいか? 流石に今はまだ気持ちの整理が落ち着かんなら後でもいいが、他の冒険者連中がもぐって来ないとも限らん。先に入ったものに優先権があるのが決まりだから、争いごとは起きないが。あんたは流石にそのままって訳にもいかんだろう。俺の移動用の乗り物に戻るまではフードを着用しててくれ。赤い眼ってだけで襲い掛かってくる、冒険者も居るんでな」と俺は言った。



「王の最後を見届けたい、浄化されるならそれも仕方なしだ。頼むまずは動けるようにしてくれまいか? こちらにはもう戦闘の意思は無い」とグレンが言う。



「後衛は魔法の解放を頼む。俺も魔法を解く」グレンの目から赤い光は消えていた。



 ナーシャ以外が魔法を開放し、ゼルも銃を降ろした。リズもイフリートを炎界に返したようだった。



「お嬢さんには、まだ疑われているようだな。仕方ないか、ラスボス役だからな」とグレンが言った。



「マリ、浄化を最高位で頼む! 甚九郎! 運ぶものがある、そこそこありそうだ」と言うとグレンと一緒に王の墳墓に降りていく。



 行く途中で、「眼が赤くならないのであればフードは必要は無さそうだが、個人ID票パーソナルカードは持ってないよな? 昔のでも良いが、ギルドに入る際には本来はギルド証ギルドカードか個人ID票が要るんだ」とグレンに聞いた。


「昔のものでもあれば、再作成の元手もとでにはるからな」と俺が言うと後生大事にしまっておいたらしい一枚の古いカードを出してきた。



「意外と持っておくものだな、こんなことになるとは思いもしなかったぜ」とグレンは言った。



「まさか説得ができるとは思って無かったぜ、意思疎通そつうができるならしやと思って声をかけてみたんだが」と俺は言いながら差し出された個人ID票を見た。



 昔のものも今のものもほとんど変わらない、国が発行するタイプの個人ID票だった。


 流石に古いものではあるので、魔化強度が少し下がって来ているかと思わせるものだったが、一通り確認し終わると返しながら言った。


「寿命を、不老に変えておかないとだめだな。それ以外は問題ない。後、属性は不死に変更されるから物品を触るときは注意が必要になるぜ」と俺は言ったのであった。

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