1章-07話 王の墳墓と解き放たれし騎士

 アイネが先行して入っていることをグレンに伝えて、彼女はその手の専門家であることを言っておいた。



 俺とグレンの後を、マリと甚九郎が付いてくる。それ以外のメンバーは三十層でゴーレムの護衛である。



「見掛けでよいが、何歳なんさいなんだ?」と会話を巧みに交え相手の素性を聞いておく。


「私が不死になったのは二十五の時だ、差し詰め三千五百二十五歳っていうところか」という話がグレンから聞けた。


「俺はまだ二十九歳だから随分ずいぶんと年下になるんだな。だが、武将としての経験は長いし、魔導や魔法も使える。ランクテストにさえ合格すれば、ランクは上げられるからな。ランクテストはギルドの支部のある街ならどこでも受けられるようになっているから、一度やってみるといい。大体の腕が、分かるありがたいものだ。実技と筆記に分かれているから、両方合格しないとランクそのものは上がらない仕組みになっている。一応こんなんでも、PTパーティーリーダーをやっている、俺の一番高いクラスは武将で三十三ランクだ」と俺は言っておいた。



「流石、大戦おおいくさの時であるならば、さぞ名前が上がっていただろうに」と惜しむようなそんな感じのグレンの返答があった。



 墳墓の奥でアイネが調査しているところに出くわした。


 墳墓の周りはあらかた調べ終えたようで、墓をどうやって開けるのかで悩んでいた様だった。



「アイネ! こっちは近衛騎士団長のグレンだ! ゆえ合ってギルディアスに行くことになった」とアイネに声をかけた。



「グレンどうやったら蓋は開くんだ?」と俺は聞いた。



「この墓は、俺以外では空かない様に魔法が組まれているのさ。つまり俺がカギなんだ」とグレンは言うと右手を前に伸ばした。


 すると、ゴリゴリと重たい音を響かせ石棺が開いて行った。



「王の浄化をお願いしたい」と後ろにいるマリにグレンが言った。



 そして一歩前に出ると「王よ、我が王よ、我が解き放たれることを許してくださいますか?」と片膝をつき「我が忠義の印、この剣をおそばに」


 そう言って剣を王の右足のかたわらに置いた。


 そしてグレンがこうべれた。



 マリは、グレンの後ろで高位聖句を唱え始めた。


 聖句自体は優しい物では無く、難しいほうのものであった。


 俺には内容がわからなかったが。


 王のけわしかった顔が幾分いくぶんゆるんだように思えるところまで行くと、王が浄化され消えて行った。


 後に残されたのは、王の好きだった花束はなたばと装身具しか残らなかった。


 剣も一緒に浄化されたようであった。



 王の身に付けていた装身具類は、一旦グレン預かりとなった。


 周囲の財宝は、俺と甚九郎とマリとアイネで、丁度持ち運べる量だった。


 そして、墳墓から出ると素もぐり組が来ていて、若干険悪な雰囲気になっていた。




「冒険者ギルドの盟約を忘れたってんなら、今ここで再教育してやるぜ」と俺は威圧気味に言った。



 相手PTのリーダー格が出て来た。



「ムナクラの旦那のPTと知っていれば、そんな滅相めっそうな事は致しません。我が剣にかけて誓います」と一瞬で降参の意を示した。



 我々よりも高位のPTが居ない訳ではないが、この辺りでは少ないのが実情である。


 情報屋が二度情報を売った、ということであったらしい。


 そして大体の経緯だけ説明して、グレンの事は説明に乗せずスルーさせておいた。


 特に俺の知名度は高いということで、片付きそうだったからである。




 そのままそいつらは、まだ探すと言い残った。


 なので一直線いっちょくせんFPtフローティングパワートレーラーまで登りきった、中途で壊滅したPTが持っていたギルド証だけは回収して置いた。



 そして、こいつが俺たちの足だとグレンに紹介したのであった。



 MMマジックマシンでも乗っているのか? と聞かれたが、こいつは中身を改造してあって移動用兼宿舎だと言った。


 まあ乗ればわかるって、と言ってグレンを乗せた。


 ゴーレムも後ろから乗せるとゴーレムからブツを色々取り外し、ゴーレムを元の印石に戻した。


 そして懐にしまい込んだ。


 後部はカーゴスペースになっているので、それだけ積んでもまだ余裕はあった。


 長尺モノなどは専用の折畳コンテナ等に入れ積み上げ、アイネがデータパッドの地図データにリンクさせた魔導バーコードを貼っていった。


 後部がカーゴスペースの八分の一くらいを荷物で埋まるのを見届けると、グレンを客室に案内した。


 専用の客室で士官部屋くらいの広さはあるのである。


 少々狭くてすまないが、これでも大きい方なんだ。と言って、自身の部屋も見せる事にした。


 部屋の広さには納得してくれたようだった。


「で、水は大丈夫か、今なら女性陣が入って無いんで風呂が開いている、皇族やギルドマスターに会うなら身なりは整えておかないとな。服のほうは洗濯すると崩壊しそうだな、俺と体格が似ているから俺ので良ければ貸そう、そういう意味での服には余裕がある」と言ってグレンを風呂に押し込んだ。



「使い方は一万年前からコレと言って変りはしないから、風呂の設備には問題は無いだろう」と俺は言った。



「何から何まで、すまん。この恩は必ず、どこかで返させてもらう」とグレンは言った。


 とりあえず、通常のジャケットとズボンスタイル一式を用意してみることにした。私物だが冒険者用に補強されているものだ。


 体躯たいくは見た目通りだったらしく、ほとんど問題なく着こなせていた。


 まあ後はギルディアスまでの道のりだが食堂を作戦会議室にしながら、いつも通りのルート説明に入った。



 まずは、グランシスディア・ゼロまで戻ってM-FTPミドル-フライングパワートランスポーターの貨物便でギルディアスに入って、直接GCTギルドセントラルタワーに入る算段を付ける。



「その後みなは、一旦収集物の換金に動いてくれ。俺とグレンはギルドマスターと皇族に、会いに行ってくる」


「予約は受け付けてもらえそうなんだがね、ヨナ様はノリノリだったよ、ルディアス皇族の方のほうは、あまり受けが良くは無かったな。もし無理ってことになったら俺らと旅烏たびがらすでもするかい? MMに乗れるんであればナイツギルドに行ってみるのもお勧めだが?」と俺は言った。

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