1章-04話 死神様

「ゼル、マリ頼むぞ……」

 そう言いながら延長虚無刃バキューティブレードの準備を着々と進めていた。


抗神法アンチゴッドロウ!!」と力強い法力が炸裂する。


 マリの術だ、これを逃さずにいつ討つのか。



 流石さすが死神リーパー様も神である以上この術の対象に乗るのであった。



“ビクン!”と、瞬間一秒くらい固まってくれる。



 これを逃す手は無い!


延長虚無刃エクステンションバキューティブレード!!!」と俺が叫び仕掛けた。


 再び



 再び耳を引き裂くような甲高い金属の最期の悲鳴、そしてバキッという乾いているが腹に響く音が広間に響き渡った。



 ほぼ同時にとは言ってもコンマ二秒ほど遅れるが、


神崩壊弾ゴッドコラープスバレット!」と延長虚無刃が決まって下半身を喪失そうしつした死神の額に――



 大穴があくような“ボゴッ!!”っとした、さらにいい音がして、


「グギャァァァァァァーッ」と死の叫びクライオブデスを叫びながら虚空に消えていく死神を見たのであった。



 ナーシャのかけた死神狩グリムリーパーハントの影響下にある我々には死の叫びは届かない。


 死神の落し物は、損壊した武器や装具と膨大な戦闘データということになる。


 コレだから、冒険者はやめられんと思った訳だ。


 武器は神器と思われるし、装身具もかなりの価値がありそうだった。



「アイネ、周囲にエネミーは居るか?」と戦闘後のオマケも忘れない。


 これを忘れて、財宝に組み付いて滅んだ連中も多いのだ。


「マリ、残しものを浄化してくれ、そのままでは我々が触れない」と、これも重要なモノである。


 これをおろそかにして呪われた連中も多い。


「大将、周囲に敵影無し、勘も良好!」と言うアイネの声が聞こえた。



「ゼル、うまくやったな!」とゼルをねぎらう。


「お、おうよ」とゼルはまだどこかに死神が、いるのではないかという感覚に捕らわれたようであった。


 それで、まだしっくり来ないようであった。


「マリ、どうだ? 触っても大丈夫か?」


「とりあえず全部浄化済みだよ。換金したらいくらくらいになるかねぇ」と、すでに金の計算に入っていた。


「武器は素材が命だからな、真面まともな状態の神器しんきならかなりの値が付いたんだろうが、折れてるからな。武器はこっちで、面倒めんどうを見よう」と言うと背嚢ザックくくりつけた。


 長大な鎌も刃に触れて傷つかない様にしっかりと背面に固定、刃部分は幾重いくえにも布を巻き付けて危険デンジャーの専用の紙テープを巻いておいた。


 これで少しくらいぶつかっても切れたり刺さったりすることは無い。


「そういえば、あんたの武器は大丈夫なのかい、神の奇跡で治せるかもしれないよ」とマリが言う。


 そう言うので見せる事にした。


「確かに、まだこの時間なら大丈夫だねぇ。間に合うよ、幾度いくどPTパーティーの危機を救ってくれた大切な相棒あいぼうじゃないか。治そう癒しの御業で」とマリが言う。


再起リセット”とささやき詠唱した。


「かなり綺麗な状態に戻ったよ、これからも頼んだよ。あんたがいないと、このPTは持ちゃあしないんだからね」とマリは言って手渡してくれた。


「疲れているところをすまないな、その下を確認したらベースまで戻ろうか?」とマリに言う、すると。


「ベースは新しく作ればいいさ、結構値打ちモノがゴロゴロしてそうだから。もう少し、もぐりたい気分なのさ」と言う答えがマリから返ってきた。



 珍しくやる気になっているのでそれは置いておくとして、「このフロアは他には収穫はありそうか?」とPTの魔導無線に乗せた。


「ここは広間と、少しの小部屋しかなさそうだから、探索は直ぐに終わると思うよ?」とアイネから返答があった。


「皆探索のお時間だ、休憩はこれくらいにしよう。さっきのPTに荒らされてないなら、何か見つかるかもしれないな」と俺は言った。



……



「これだけ見つかったか、さっきのPTは何を目的にもぐったんだろうな?」と俺は言った。


「意外とすでに操られていたのかもしれないぜ、アーガインのダンナ」とゼルが復活した。


 見つかったのは大ぶりの宝石十二個とぎょくと呼ばれる磨き上げられた宝石の一種である、それが八個。


 あとは装身具、一見豪勢ごうせいではないが貴賓きひんのある形やたたずまいを持ったモノで、かなりの上位の貴族でも眠っているのではないかと思わせるものばかりだった。


「上物だな、コレは価値がある。さらにダイブする必要が出て来たな」と俺は言った。


「おいどんもその意見には賛成ですたい、そんうえダイブせんといいものも見つかりもはん」と甚九郎じんくろうも言う。



「しかし、この層フロア地下二十五層目にして死神様か、この先さらにゾッとしないものが守っているんだろうな」と俺は言った。



「それは、守っているものがより高貴であることの証ではないかねえ」とマリも言った。


「意外と終わりが近いのかもしれませんね」とナーシャも言った。


「大将、敵の感知はまかせとけってんだ」とアイネが言う。


「すまないなみんな、俺らしくもないことで悩んでたよ。元々二十層って話だったから、少しビビってたのさ」と、ちゃんとしたネタを運ぶ情報屋を選ばないとなと思うのであった。


「アーガイン殿は気が弱いでしゅな」とリズが突っ込んだ。


 そして皆で笑う。


 その間にも、アイネはちゃんと気を張って、かんませているのであった。

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