ドラキャンセント
ルンルゥノ・クィンターゴイ
「だれか、お願い。私の声をきいて……誰でもいい。”
頭の中に声が響く。気がつくと視界には木々が広がっていた。
ここはどこだ、そもそもどこで何をしていたっけ。
前後の記憶が朧げだ。
「フン、木っ端の雌
目の前で二匹の
一匹は燃えるような赤い鱗をしていた。赤い
一方のもう一匹は雪の様に真っ白な鱗をしていた。白い
二匹の
それにおかしいことがもう一つある。なんでこの光景を見ても喜びの感情が湧いてこないのだろう。――いや、そもそも私とは誰だ。何も思い出せない。
轟く様な怒号が森中に響きわたった。
「聞け!
赤い
「”
瞬間、空間に歪みの様なものが生じ、
周りを見渡すと、一帯すべての生物が赤い
「フン、
白い
赤い
「あくまでも抵抗を続ける気か。気丈な雌めが、ならば仕方あるまい」
赤い
「我のこの手で貴様の、その腹を掻っ捌き中を確認するとしよう」
二匹の
赤い
「”
唯一白い
「流石に煩わしくなってきたな。”
白い
赤い
「やはりな。いつからだ?」
赤い
「我の
赤い
「まだ抵抗を続けるか。――カハッ、カハハハハッ!」
突如、赤い
「ああ。
赤い
「”…ャ…ィ”」
「ん? この期に及んで
白い
「ん? せっかくなのだ、もう一度発してみろ。何、邪魔などせぬわ、だから、ほれ……」
この状況を楽しんでいるのか、赤い
「そうだよなぁ! 発するわけがないよなぁ! だって無駄だものなぁ!
何がそんなにおかしいのだろうか、赤い
「――ハハッ! ……特別だ。ここまで我を楽しませた貴様に、褒美として今回ばかりは本心で話してやろうではないか」
赤い
「貴様と、その腹の中のものを殺すことを惜しいと思わんわけではない。貴様ほど気高く美しい
赤い
「愛い、本当に愛い奴よ。そんな目を我に向けるのは
白い
「なに、特別に他の雌
赤い
「今度こそ最後だ。我の言葉が冥途の土産にならぬよう、よく考えて発言しろ」
白い
「エスペラ」
白い
「この子の名は、エスペラート=ヴェーラ=フラモドラコ」
白い
「フラモドラコ……それにヴェーラだと――!」
一瞬、空気が震えた気がした。
赤い
「――……まあいい、どうせすぐに殺される命だ。我の前でヴェーラ=フラモドラコという名を与えた大罪は……、特別にその命を持って償わせてやろう! ブランカネーゴ!!」
言葉と共に赤い
「”…ィ…ィ”、”ェ…”」
白い
「フン、最後に発した言葉が
赤い
赤い
「クソ!! 自我すら持たぬ卵風情が。煩わしい、煩わしいぞ! ”
白い
肉の隙間から淡いピンク色の卵が姿を現した。
赤い
「どういうことだ?!!」
赤い
「なぜだ……」
ギリリ、と歯と歯が擦れ、軋むような音がした。
「――まさか……、成功したと言うのか。いや、しかし、あり得ん、あり得てたまるものか。そこらに溢れるただの木端の雌
赤い
焦りでも感じたのだろうか、赤い
「”
「クソオオオォオオ!! 許さん、許さんぞ! 許してたまるものか!!」
周辺の空気が熱を帯び始め、パチパチと何かが弾ける音がした。赤い
「ならば、この森ごと燃やし尽くしてくれるわ!」
赤い
周辺に潜んでいたであろう生物全てがこの場から離れていく。
瞬間、赤い
「“
赤い
無抵抗のまま炎に焼かれ、様々な種類の悲鳴が重なり合い森中に響き渡る。
「良い、良いぞ。だがまだ足りぬ、もっとだ。さぁ、皆よ、さらに悲鳴を上げ、音を奏でろ――。」
赤い
「“
悲鳴の量が増し、より一層音の圧力が増した。中には口から血を吹き出しながらも、悲鳴を上げ続ける生物もいた。吐き出された血が炎に焼かれ一瞬で蒸発していく。悲鳴に混ざり様々なものが焼かれる音がした。
赤い
その姿はまるで指揮者の様だった。
「あぁ、悲鳴が我を突き刺す。そこまでして我を殺したいか、だが無駄だ無駄。ああ、良い、心地
徐々に、焼ける音と共に悲鳴が小さくなっていく。気がつく頃には木々や生物は消え失せ、辺りには焼け野原のみが広がっていた。
「ついつい興が乗ってしまったわ。カハハ! 皆よ、素晴らしい演奏であったぞ。カハハハハ!」
誰に向けてのものなのか、死体すら残らぬ焼け野原に向かって赤い
「見事に何も無い。塵すら残っておらぬわ、カハハハハハ――! っんむ!?」
赤い
「気配が消えておらぬ。まだ潜んでいるのか? 名はなんと言ったか、エス…………クソ、思い出せん!」
赤い
「仕方あるまい。”
「やはり、名を呼ばねばならぬか」
突如として地に足が付くような感覚がした。足元に目をやるともやもやした影が足にまとわりついているように見えた。
じゃまだ。取り払うことはできるだろうか。
影に向かって手を伸ばそうとするが、自分の体であるにもかかわらず思うように動かせない。どうすればいいのだろう。
横着していると
「ん? なんだ! 卵ではない、か……。何者だ貴様!!」
赤い
「ブランカネーゴなのか、死んだはずでは……。まさか、
ちがう。私は白い
自分が誰かはわからなかったが、とにかく、必死に首を横に振り否定する。
「卵はどこにある? ”
身振りが通じていないのだろうか。
赤い
「喋れないのか? カハ! なんと発したか知らぬが、
今度は首を縦に振る。正しく通じているかは定かではないが。
「我を笑っているのか? 喋ることすら出来ぬ、今の貴様が?」
――!? まずい。今度こそ殺される――。
赤い
「舐めるのも大概にしろ……――。我こそが、
あまりの恐怖に、見えてはいないが体が小刻みどころではないほど震えているのがありありと感じられた。
「存在すら危うい今の貴様が、我を笑うか。調子に乗るなよ!!」
怒りを抑え切れないのか、意味は違えど赤い
赤い
「”
大陸全体に声が響く。
雲が割れ、空間に亀裂が入る。
この日、その場ありとあらゆるものが
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