第8話 雨音
「ん〜! フラペチーノ美味しかった〜!」
「お前最近、飲み過ぎじゃね? お金大丈夫なのかよ」
学校帰りからの、スタバからの帰宅途中。
フラペチーノを、堪能した琴葉は分かりやすいぐらいご機嫌だった。
「うん、二回に一回はカズが奢ってくれるから問題なーし♪」
「あぁ、なるほどな、だから最近財布が妙に軽い訳か…よし絶交、じゃあな」
と、手を振り俺は早足に歩き出した。
一ヶ月で1万のお小遣いのうち約4000円があいつの腹の中に消えて行くなんて、本当にたまったもんじゃない。
それに関してはいくら幼馴染みでも許せなかった。
「ごめん、嘘だって、3回に一回だからね?」
「人に金払わしといて、よくそんなこと言えるよな」
「えへへ〜」
「…ダメだ…メンタル強すぎて敵わないわ」
はぁ、とため息をつく。
すると、そのタイミングでポツリと肌に冷たい感覚が走った。
「ん?」
「あ…雨降ってきた…」
そして続け様に遠くの方からザーッと嫌な音がこちらに近づいてくる。
…やな予感。
…。
「やばい! 走れ!」
「え、なに!? ちょっとカズ!」
そして、全力疾走をした俺たちだったが、屋根付きのバス停に入るまでにはもう、お互いにびしょびしょだった。
「マジか…最悪」
チャックを開けて、リュックの中身を確かめる。
「良かった…教科書とかは無事だ」
「ねぇ…カズ」
「いや、待てよ…あ、やべぇ借りてた小説…終わった…」
「ねぇってば」
「ジャージとタオルは無事か…やっぱり防水のリュック買っとくんだったな」
「ねぇカズってば!」
「うるせーなこの雨女、元はと言えばお前がスタバに…」
顔を上げた先の光景に思わずセリフが止まる。
白いワイシャツが水分を含んで、体に密着し、所々肌が透けていた。
そして何よりも、水色の下着が透けていた。
心臓が跳ねて、顔の熱が一気に上昇する。
思わず目を逸らした。
「私のことも…ちょっとは心配してよ…」
しっとりと濡れた髪の毛から、ポタリと滴が落ちた。
「…あ、あぁ、すまん…そうだよな…」
そう呟き、リュックを漁る。
タオルとジャージは生きてたんだっけな。
その二つを取り出し琴葉に渡した。
「とりあえず羽織っとけ」
すると琴葉は驚いたような表情をして、ジャージから俺に顔を向けた。
「え、でも…いいの?」
「今更気にすんなって、俺たち幼馴染みだろ…次の体育までに返してくれればいいからさ」
そこまで言い切って、なんだか恥ずかしくなってきた俺は、視線を逸らすと後頭部をガリガリと掻いた。
少し遅れて、ふふっと優しい笑い声。
「…なんだよ」
ううん、と首を横に振りこちらに顔を向ける。
「なんでもないよ、ありがとね…カズ」
にこりと笑う。
その笑顔が柚葉と似ていたせいか、それとも単純にそう思ったのか…。
胸がふわりと暖かくなるのを感じた。
いつも読んでくださってありがとうございます!
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それでは、今日も貴方様にとって、良い一日になりますように。
あげもち
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