第5話「ギルセシアとイノセシア、ピュリキュア誕生の秘密」
わたしの名前は
◇
氷華は大学の研究室棟から外へ出た。大学構内の敷地は広く、舗装された道路の脇にはよく手入れされた街路樹が立ち並んでいる。研究室棟のすぐ近くには大学図書館があり、その目前には大きな広場がある。おそらくここが主な戦場となるだろう。
空には暗雲が立ち込めている。アクヤークが現れるときはいつもこうだ。
「ウガァァーイ!」
――ズガァーン
通路上に停められた不届きな自転車を蹴飛ばして、アクヤークが野外へと躍り出てきた。それを確認した氷華は、ピュリキュアへの変身を開始する。
「ピピア、行くわよ!」
『ピア!』
「ピュリキュア! アイシングパレード!」
すると、氷華の身体は華やかな吹雪で包まれた。
――ヒュオォォー!
吹雪が晴れたとき、そこには透き通ったブルーの衣装に身を纏い、四つ又に分かれたブルーのポニーテールを揺らす伝説のファイター、ピュリキュアの姿があった。
「キンキンに
――ババーン!
シャーベットは右手を虚空に突き出し、高らかに叫ぶ。
「出て来て、わたしのマイソード!」
――ヒュオォォー……パッ!
右手付近に生じた吹雪の中から、シャーベットは氷の剣を取り出した。
「先手必勝!」
シャーベットはすばやく右足を前に踏み込み、フェンシングのようなスタイルで右手の剣をアクヤークの顔面に突き出した。
――ザシューッ
シャーベットの突き出したアイスソードは、暗黒オーラを纏う怪人アクヤークの顔面に鋭く入り込み、そこから暗黒のオーラが激しく噴き出た。アクヤークはさっそく第二段階の姿に移行し、顔の霧が晴れて内部の女性が姿を現す。
「ウゥ……。こ、ここは……」
アクヤーク化したこの人間は、先ほどの鬼気迫る女子大生である。
『今日も順調ピアね。さすがはシャーベットピア!』
「ありがとう。このまま彼女の罪悪感を癒して、ピューリファイを決めたら完了ね。さあ、まずは動きを止めようかしら」
アクヤークの第二段階に対してアイスソードで戦うとき、シャーベットは主に二つの戦法を用いる。一つは、下半身を中心に攻撃することで足元から氷結させていき、身動きを取れなくする戦法。もう一つは、アクヤークの心臓部を貫き通し、その巨体と地面とをソードで固定してしまう戦法だ。どちらにせよ動きは止める。そして浄化魔法をぶち当てる。これで勝利だ。
さて、今日は心臓部を貫く方で行こうかしら、などとシャーベットが考えていたとき、謎の大きな穴が上空に開いた。
――ズヴァアーーーン
何とも禍々しい雰囲気の怪しげな大穴がぱっくりと口を開いている。こういうのはたいてい、何かが吸い込まれるか、何かが出てくるかのどちらかである。
「何あれ!? 異世界への扉?」
『もしかピア……。あの大穴は、ギルセシアの本部、
――ゴゴゴゴゴゴ
「さすがはピピア。よくわかっておるな」
『こ、この声は!』
――ゴゴゴゴゴゴ
激しい地鳴りとともに、恐るべき巨体が天空の大穴から降臨して来る――かに思われたが、何も出て来ない。
「吾輩はここから、そちらを見ておるぞ」
『じゃあなんでわざわざワープホールを開いたピア!』
「ピュリキュアに、最後の試練を与えようと思ったのである」
――ズゴゴゴゴ
ワープホールの奥から、禍々しい黒紫色の手が降りてきた。その手から、暗黒のエネルギーが放たれる。
「ギルセキング! ギルティー・チャージ!」
――ズドドバァァー!
「ウガァァアァァアァァーイ!」
ギルセキングの手から放たれた暗黒エナジーがアクヤークに直撃した。すると、みるみるアクヤークが巨大化していく。
――ヌヌヌヌヌ!
「ウゴンガァァーイ! テアンラァァーイ!」
「わわわわ!」
アクヤークは巨大化した。全長四十メートルほどある。これはデカい。
「ウガガガガーイ!」
「やつの名は、メガヤーク。そう呼ぶことにしているぞ」
「メガヤークね。わかったわ」
『シャーベット、メガヤークを倒すピア!』
「うん、行くわよ!」
シャーベットは図書館の屋上へと跳躍した。メガヤークとちょうど同じような目線の高さに立つことで、会話をスムーズにする目的だ。物理的に同じ目線の高さに立つことは、相手に寄り添うコミュニケーションスタイルの王道である。
「メガヤーク、あなたの罪悪感はわかっているわ! 恵まれている自分と、そうでない他者との対比。それと恵まれているかどうかが、生まれつきの偶然によって左右されてしまうことの不条理さ。自分の努力なんかとは無関係に、自分ばかりが大きな利益を享受できていて、何も悪いことをしていない人が不条理にも苦しい生活を強いられている。これらを考慮したとき、あなたの精神は後ろめたさに支配された! これがあなたの罪悪感よ! これに対する回答は、ひとまずいくつか考えてみたわ。聞きなさい!」
『シャーベット、ますますテンポよくなる一方ピア。ここまで効率化を進めたピュリキュアはかつていなかったピア』
「まさかこれほどであるとはな。しかし、罪悪感をさらに増幅させられたメガヤークが、そう簡単にやられるだろうかな?」
『お手並み拝見ピアね』
「いいわ、見てなさい!」
シャーベットはメガヤークの方へ跳躍し、その巨体の左肩へとアイスソードを突き立てた。
――カチコチ
広い左肩部分がみるみる氷結していき、ちょうどいい足場となる。シャーベットはそこへ降り立ち、かの巨体へ向けて語りかける。
「あのね、結論から言うわ。あなたは自身の幸せを心ゆくまで追求していい。まずもって、あらゆる人間が自分自身の幸せを追求していいの。もちろん、あなた以外の人間の幸せがろくに実現されていないのを知ったとき、心が痛むのは自然なことだわ。でも、だからといってあなた自身の幸せが拒否されないといけなくなるわけじゃないわ。あなた以外の人間の幸せが尊重されるべきなのと同じように、あなたの幸せもまた尊重されるべきなのよ」
『相変わらずいいこと言うピアね~』
「心に染み入る言葉であるなあ」
――ズオン
ギルセキングは、上空に開くワープホールから顔を覗かせた。暗黒の身体をもち、頭部には真っ赤な目玉が二つ付いており、この人間界を眺めている。ギルセシアの王の外見は、とにかく大きく、とにかく禍々しい。
シャーベットは話を続ける。
「でも、あなたの幸せとあなた以外の人間の幸せとが衝突することもあるわよね。資源が限られているときなんかには、こういうことがよく起きるわ。たとえば、エビフライを一本食べたいという人があなたを含めて五人いたとして、そこにエビフライが五本以上ある場合、とくに問題はないわ。でも、エビフライが三個しかない場合は、問題が起きてしまうのよ。エビフライを食べたいというあなたの願いを実現することが、誰か他の人の願いを叶わなくさせるんだから」
シャーベットはさらに続ける。
「資源が限られているときに、この問題をどうやって解決すればいいのか。そのやり方は――」
『やり方は?』
シャーベットは、グッと溜めてから言葉を紡いだ。
「――ごめんなさい。正直わたしにはわからないわ。これはわたしにとって解決できない問題よ」
『シャーベットでもお手上げピアー!』
「その上で、あえて言うわ。あなたはあなたの幸せを追求していい! これが、今のわたしに出せる精一杯の答えよ」
ギルセキングはワープホールの向こうから口を挟んでくる。
「それでは何も解決していないのである」
「ウゴンガァァアァァーイ!」
――ズモンバァァー!
メガヤークの罪悪エナジー噴出は、さらに勢いを強めている。
「シャーベット、ちょうどいい機会である。ギルセシアのことを教えるのだ」
「ただいま取り込み中よ!」
ギルセキングは無視して続ける。
「ギルセシアには、資源が無限にあるのである。また、ギルセシアの民、つまりギルセストたちは、屈強な肉体と不屈の精神をもっており、何ら苦しむことがない。完成された世界の住人なのである」
「え、そうなの? もっとひどいところかと思ってたわ」
シャーベットは彼の話に食いついた。
「違うのである。確かに、ギルセシアの土地は荒れ果て、ギルセストたちの肉体はいつも傷ついておる。それゆえ、ひどい環境なのだと思われることは多い。しかし、人民たちは常に満ち足りており、輝かしい人生を送っておるのだぞ」
「ピピア、これって本当なの?」
『ピア……。嘘は言っていないピア。ギルセストたちは、みんな勝ち組ピア』
「勝ち組、ってどういうことかしら。ギルセキング、さっき資源が無限だって言ってたけど、そんなことってありえるの?」
「ありえるのである。もちろん、ギルセシアという狭い範囲の中で得られる資源には限りがある。しかし、他の土地へ手を伸ばせば、いくらでも手に入る。吾輩は、イノセシアや人間界、他にもいくつもの異世界へとパイプをもっており、そこから常に資源を入手しているのである」
「それは、異世界から資源を無理やり奪い取ってる、ってこと?」
「それもある。話の通じる相手ならば、お互いに交渉し、合意のうえで貿易を行うこともある。しかし、相手の知能レベルが低く、また武力も弱いとわかった場合には、ときとして一方的に奪うこともある」
「それってどうなの? 何だかかわいそうな気もするけど」
「そういう考え方は理解できないのである。吾輩たちは、そもそも罪悪感を生じることができないのだぞ。ギルセシアには、公正さを追い求めるだけの視点を持ち合わせた者はいないのである。進化の過程で、そうした視点をもつ者が淘汰されたようなのである」
『一度ギルセシアを観測したことがあるピアけど、ピピアからすれば恐ろしいところだったピア。人のものであっても平気で奪うし、相手のことが気に入らなければすぐに暴力を振るうピア』
「その通りである。しかし、奪われても資源は無限に溢れておるし、暴力されても、極めて屈強であるがゆえに何ら苦痛は感じないのである。ギルセシアでは、一人一人がやりたい放題で、完全に自由なのである。そして、みなの人生が満たされておる。他の土地は知らないのである。とにかくギルセシアの民たちは、みな幸福なのである。やりたいことはすべてできるし、欲しいものはすべて手に入る。分かりやすいほどの幸福である」
『ほとんどのギルセストは、相手の気持ちを考えたり、公正な視点に立って物事を考えたりする能力をもたないピア。自分のやりたいことだけをやるピア。ピアけど、資源が無限にあるし、そもそもあらゆる苦痛を感じることがないピアから、それでうまく行ってしまうんだピア。恐ろしい進化を遂げた種なんだピア』
シャーベットはふと思い付いたことを、ワープホールの向こうにいるギルセキングへと問いかける。
「そう言えば、ギルセシアって、人間から罪悪エナジーを吸い取ってるわよね。あれって何が目的なの?」
『説明されても、中々難しいかもしれないピア』
「だが気になるのならば、答えてあげるのである。罪悪エナジーとは、人間の意識が生み出す強力な心的エネルギーなのである。ギルセストたちは、罪悪エナジーを吸収するのが大好きなのである」
「どうして?」
「ギルセストたちは、進化の過程で罪悪感を生じることができなくなったのである。しかしどういう因果か、ギルセストたちは他人が生じた罪悪感を取り込むと、すごく気持ちよくなる身体に進化していたのである。吾輩はギルセシアの王として、イノセシアや人間界といった異世界へと幹部を派遣し、そこで罪悪エナジー収集を行っているのである。収集した罪悪エナジーを無垢な国民たちへと供給し、彼らの幸福を増進しておる」
「ギルセキングって、本当に国民想いの国王なのね」
『ギルセストというのは、苦痛は感じないけど、快楽だけは感じるように進化を遂げた種らしいんだピア』
「何よそれ、生物として最強じゃないの」
――ズゴゴゴゴ
「ウゥゥ、ウゴンガァァーイ!」
「わわわわっ」
しばらく放置されていたメガヤークが、痺れを切らして動き始めた。
「テアンラァァーイ!」
メガヤークはその肩にシャーベットを乗せたまま、数十メートルほどジャンプした。
――ドッシーン
メガヤークが着地し、図書館前広場のアスファルトには大きな亀裂が入る。
シャーベットは、左肩に突き刺したアイスソードに必死でしがみつき、何とか振り落とされずにいた。
「メガヤーク! わたし、さっきのギルセキングの話を聞いて、少しわかったわ。たぶん、この星で人間としてよりよく生きていくためには、罪悪感が必要な気がする。あなたは、自分のことよりも他人のことを考えて苦しむことのできる人間なのよ。たとえ恵まれていることが後ろめたく感じるとしても、そんな風に後ろめたさを気にしているだけマシだわ。あなたは悪い人なんかじゃない! だからもう苦しまなくていいの!」
「ウゴンガァァーイ!」
『シャーベット、メガヤークは聞いていないピア!』
「いいえ、メガヤークの耳には、わたしの声が届いているはずなのよ。でも、まだ心には響いていないみたい。いったい何がいけないのかしら……」
シャーベットは頭を悩ませている。
と、そのとき、どこからか耳慣れた声が聞こえてきた。
――シンシッシッシ! あなたともあろうお方が、まだそんなところで立ち止まっておられるのですか?
『ピアッ! この声は!』
「もしかして、シンシーア!?」
メガヤークの立ち塞がる大学構内へと入ってくる影が一つあった。車椅子に乗り、包帯でほぼ全身がグルグル巻きにされているその男は、名を〈シンシーア〉という。その名前は、ジェントルマンを意味する「紳士」と、「誠実な」という意味の「sincere(シンシアー)」とが掛け合わされた、最高のオシャレネームだ。
「あなた、わたしに倒されたはずじゃなかったの?」
シンシーアは電動車椅子を自分で動かして、メガヤークのいる方へ近づいて来ている。
「ええ、一度倒されましたよ。しかし、運よく炎を扱う仲間がいたものですから、氷を溶かしてもらうことで何とか絶命の危機は免れました。しかしながら、見ての通り、この傷です。もうギルセシアのために幹部として働くことはできません。わたくしは、この人間界で暮らすことにしました」
「そうだったのね」
『ピア……。それはよかったピア』
シンシーアは、地上四十メートルほどの高さにいるシャーベットへ向けて、とても大きな声でしゃべりかける。
「ピュアシャーベット! わたくしはあなたに話さなければならないことがあるのです! それは、罪悪感にまつわる話!」
「何々? 教えて?」
「そのためには、まずわたくしのことについて知っていただきましょう。わたくしは、そもそもの生まれはイノセシアなのです。しかし、生まれ故郷の地を追われ、ギルセシアへと移住し、長きにわたりギルセシア幹部としてギルセキングのもとで務め上げてきました。しかし、先日のあなたとの最後の戦いで、あの恐るべき必殺技〈
ワープホールの向こうから、ギルセキングが淡々と述べる。
「シンシーアは優秀かつ忠実な部下だったのである。惜しい人を手放すこととはなったが、今はゆっくり療養してもらいたいのである」
――ゴゴゴゴゴ
ギルセキングがしゃべると、いつも地鳴りが起こる。
「ピュアシャーベット。わたくしは、イノセシアでは異端児だったのです。あの国では、自分のことを優先することは嫌われます。とにかく他者のため、全体の利益のために行動することが要求されるのです。それこそが善であり、私利私欲を少しでも追求することは徹底的に悪として排除されました。イノセシアでは生まれつきそういった考えをもつ者が多かったのです。これもまた自然淘汰による収束の結果だと言われております。しかしわたくしには、どこか遺伝子に異常でもあったのでしょう。あろうことか、自らの理想とする生き方にこだわってしまったのです。利己的で、自分のやりたいことを優先してしまうわたくしのような悪質な者の生きる場所は、イノセシアにはありませんでした」
「へえ、イノセシアってそんなところなのね」
「そしてわたくしは、当時イノセシアとの国交が盛んでしたギルセシアに心惹かれ、移住を決意したのです。ギルセシアの民たちは、相手の利益や全体の利益になどまるで関心がありません。自らの欲求を満たすことにしか関心がなく、力の強い者が勝ち、力の弱い者が負ける。しかし、誰も自身の力の強さを奢ったり、自身の能力の低さを卑下したりしません。そもそも他人と比べるということに興味をもたないからです。やりたいようにやる。それのみでした。彼らの生き様には、輝かしいものを感じたのです。そうしてわたくしはギルセシアに移住し、ギルセキング様に認められ、幹部として働くようになりました。力強く、生き生きと自分の生を輝かせるギルセシアの民たちのために、自分の武力と知力を活かして働くことのできるその立場に、わたくしは満足していました」
シンシーアは、空を見上げて話している。
「とにかく利他的に、とにかく自己犠牲的に振る舞うことをよしとするイノセシアの風土には、自分独自の生を輝かせたいという気概をもつわたくしのような者を受け入れるだけの土壌はなかったということなのです。シンシッシッシ……」
シンシーアは、何とも
『ピア……。イノセシアが平和に栄えていた時代であっても、中にはそんな苦しみを抱えていた者がいたんだピアね』
「ねえピピア。イノセシアってどんなところなの? ピピアはどうして人間界にやって来たのか教えてよ。わたし、ピュリキュアに変身して、アクヤークを倒して、また変身してアクヤークを倒して、っていうこの生活をずっと続けてきたけど、そろそろこれがどういう意味をもつことなのか、教えてくれたっていいじゃない?」
『ピア~、それはまだ早いピア』
――ゴゴゴゴゴ
「ピピアよ。そろそろいいのではないかな」
『ピア!? 確かにシャーベットは六年もピュリキュアを続けてきた、歴代でも最長のピュリキュアピア。ピアけど、シャーベットほど優秀なピュリキュアもそういないピア。あと、ピピアはシャーベットと離れたくないピア!』
「え、どういうこと? わたしって、もうピピアとは一緒にいられなくなるの?」
『そうピア。ピュリキュアの秘密について知るときというのは、ピュリキュアを引退するときなんだピア』
「なぜなら、秘密を知ってもなおピュリキュアを続けようと考える者は、そうおらんからである」
「いったいどんな秘密なのよ……。ここまで来たら、話してもらうわよ」
『……わかったピア。ピアけど、別に大したことじゃないピア。平和だったイノセシアが急に崩壊し始めて、それを復興するために、人間界でピュリキュアにがんばってもらってるんだピア!』
「イノセシア崩壊は悲劇であった。まずはそれから話すのがよいのである」
『ピア、だったらこの本を読んでもらった方が早いピア。シャーベット、そっちに行くピア!』
――ビュオン
シャーベットのすぐ近くに小さなワープホールが開いた。するとそこから、淡いミント色の羽毛をもつ、丸々と太ったかわいげある鳥、ピピアが降ってきた。
「ピア!」
「あら、ピピア」
「シャーベットには、これからイノセシアの歴史とピュリキュア誕生の秘密について知ってもらうことになるピア。とにかくこれを読むピア」
ピピアは分厚い書物を取りだした。表紙には、『愛と平和の世界 ~イノセシア~ 真・改訂版』との文字がある。
「『愛と平和の世界 ~イノセシア~』なら、前半部を読んだことがあるけど、今度のやつは『真・改訂版』なのね」
「そうピア。隠していた秘密を新たに公開しつつ、イノセシアの歴史を簡潔にまとめてみたピア」
シャーベットは『真・改訂版』のページをそっと開く。そこには、利他主義と博愛に満ちた平和で豊かな国、イノセシアが没落していく様が描かれていた――。
◇◇◇◇◇
『愛と平和の世界 ~イノセシア~ 真・改訂版』
作:pipi@
イノセシアの民(イノセスト)は、公正さを大切にする国民性を強くもっていた。自分個人の立場を優先することはまったくせず、相手の立場や全体の利益を考えて行動することの多い、善良かつ公正な民たちだった。
たとえば、バスのような公共交通機関の座席には絶対に自ら進んでは座らない。人の席を奪うことになるからだ。立っている乗客たちで段々と通路が込み合い、とうとう立つスペースがなくなってくると、『すみません、そちらの方、こちらの席に座っていただけませんか』と頼む人が現れ、そうして初めて一人目が座り始める。あるいはまた、スーパーマーケットなどで飲食物が売られているとき、それを自分のために買うということは決してしない。自分の分を買ってしまうと、在庫が一つ減って他の人が買えなくなってしまう、ということにつながる恐れがあるからだ。イノセストたちは、自分の分の食べ物を買うことは決してなかったが、自分の家族の分だけなら仕方なく買った。それゆえ、自分の分以外の家族の分だけを、家族どうしでそれぞれ買い与え合うことで、何とか食事の営みを続けていた。
イノセストたちは、とにかく自分の利益を避け、他者や全体の利益だけを考慮したのである。そういう思考習慣をもつ者たちだけが、進化の過程で生き残ってきたようなのである。
しかし、このような生き方に問題があることは明らかだった。そこで、様々な啓発的スローガンが流布された。〈もっと自分の利益を追求しよう〉、〈あなたの利益はみんなの利益〉、〈利己的になっても、誰も怒らないよ!〉。しかし、彼らはそもそも自分の利益を求める視点が備わっていなかったし、仮にもし利己的な振る舞いをできたとしても、すぐさま激しい罪悪感に苛まれた。決して自分の立場を優先するような思考はできないように、身体が進化していたのである。
一人一人が自分のことを大切にしてくれないと、国民全体の幸福は実現されない。しかし、個人個人が自分の利益を追求すると、その個人が大きな精神的苦痛を生じてしまう。自己利益を追い求める視点が退化したイノセストという種にとって、これは長年悩まされてきたジレンマだった。
それを救ったのが、異世界から急にやって来た、ギルセシアの民(ギルセスト)たちだった。ギルセストたちは、自分自身で罪悪エナジーを生産することができない。しかし、他人の罪悪エナジーを吸い取ることで最高にハイな気持ちになれると気付いたギルセストたちは、罪悪感のエネルギーを探し求めていた。イノセシアという罪悪感の宝庫を発見したギルセストたちは、イノセシアとの国交を開始した。
イノセストたちは努力を重ね、利己的精神を発揮できるようになっていた。しかし、それが原因で罪悪感の苦しみは絶えず生じた。そこで、罪悪感による苦しみが大きくなると国営の医療機関を受診し、そこで罪悪エナジーを抜き取ってもらった。抜き取られた罪悪エナジーはギルセシアへと輸出され、ギルセストたちのあいだで人気を博した。罪悪感に苦しむイノセストと罪悪感を求めるギルセストとは、その利害がうまく一致していたのである。両国にとって双方の利益が実現されており、よい共生関係が長らく持続していた。
◇
そしてある日、あの恐ろしい情報が出回った。なんと、イノセストが呼吸により吐き出しているある種の気体が、イノセシアの環境に悪影響を及ぼしているという情報が出回ったのである。信頼できる国営の研究機関から公表されたこの情報は瞬く間にイノセシア全土に知れ渡った。
すると間もなく、国民の多くが次々と呼吸をやめていった。自分個人の利益などどうでもよく、他者や全体の利益のみを追求する視点しかもたない彼らは、環境のために自分を犠牲にした。息をするだけで世界全体に迷惑をかけてしまう。イノセストたちにとって、それは耐え難いことだった。
中には自分の命を優先し、呼吸を続ける者もいた。しかし、その者は激しい罪悪感に苦しめられた。自分の命が惜しいというだけの理由で、平気で呼吸を続ける自分がひどく醜い存在だと感じられたのである。利他的に死亡するか、利己的に苦しむかのいずれかしかなかった。究極的なジレンマが国民全体を支配していた。
当時のイノセシアの王〈イノセキング〉もまた、呼吸をやめることで自ら命を引き取った者の一人である。その娘〈イノセクイーン〉は、幸いにも死を免れていた。そして、王の死の結果、当時まだ幼い少女だったイノセクイーンが、この国の王座に座ることとなった。
◇
呼気に含まれる気体による環境への悪影響が公表され、自主的窒息死が一大ムーブメントとなって数か月経った頃、すでにイノセシアの総国民数は当初の三十パーセントほどまで減少しており、その勢いは留まるところを知らなかった。国家存続の危機を乗り越えるため、イノセシア王家はイノセクイーンを代表とする対策委員会を設置した。国営の研究チームとともに、この窮状を打破する解決策を模索していた。
研究チームが注目したのは、王家の特殊能力である。イノセシア王家の家系には、代々精神を浄化する能力が備わっていた。ギルセシアとの国交が始まるまでは、王家自ら浄化呪文を唱え、イノセストたちの罪悪感による苦しみを浄化していたのである。
国民たちの自死を止めることと、生存した国民の罪悪感情を抑制すること、これらが喫緊の課題だった。研究チームは、王家の浄化呪文の開発に急いだ。技術的な手を加えることで、王家の呪文の効果をいじることができるのである。
本当は、利己的精神を植え付けうるような呪文を唱えたかった。しかし、王家の力では、浄化呪文しか唱えられなかった。何かを消し去ることしかできなかったのである。
そこで研究チームは、他人のことや全体のことを考えられるような理性的能力を浄化することに決めた。他人の視点に立って考える能力を消し去れば、他人の苦しみを想像することで自分が苦しむこともなくなる。自分の都合から離れて全体の利益を考慮するような能力を消し去れば、自己利益と全体の利益とが衝突することによって生まれる心理的葛藤は、そもそも生じえないことになる。
環境破壊を嫌がる心理は、全体の利益を考慮する視点から生まれる。自分のことだけを考える者が、環境破壊を嫌がることはそうない。
人に悪いことをしてしまったかな、と考えて罪悪感を生じる心理は、相手の心情を自分なりに想像することから生まれる。自分のことだけしか考えられないようになり、他人の心情を想像することができないようになれば、人に迷惑をかけただろうか、などということを思考することもできなくなる。よって、罪悪感も生じえない。
自死と罪悪感情を抑制するために、他者や全体のことを考慮する理性的能力を浄化するのは、もっとも効果的なやり方に思えた。
◇
研究チームはとうとう究極の浄化呪文を完成させた。
クイーンが側近の一人に声をかける。
「計画は順調ですか?」
「はい、イノセクイーン様。準備は最終段階をクリアしています。あとはクイーンがこの衣装に着替えて呪文を詠唱すれば、国民総浄化の開始です」
研究チームが用意していたのは、少女が着るようなフリルの付いたかわいらしい服装だった。それはさながら変身ヒロインのコスチュームである。これは、研究チームのリーダーであり、クイーンの側近でもある、ある男の個人的な趣味だった。しかし、この男はそれをチームのメンバーにもクイーンにも隠していた。リーダーであり側近でもあるという立場を利用して、ささやかに個人的な欲望を達成しようとしていたのである。
「浄化呪文を唱えるには、この衣装を着なければなりません。そういう風に開発を進めました」
「こ、このような衣装にですか。……わかりました。この国を救うためです。これくらいの恥辱、耐え抜きましょう」
クイーンは儀礼用のキュートな装束を身に纏い、イノセシア全土に広がる呪文を唱えた。
「イノセシア! ホール・イリミネイティニング・ピューリファイ!」
――ギュパアーアーアーアーアーアー
こうして、イノセシアから罪悪感に苦しむ者はいなくなったのである。
◇◇◇
「わたし、ここまでは資料室にある本で読んだのよね。呪文を唱えるときの衣装が、研究者の趣味というのは、知らなかったけど」
「そうピアね。そこは改訂版で新たに付け足したピア」
「真実を暴露したってことね。さすがは『真・改訂版』だわ」
「ここから、どうして人間界でピュリキュアが活躍するようになるのか、そのきっかけが描かれるピア」
「わあ、楽しみね」
◇◇◇
『真・改訂版』
つづき
国民総浄化呪文により、イノセストたちは理性的能力を失った。そのおかげで、環境のために呼吸をやめるものはいなくなったし、だからといって生き残ることに罪悪感を覚えるものもいなくなった。浄化呪文の目論見は、確かに成功したのである。
しかし、国民総浄化呪文はイノセストたちの理性を根本的に浄化しすぎていた。人間界の人間やギルセストたちと違って、イノセストには自分の利益を追求するための思考能力がそもそも備わっていない。そして、他人の利益や全体の利益を追求する能力は、国民総ピューリファイによって浄化されてしまった。こうして、いまやイノセストは理性的能力をほぼ完全に失ったのである。
イノセストたちは何も考えなくなった。動物的本能だけに従って、目の前の草を
本来イノセストは、人間とそう変わらない二足歩行型の種であるが、このときからイノセストたちの〈
ただでさえ人口減少の危機に瀕していたイノセシアでは、イノセストたちがさらに減少する一方だった。自死の次は、動物化である。浄化呪文は国民全体に向けて唱えられたため、〈
しかし、希望はまだ少しだけ残っていた。イノセクイーンとその仲間の研究者たちである。イノセクイーン本人には、あの浄化呪文が及ばないようになっていた。また、研究者たちの中には、浄化呪文を受けることに不安を感じて、事前に呪文効果を減少させるよう対策している者たちが数名いた。そのような者の一人が、研究チームのリーダーであり、クイーンの側近でもあるようなあの男である。彼はあの手この手で呪文の効果を受けないように対策していた。しかしそれでも、全体呪文は強力だった。その影響は、着実に見え始めていた。
「イノセクイーン様。私の身体も、もうあまり長くはもたないみたいです……ピ」
彼は右腕の袖をまくって見せた。すると、彼の手首から上腕にかけての範囲に、鳥のようなふかふかの羽毛がびっしりと生えそろっているのが見えた。進行が遅れているとはいえ、彼の身にもまた確かに〈
「まあ、何ということでしょう! 動物化しないと思っていたあなたまでもが、こんなことになるだなんて」
「すでに国民の大半は、かわいらしいアニマルたちと化しましたッピ。このままでは文明も衰退するばかり。種の存続さえ危うい事態でありますピア」
〈
「未熟な私の判断ミスです。前国王に何と顔向けすればよいのでしょう」
「クイーン、お気になさらないことが重要です。実は本日、頼りになる協力者を呼んできておりますッピ。ギルセシアの王、ギルセキングでございますピア」
――ビュオン
突如、王宮の天井にワープホールが開いた。するとそこから、ギルセシアの王、ギルセキングが姿を現した。
「……吾輩の登場であるぞ」
――ズゴゴゴ
ギルセキングの身体は毎年大きくなっているが、このころには体長十五メートルほどだった。
王宮に降り立ったギルセキングは、腕を組みながら堂々とした態度で語り始める。
「イノセシアの国民たちというのは、罪悪エナジーを安定供給してくれる素晴らしい隣人だった。にもかかわらず、昨今のイノセストたちはまったく罪悪感を生じないではないか。これはギルセシアにとっても一大事である。何とか対策せねばなるまい」
イノセクイーンは情けなさそうに答えた。
「ええ、その通りですね。しかし、何から手を付けていいものやら」
「今回の事態は、ギルセシアにとってもイノセシアにととっても歴史上最大の危機だと言えよう。この危機を乗り越えるために、吾輩はイノセシアに助力することを厭わん。吾輩にいい案があるぞ」
ギルセキングはにやりと笑った。
「それはいったいどのような案なのでしょうか?」
「吾輩はしばしば異世界間旅行をしておる。つい近頃、興味深い土地を見つけたのである。吾輩はそこを人間界と呼ぶことにした。作戦はこうである。よく聞くのだぞ……」
――こうして、イノセシア復興プロジェクトは開始した。
◇
イノセシア復興プロジェクトの内容はシンプルである。人間界の人間を、イノセシアにたくさん移住させるのだ。ギルセキングからの提案により、その過程でいろいろなステップを踏むことになった。
まず、人間界の人間をアクヤークにする。アクヤークは、人間の罪悪感を増幅させることで生まれる怪人である。人間のアクヤーク化は、ギルセシアの技術により可能となる。アクヤークの発する強力な罪悪感は、ギルセシアが回収し、自国のために利用する。そして、イノセクイーンは、伝説のファイター〈ピュリキュア〉としてアクヤークとバトルする。ピュリキュアはアクヤークとの戦いを経て、最終的にアクヤークを浄化する。浄化されたアクヤークは人間の姿に戻る。しかし、その記憶や性格などはすべて消去され、まっさらな白紙の状態になる。何しろ、イノセシア王家の呪文は〈浄化〉が一番得意なのである。罪悪感も記憶も浄化された白紙状態の人間は、ピュリキュアたちの秘密基地へと保管される。ある程度の人数が集まれば、一斉にイノセシアへと移住させる予定である。
そして、イノセシアに移住した新しい国民たちは、動物たちのたくさんいる豊かな土地で、平和に暮らす予定である。
人間界の人間たちは、イノセストたちと違って、自己利益を追求する視点をもっている。それゆえ、環境破壊を防ぐために進んで自死するような悲劇は繰り返さないだろうと期待されている。
アクヤークを倒し、浄化することができるのか。また、イノセシアへ移住させるために十分な人数を集めることができるのか。これらはすべて、ピュリキュアの手にかかっている。がんばれ、ピュリキュア。
おわり
◇◇◇◇◇
大人しく静まり返ったメガヤークの肩の上で、シャーベットは本を閉じた。
「どうだったピア?」
「いろいろ衝撃的だったわね。ピュリキュアって、イノセシアを復興させるために、人間たちを回収するのが仕事だったということよね」
「そうピア。でもそれだけじゃないピア」
「暴れ回るアクヤークを静めることで、人間界を守るというのも重要な仕事なのである。人間をアクヤークにすることで、ギルセシアは多大なる罪悪エナジーの回収を実現できるようになった。しかし、その暴走を止めることができるのは、イノセシア王家の力をもつ〈ピュリキュア〉なのである。ピュリキュアが戦ってくれないと、アクヤークは人間界に甚大な被害を及ぼす恐れがあるのである。だから、ピュリキュアには毎日のようにアクヤークを倒してもらわねばならないのだぞ」
「何だか、人間界のことを心配してるような口ぶりね。そんな気があるとは思えないんだけど」
「さすがはシャーベット。鋭いのである。もちろん吾輩は、ギルセシアのことしか考えておらん。人間界の人間はよいぞ。自己利益を追求する視点と、他者や全体の利益を追求する視点の両方をもち合わせておる。自分の利益と他者や全体の利益とが両立しない場合、二つの視点がぶつかり合い、葛藤が生まれる。もし自己利益の方を優先させて、他者や全体の利益を損なった場合、しばしば罪悪感を生じるのである。これがギルセシアにとってはおいしい。自分のことを考える視点しかもたないギルセストや、自分以外のことを考える視点しかもたないイノセストには為すことのできない技なのである。よくぞそのような進化を遂げてくれたな」
「別にあなたたちのために進化したわけじゃないわ」
『ピアーッ! 冷たく鋭い言葉の槍! これがシャーベットの味ピア~ッ。久しぶりに味わったピア』
急にテンション上がっている鳥。
「ねえピピア、わたしって結局イノセストなの? 初代ピュリキュアは、イノセクイーンが変身した〈ピュアライス〉でしょう。わたしって、イノセクイーンの子孫なの?」
シャーベットは、自分が何者なのか知りたがっていた。通常の人間は、ピュリキュアに変身したりできないし、十歳より前の記憶を完全に失っていたりなどしない。これほど特異な存在であるということは、自分は人間界の人間ではないのかもしれない。そう疑い始めていたのである。
「真実は、そうではないピア。シャーベットは人間界の人間ピア。十歳より前までは、ふつうの家庭で人間の両親のもとで暮らしていたピア。それをピピアたちが連れ去って、記憶をピューリファイし、ピュリキュアとしての生活を始めてもらったピア」
「そうだったの!? じゃあ、今でもわたしの両親は生きてるの?」
「たぶんどこかで生きているはずピア。ピアけど、氷華のことは一切覚えていないはずピア。氷華に関する記憶はすべてピューリファイした上で、氷華を連れ去って来たピア」
「何よそれ~。だから、誰もわたしのことを探しに来てくれなかったのね」
「そうピア」
「じゃあ、ピュアライス以降の十三人のピュリキュアは、みんなこの世界の人間ってこと?」
「そうピア。ピュアライスがピュリキュアとして戦うことができなくなったピアから、仕方なく人間界の少女に戦ってもらうことにしたピア」
「どうしてピュアライスは戦えなくなったの? それに、やろうと思えば誰でもピュリキュアになれるものなの?」
「ピュアライスがピュリキュアをやめたのは、本人が嫌がったからピア。そもそも、変身ヒロインの衣装で戦うことにしたのは、ピピアの趣味だったピア。ピピアはずっとそのことを隠していたピアけど、ある日ピュアライス本人に気づかれてしまったピア。この世界には、テレビでアニメーション作品が放映されてるピア。ピュアライスはそれを見てしまったピア。それで、今まで自分が何をさせられてきたのか、すべて悟ったみたいピア」
「ピピアの趣味で変身ヒロインごっこをさせられていた、と知ったわけね」
「それでピュアライスは激怒したピア。ピアけど、そのような反応には、すでに対策済みだったんだピア。ピピアは浄化魔法を技術化することに成功していて、ピュアライスにやられる前に、こちらから彼女の記憶をピューリファイしたピア。さらに、こうなることを見越して、人間界の人間をピュリキュアにする技術も開発していたピア。すぐに少女を用意してきて、ピュリキュアとして活躍してもらったピア。楽しかったピア~」
「女の子じゃないとダメなの?」
「ダメピア。それはピピアのこだわりピア。イノセシア王家にはもちろん男性もいたピア。イノセシア王家なら、性別にかかわらず浄化呪文は使えたピア。ピアけど、浄化呪文を技術化するときに、変身ヒロインの格好をしないと呪文を唱えられないように設計したピア。戦闘能力が向上し、ピューリファイを唱えられるようになるのは、若い女性がピュリキュアに変身したときだけピア! これはルールピア!」
「ギルセストも驚きの自分勝手さなのである」
「イノセシアにも、このような人間がいたのですね。驚きました。シンシッシッシ!」
「ウゴンガァーイ?」
ギルセキング、シンシーア、メガヤークの三者は、揃いも揃ってドン引きしている。
「――ハッ! ていうか、メガヤークのことすっかり忘れていたわ! わたしは彼女を浄化していあげないといけない!」
物語はついにクライマックスへと突入する。
第八話おわり
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