明かされる時
「はぁ……はぁ……」
圭吾は息を潜めた。資材の物陰に隠れた圭吾は耳を澄ませる。
魔王城に侵入した圭吾を歓迎したのは、侵入者用捕縛魔術とそれを感知し警報を鳴らす魔術だった。間一髪で圭吾はルディルスの眼を起動させ、捕縛魔術を無効化し逃げる事に成功はしたが、侵入はばれ、一気に城内の警戒レベルは上がってしまったのであった。
「捕縛魔術が無効化されている。侵入者はそれなりの腕を持つ魔術師だな……」
オーブを纏った魔術師らしき大男が魔法陣が現れた地面に手で触りながら言った。そして周囲の兵士達に指示を出す。
「侵入者は魔術師だろう。全兵士はここを周辺をくまなく探せ。必ずいるはずだ」
その指示を聞いた圭吾は透過魔石を起動させ、透明化した後資材の物陰から飛び出した。圭吾が降り立ったのは城の広いテラスであり、資材や兵器らしき物が散乱している。当然、透明化した圭吾に気づく者はおらず、圭吾は決して人にぶつからぬ様にしてテラスを後にする。が、圭吾がテラスを出る時、圭吾は背後から視線を感じた。それはあの魔術師の男の視線であった。
(まさか、俺が見えている……? さすがは城に仕える魔術師って事か?)
圭吾は不安になるが、時間は少ない。さっさとテラスを後にして黒く暗い通路に入った。黒いレンガ造りの通路は古城の趣を感じさせる物であったが今の圭吾にそんなものを感じている余裕はない。手元の小さな城内の見取り図を見て、ロイットの研究室へと速足で向かう。
途中、兵士やメイドとすれ違いながらも決して気取らせる事なく城内を進んでいき、侵入から10分程度でロイの私室兼研究室の前に辿り着いた。
圭吾は周囲を見渡し、警戒しながら誰も来ない事を確認して、ドアを開けてロイットの部屋へと入った。
(さすが帝国の中心。やはり一筋縄ではいかなかったか……)
目的地に着いた事に圭吾は安堵しながらも危機感は拭えなかった。城内の警戒レベルは最高。決して油断はできない状況である。
(さっさと調べておいたましよう)
部屋の明かりを付けると比較的大きな部屋が圭吾の前に現れた。入ってすぐに横に机と椅子があり、さらに部屋の奥には大きな机とその先の壁は大きな本棚となっていた。窓もあるがしばらく開けていない様である。圭吾の予想に反してロイットの部屋は思いのほか散らかってはいなかった。
圭吾はまず入ってすぐ横の机を漁ったが、引出しはすべて魔術にて頑なにロックされ開けるの難しかった。時間さえあれば魔術を解析し解除する事はできるだろうが時間はない。また見たところ机の上の置物からして私物ばかりだろうと圭吾は判断し、圭吾は机を諦めた。
次の圭吾が向かったのは部屋中央の大きな机だ。机の上の物は医療関係の器具が散らかっており、さらに東京の地図までそこにはあった。また魔術関連の書物も多数積み置かれていた。圭吾はここに手かがりがあると判断し漁るが途中思いがけない本を見つけ出した。るるぶの東京観光のガイドブックだ。
「今、ガイドブックから侵略予定を立てたのかよって思ったでしょ?」
その背後から突然の声に圭吾は驚嘆しながらもルディルスの眼を瞬時に起動させ、素早く振り向いて刀を手に取りその声の主に剣先を向けた。向けたと同時に圭吾の鼓動は最大になりつつ、さらに驚く。
「女の……子だと……?」
圭吾の目は大きく見開いていた。
「すごいびっくりしてるねお兄ちゃん」
そこにいたのは小さな女の子だった。深紫色のゴスロリの衣服を身にまとい、ウェーブがかった紫の髪を肩あたりで切り揃えたその幼女はニッコリと笑い可愛らしい笑顔を圭吾に見せる。
「そんなに驚いた?」
(全く気付かなかった……なんだこのガキは!? 明らかに年相応の……)
「魔力じゃないってね。そう、私、よく言われるんだ」
圭吾はここで確信した。心を読まれている事を。そしてこの幼女は自分より圧倒的に強いと言う事を理解してしまった。
ライットに心を読まれて以来、圭吾はファイヤーウォールの様に防壁魔術を自身にかけて読心魔術の対策を施していたが幼女は一瞬で破壊したのである。その手ごたえはわずかながらあった。
「お兄ちゃんびっくりしながらも冷静に状況を判断しているね。偉い偉い」
「本当に……子供なのか?」
圭吾は恐る恐る聞いた。それほどこの幼女の存在感、感じられる魔力は圧倒的だった。子供に対して子供なのかという問いは滑稽だが、それほどこの幼女は別格。怪物の類の魔力であった。
「うん。今年で9歳になるよ。でさ、お兄ちゃん……」
幼女はそう言いながら右手人差し指で刀の剣先を触り、圭吾が感じられぬ速度で魔術を発動した。
「なっ!?」
刀は元の疑似刀に戻り、圭吾の手からすべり落ちたのだった。
「その物騒な物しまってよ。怖いからお兄ちゃん」
圭吾は冷や汗をかく。そして大きな恐怖を感じ、自分が怖気ついている事に圭吾は情けないと思うのだった。
(俺は今、恐ろしいと感じている。小さな女の子にびびっている。情けないが…………この子はただ者じゃない!)
圭吾のその内心を読んだのか幼女はまたニッコリと笑った。だが今度のその笑みはどこかしたり顔だ。
「初めて会って私の恐ろしさがすぐに理解できるって優秀だねお兄ちゃん。相手の魔力感知もできない低級魔術師は私を馬鹿にするんだよ。でもね。そういう相手をボコボコのギッタンギッタンにするの最近気持ちいなって思うようになったんだ。これっておかしいかと思う?」
幼女はそう言って首を傾げる。明らかに本当は分かっている様な顔であった。圭吾を茶化しているのだ。
「俺を……俺をどうするつもりだ?」
圭吾は終わったと確信していた。こんな化け物がいるなら最初から侵入など考えもしない。自分は今から処刑されると確信し死を覚悟した。
「処刑なんてしないよ。私はただあなたに会ってみたいと思っただけ。ロイの研究を調べに来たんでしょ? なら、好きにすればいいわ」
その幼女の意外な答えに圭吾は驚きつつも少し安堵するのだった。だが、俺をここで始末しないとはどういうつもりなのかという疑問も生まれた。
「その疑問には答えるつもりないから。さっさと調べてここを出て行った方がいいかもよ。いつ見回りの兵士が来るかわからないし」
自分の考えを完全に読まれている事に圭吾は畏怖しつつも憤りを感じる。いくら魔術の力量に圧倒的差があるとはいえ、相手は子供。いとも簡単に心の内を述べられるのはいい気分はしない。
「ねぇねぇお兄ちゃん。怒るのは勝手だけどさ、身をもって私との差を分からせた方がいいかな?」
そう言って幼女は実に不気味な笑みを圭吾に見せた。その笑みを見た圭吾は再び怖気づいた。
「そうそうお利巧さん。お兄ちゃんは偉いな」
幼女はそう言って今度は可愛らしい笑顔を見せた。子供に子供扱いされる。圭吾にはこれまで受けたどの侮辱よりもトップクラスの侮辱であると感じたのであった。
「そー言えば私の名前教えてなかったね。私の名前は‘ベネラ’。帝の隠し子にして、史上最強の魔女、最高最強の魔術師、帝国の怪物とか言われちゃう‘世界で一番魔力を持った魔術の天才児’なんだ! なんだか自分で言うと恥ずかしいよね」
彼女の告げた異名は全て彼女を指す物である。圭吾はその異名は言い過ぎではないと思った。何故なら彼女から感じられる魔力は桁違い。もはや同じ人間だと思えない。魔族でもそうそう存在しないレベルであるだろうと感じ、測定できるのかも疑わしいと思ってしまう程にだった。
「俺の考えを易々と読める時点で魔術の腕も相当な様だな……」
現代魔術にて相手の深層心理までを完全に読める魔術の開発は今現在では不可能とされている事を圭吾は知っていた。しかし、今、目の前にいるベネラは易々と実行している。喜怒哀楽も把握されたのであればほぼ完全な読心魔術である事はほぼ間違いない。
「うん。まあ、この完全なる読心術を作るのは思いのほか時間はかからなかったよ。ライットが読心魔術を一応ある程度完成させた時苦労したって言ってたけど私には大した苦労ではなかったな」
ベネラの口から出たライットという名に圭吾は思い出す。東京にて自分を勧誘し、この前の魔戦川にてもかすかながら奴の魔力を圭吾は感知したあの男が脳裏に浮かんだ。
「お兄ちゃんに勧誘してたのあの人。確か、人事担当だっけなあ」
何も言っていないのに心を読まれ言われるのは本当にいいものではないと圭吾は思った。
「まあ、お話はこれぐらいにしといて! さっさと調べないと本当来ちゃうよ」
会話などほぼ成立していないだろうと圭吾は突っ込みたかったが、圭吾は言われるがまま、当初の目的通りロイットの部屋を再び調べ始めた。しかし、いくら漁っても呪詛魔術に関する物は全くなかった。あるのは魔物関連や医療魔術関連、そして食人臓体の書類しかなかった。
「くそっ!」
圭吾は持っていた本を床に投げつけた。
「竜化の呪いをかけたのはロイットではなかったのか! 俺はまた無駄足を踏んだだけか」
「まあまあそうでもないよ。私と出会えたんだから無駄ではないでしょ」
そう言って圭吾の気持ちを逆なでするような笑みをベネラは見せた。それに対し圭吾は睨みつけた。
「そこまでだ侵入者。その目を姫様に向けるのではない!」
その声に圭吾は出入り口のドアを見た。開いたドアの目の前に立っていたのは侵入時に見かけた大男のローブを纏った魔術師だった。
「遅かったねオルン。ついついお兄ちゃんと話しちゃったよ」
「戯れるのもほどほどにしてください姫様。侵入者を見つけたならすぐにご報告して頂けないと」
「いいじゃん別に! 減るもんなんてないじゃん。て言うかお兄ちゃんロイの事調べにきただけだし、金目の物は盗ってないよ」
「そういう問題ではありません」
大男はローブを脱いだ。現したその姿に圭吾は驚いた。
(獣人!?)
大男は獣人であった。豹男、パンサーマンと呼ばれる獣人で珍しい白豹の男であった。身長は約2m、筋骨隆々の体は威圧感が凄まじい。片目は眼帯で隠れており体中にある古傷は歴戦の猛者だと言う事を物語っていた。
「ガゥルララッ!!!!」
圭吾が見切れぬスピードで白豹の男オルンは突っ込む。が、圭吾も対獣人戦闘を知らないわけではない。圭吾はルディルスの眼を起動させ、部屋全体を無効化し刀を拾い透過魔石で透明化した。
「逃がすか!!」
姿は消しても匂いは完全に消せない。匂いだけで圭吾の位置を見定めてオルンは爪による斬撃を放った。しかし、それは圭吾のマントの端を切り刻むだけで圭吾は部屋から出て行く。
(無効化が効いていない。S級クラスか!)
魔術無効化などS級魔術師ならば効かない。圭吾は身体強化にて猛スピードで通路を走る。途中、兵士やメイドにぶつかるがお構いなしにただ突っ走る。
「捉えた!」
丁字路に差し掛かった時、横からのオルンの攻撃が圭吾を襲った。
「くっ!」
圭吾は寸前で避け、右の通路へと逃げた。
「よく避けたな! しかし、こっちは通路を把握している。どこに逃げても無駄だ!」
入り組んだ魔王城の通路は初めて来た者にとっては迷路に近い。事前に記憶しても慌てて逃げていれば迷う。
「さあ、どうする侵入者! そちらは外ではないぞ!」
オルンは圭吾を遠距離攻撃魔術にて攻撃する。痺れ効果を持つ吹き矢の様な攻撃魔術で圭吾の背中を狙うが圭吾はそれを寸前で回避し続ける。
(なかなかの実力者の様だな。しかし!)
オルンは移動速度を速めた。元々、獣人の彼は本来人間の数倍の身体速度を誇る。
「終わりだ!」
圭吾の目の前に回り込み、爪をむき出しにした右手を圭吾に振り下ろした。圭吾は咄嗟に刀で受け止めるが、隙が出来る。開いた腹部に蹴りを入れられた。
「ぐあっ!」
蹴り飛ばされる圭吾であるが、なんとか踏み留まった。そしてまた走り出す。
(強い! そして速い!)
腹部に痛みを感じながらも、懸命に圭吾は走る。しかし、状況は圧倒的不利。圭吾の心中には諦めの気持ちが芽生えていた。
「お兄ちゃん! こっちだよ!」
諦めかけたその時、救いの声に圭吾は振り向いた。その振り向いた通路の先にはあの天才児ベネラが手招きしていた。
「姫様! なんのおつもりですか!!?」
オルンは主の行動が理解不可能であった。
そんなオルンを尻目に圭吾はベネラの元へとダッシュする。もう後はない。ベネラは自分を逃がす気でいる何故なのかと圭吾は不思議に思ったが、今考えている暇は無かった。
「こっちが外だよ」
にこやかに笑いながら通り過ぎる圭吾にベネラは言った。その言葉通り、そこは城の広いベランダであった。外に出れば逃げ切れる自信は圭吾にはあった。躊躇なく圭吾はベランダ内を走り抜け、眩しい帝都の街へとダイブした。
「姫様。どうするおつもりで?」
ベランダに出たオルンはベネラに問いかけた。その問いにベネラは笑みを浮かべ言った。
「ひ孫を見逃してやったんだから借りって事」
その言葉でオルンは察した。その気になればこのまま落ちていった圭吾を狙撃し始末する事もできるが、黙ってベネラの思惑に従うのであった。
「はぁはぁ――!」
急いで宿の部屋に帰ってきた圭吾に静乃は驚きベットから降りた。圭吾の衣服は少し汚れ、体のあちこちに擦り傷が見えた。静乃は驚きつつもそんな圭吾の姿を見て心配になった。
「だっ大丈夫、橘!?」
「ああ……はぁはぁ――それよりもここから逃げるぞ! 追っ手が来る」
その圭吾の言葉で静乃は侵入が失敗に終わった事を察した。
「失敗したのね。でも、逃げるってどうやって?」
「リリスがすぐ近くで待機している。あいつの長距離移動でこの帝都から脱出する」
「長距離移動? それってつまり?」
「説明している暇はない! 帝国の部隊が俺達を見つける前にこの帝都を立つ! 捕まったら殺される!」
あまりにも慌てているので静乃はただ事でないと判断し、さっさと示度を整えた。
「準備完了。いいわよ!」
「よし、行くぞ!」
圭吾は部屋の机の上に宿代を置き、二人は安宿を後にした。そして少し路地を歩いた後、待ち合わせ場所で待機していたリリスと会った。
「久しぶりです静乃さん」
「えっ!? うん、久しぶり」
慌てるこちらに対して冷静なリリスの挨拶につい静乃は挨拶してしまった。
「おいリリス! 天使諸島に飛ぶんだ。距離的には可能だろ?」
「可能でありますが、急ぐ必要はないと思いますが? ここ近辺に敵らしき反応は感じませんが?」
「相手はS級だ! 近づいてくるのが分からない可能性が高い! さっさと術を起動しろ! 今すぐここから逃げるんだ!」
今までに見たことがない程の圭吾の慌てぶりと何かの恐れている様に静乃は不安を募らせた。その姿から『魔王城で一体何を見て来たのか?』という疑問が生まれる。だが、今はそんな疑問をぶつけている余裕などない。
圭吾に急かされながらリリスは長距離瞬間移動魔術を起動させる。この魔術は近年になって進歩した魔術でまだ一部の上級魔術師と少数の国々で試験運用され始めたばかりの代物ある。文字通り長距離の瞬間移動を可能とするテレポートの魔術であるが、未だ研究段階で制約や不安定要素が多い。
リリスの使用する長距離移動魔術は予めマーキングしていた場所へと飛ぶ事か可能なタイプである。が、一度に飛ばせる重量とそれに伴う移動距離には制限が発生する。その為、地球の裏側にマーキングしてもその有効半径に到達し制限をクリアしなければそこには移動できない。
「準備が完了しました」
リリスを中心に足元に魔法陣が展開された。三人の足元に展開された魔法陣は強い金色の光を発して、辺りを強く照らした。それは魔王城からでも見える程である。
起動して数十秒で三人は眩しい光と共に天使諸島へと転送された。転送される最中、静乃は突如襲った睡魔により、気絶するようにして眠ってしまったのであった。
静乃はゆっくりと目を開けた。すると見慣れぬ白い天井が目に入った。
「……ここは?」
「起きたか?」
その声は圭吾だった。静乃は顔を向けると椅子に座る圭吾がこちらを見ていた。
「天使諸島の首都エンジュアの宿だ。お前は長距離移動魔術の影響で眠っていた」
静乃は辺りを見渡した。すると部屋の隅っこでリリスが体育座りで微動だにしていなかった。
「どうしたのリリスさん?」
「魔力切れ。移動魔術はああなるんだ。これで明日まで移動魔術は使えないな」
「そう……」
静乃は静かにそう言った。そして落ち込んでいる様な雰囲気を醸し出している圭吾に気づく。
「どうしたのよ橘?」
「えっ?」
「何か元気なさそうだけど?」
「……ああ、まあな」
「そういえば侵入で何か分かったの? やっぱロイットが私に呪いをかけたの?」
「……それなんだが、俺の見当違いだった。結局あいつの部屋まで辿り着いたが、呪いに関する書類は何一つなかった。無駄足だったよ」
「そう……そうなんだ。それはしょうがない。そういう事だってあるわよ」
「しょうがないわけないだろ? これで振り出しに戻ったんだぞ? いいのかこれで?」
「いいわけないけどさ……でも、まだ手がかりはあるでしょ?」
「残念だがもう思い付くのはこれぐらいだ。お前に呪いをかけた人間は結局分からずじまい、解く方法もない。打つ手なしだ」
「そんな…………」
静乃も落ち込んだ。
「…………一之瀬。謝る。本当にすまない。結局………俺はお前を振り回しただけだと思う。俺でもその気になれば呪いを解けると思い込んで、ただお前を連れまわした」
珍しい圭吾からの謝罪に静乃は目を丸くした。
「…………まさか、あんたから謝られるとはね」
その静乃の言葉は小さい声だった。
「えっ?」
「あんたが謝るなんて中学の時じゃありえなかったでしょうね。でも、いいわ。あんたは頑張ったよ。それは一番私が分かってるつもり。こんな素晴らしい世界とは言えない世界で私を守りながら旅してくれた事は感謝するわよ。呪いを解こうしてくれた事も」
「……なんだぞれは」
「はい? 何よそれって?」
「いや、お前からボロクソ言われると思って」
「はあ!? 私がそこまで捻くれた女だと思ってたの? 失礼ね! そこまで酷い性格してないわ!」
「悪いな。じゃあ今日から改めてやる」
「何よその上から目線!」
そして二人は笑った。今までの緊張が少し解けたのだった。
「少しは休みも必要だよな。ここで少し休むか」
「そうね」
「幸い、この天使諸島はこの世界有数の観光地だ。天界の美しさは素晴らしいと聞いている。体を休めるのにはちょうどいいだろう」
天使諸島は天使族が住まう国であり白い近未来的な街並みが美しい先進国である。天使族は長らく鎖国し他種族と必要以上に関わらない種族だった。古代から独自の高等魔術を用い、滅多に姿を現さない事から多くの人間達から崇拝と畏怖の念を抱かれていた。しかし、それは二百年前の話である。長きに渡り繁栄を見せた天使族であったが少子化や経済の停滞により国力が低下し始めたのだ。それとほぼ同時期に人間種の魔術が天使族レベルと同等なり始め、冒険家の魔術師が天使諸島に飛来し始めたのだ。人間の訪問に嫌悪感を抱く天使達であったが、当時の長(おさ)であるデネブは天使族だけの繁栄が限界に来ていると感じ鎖国を辞め開国するべきと唱えた。無論反対派が多く、一時期一部による武力衝突に至ったが、約十年の論争の末投票により開国が選ばれたのだった。
そして開国から約二百年。天使の国は様々な文化を取り入れ、さらなる繁栄を得て今では世界の中心的国家となっている。
「天使がいるとは聞いていたけどここはその国なのよね?」
「ああ、天使の国だ。この世界の中心的国家の一つで空を漂う島の上にある」
「ほほう、何かイメージ通りなのね。なら、見に行きましょうよ」
「もうか? まあ別に構わないが羽目を外すなよ」
「分かってるって」
静乃はそう言うと体を起こした
白く窓のない高層ビルが立ち並ぶ大通り。通称天界道(てんかいどう)に一人の女の子が飛び出した。ニット帽によく似た帽子を被った女の子は天真爛漫な様子で走り回る。それを追う同じ帽子を被る青年はデュカだ。
天使の国はいつも晴天。それは至極当然である。基本的に雲の上である浮遊島だからだ。
「お兄ちゃん遅いよ!」
「待てよミサ! あんま体動かすと調子崩すぞ!」
デュカの妹ミサは元気に走り回る。無理もない。彼女は生まれて初めての旅行に来ているのだ。そしてここまで走り回れるのも初めてだった。
「転ぶって!」
「もうお兄ちゃんは心配性!」
デュカの後ろをメイズがいた。メイズは走り回るミサに対し笑みを浮かべていた。寝たきりの友である彼女が走り回っているのを見て友達としてとても嬉しかった。
「メイズ。嬉しそうだな」
デュカの言葉にただメイズは笑顔で頷いた。
「きゃあ!」
デュカがよそ見をしている間にミサが誰かとぶつかった。
「あっ! すまねぇ!」
咄嗟にデュカは走り駆け寄り、ぶつかった人に謝った。
「悪いぜ。妹がぶつかってよ」
デュカは謝った。ぶつかった者は「大丈夫です」と言ったが、その声はデュカとメイズに聞き覚えがあった。
「お前は……」
「旦那!」
ぶつかったのは静乃だった。そしてその背後には圭吾がいた。
「あんたら帝国に行ったんじゃねぇのかよ。なんでここに?」
「それが……色々あってな。つい昨晩ここに来た」
「ふーん……しかし、まさかこんな所で再会すっとは思いもしなかったぜ旦那! 偽嫁さんも元気そうで!」
「偽嫁って……まあ、おかげさまで」
偽嫁呼ばわりされ静乃は苦笑いした。
「お兄ちゃん……この人達、誰?」
デュカの足にしがみついて圭吾達二人を見つめるミラに対し静乃は笑顔を見せた。
「例のサフィスを報酬をくれたお客さんだ。サフィスを手に入れたおかげで今のお前がいる。感謝しなくちゃな」
メイズがデュカの後ろでお辞儀をした。
「サフィスのおかげで妹はここまで回復した。あんがとよ旦那! ほら、ミサも」
デュカはミサにどうしても礼を言わせるつもりだ。しかし、ミサは極度の人見知り。が、赤面しつつも小さな声で言った。
「あっありがとうお兄ちゃんお姉ちゃん……」
「いや、無謀な事を頼んで」
「かっかわいい!!!!」
圭吾の言葉を遮る形で静乃が大きな声で言った。そしてミサに近寄る。
「私の事は静乃お姉ちゃんと呼んでね!」
少し怖がった様子でミサはデュカの背後にさらに隠れた。
「偽嫁さん。うちの妹人見知り激しいんでお手柔らかに」
「うん」
しかし、静乃は避けているミサに構う気満々である。それを見ていたメイズはミサの手を取って、さらに静乃の手も取り二人をつれて歩き出した。その先には売店がある。
「おっ?」
天使諸島は観光地だ。至る所に売店や観光名所がある。
「すまねぇ旦那。どうやらメイズが三人で観光してぇみてえだ」
「いいさ。こっちも観光みたいもんだ」
売店にてどうやら三人は買いたい物が見つかったのか、静乃が圭吾に向けて手を振った。
「お姉ちゃん……買ってくれるの?」
「当たり前よ! 全部あのお兄ちゃんが買ってくれるからね!」
「おい!!」
「わりな旦那。ごちになりまーす!」
「てめぇもか!」
その後、五人はあちこちの名所を巡った。天噴水。六層大広場。大天門。天界塔。シンティア聖堂など天界の観光地は一通り回り、夕方近くにて天王美術館に立ち寄った。
そしてこの世界で一番古い絵画であるとされる『堕天使ヘレネ』を五人は見た。ヘレネとは七人勇者の一人であり、後に魔王に魅せられ堕落した天使族で最も美しいと言われた女性天使である。その絵は極めて忠実に彼女を描いているとされているが、証拠はない。しかし、極めて美しい天使が描かれているその絵は長い時代多くの者を魅力してきた。
「すごいきれいな人……!」
ミサが目を輝かせながら壁に飾られた堕天使ヘレネを見つめる。ブロンドの長髪の背後には堕天した証、漆黒の翼がリアルに描かれている。描かれた場所は魔王城内の部屋だと言われているが、この絵に描かれた部屋はない。
「堕天使ヘレネ……ねぇ橘。なんで翼が黒いの? ここにいる天使は白いのに?」
「黒いのは墜天使の証だ。魔王と関係を持ったとか、闇属性の魔力に目覚めたとか言われているけど今まで天使の翼が黒くなった事例はない」
「ふーん」
静乃はあまり関心ない様な返事をして、ミサとメイズに連れられて次の絵画の場所へと行ってしまった。
「楽しんでなミサとメイズ。楽しそうで何よりだ」
「ああ、そうだな」
「……実は言うとな旦那。メイズとはこの旅行の最後で故郷に帰らせる予定なんだよ」
「えっ?」
「天使諸島は竜人の里近く飛ぶルートあるだろ? その時に降りてメイズを故郷に帰すつもりだ」
「それでいいのか? 妹さんは知ってるのか?」
「まだ知らねぇよ。でもメイズとも話し合った。あいつも納得してる。だからこれが最後の思い出作りだ」
「……そうか」
圭吾はその悲し気なデュカの話を聞いて少し寂しくなった。いつまでも一緒にはいられない。それはわかっているつもりだが、目の前に来てしまうとやはり寂しいには違いない。静乃ともいずれ別れる時がくる。
「おっと旦那! もしかして寂しくなったのか?」
「はっ? 違う」
「照れるなって。あの偽嫁さんとも別れでも想像しちゃったんだろ? まあ、どんな関係かしらねぇが別れるのが寂しいって気持ちはいいもんだと思うぜ」
「いい物だと?」
「ああ、だって寂しいって事は友情とか愛情とか抱いてた証だろ。いいじゃんか友情とか愛情ってのは! 俺みたいな元奴隷もんでもあるんだって実感できるってのは幸せな事なんじゃねぇか」
その奴隷という言葉でデュカが過去に人間扱いされなかった事があると圭吾は容易に想像できた。
「ああ……そうかもしれないな」
「ここにおられましか圭吾様」
その声には圭吾は後ろを振り向いた。そこにはリリスがいた。
「メイドさん? 旦那の知り合いか?」
「ああ。どうした? もう動けるのか?」
「主様からご連絡がありました。共和国……我がもとに来いと」
その言葉に圭吾は目を丸くした。
「ジョンが俺を呼んでいるのか?」
「はい。共和国の首都である聖都ユアピト。つまり、聖マリサ・アスティアール学園に来いと」
その学園名には圭吾には聞き覚えがあった。共和国の屈指の魔術名門校である。出身に有名貴族や著名な魔術師がおり、帝国でも多く知られているほどだ。
「ジョンはやはりそこの人間だったか……」
圭吾はジョンについて全く教えられていなかったが、独自に調べ上げていた。
「おっしゃる通りで、我が主はそこにいます」
「わかった。しかし、急だな。何かあったのか?」
「よく分かりません。ただ、来いと」
「すげぇ話してんな旦那。有名校の名が出るとは……って事はお別れか?」
「そういう事になるな。今日は偶然とはいえ楽しかったデュカ。ありがとう」
「それはこっちの台詞だぜ旦那。偽嫁さんがいたおかげでミサ達はあんなに楽しんでいるからな」
デュカはそういうと手を差し出した。握手だ。圭吾はその手を握った。
「おい一之瀬!」
圭吾の声に静乃は振り向いた。
「これから共和国に向かうぞ! すぐに宿に戻る」
「ミサ! メイズ! 二人とはここでお別れだ!」
圭吾達の指示に三人は納得しない顔でこちらに歩み始めた。ミサは遠くから「なんで?」と叫びながら走り寄ってくる。
「さーてとミサにはメイズの事どう話すっかな?」
竜人の里付近まで三日だ。デュカは館内から見える夕日を見つめながら黄昏た様な気分を感じていた。
聖都ユアピト。ユアピト太湖に面するアステア共和国の首都である。帝国の帝都とは全く逆の白が基調の街並みは天使諸島首都エンジュアに次いで美しいと言われる。大きくゆるやかな丘陵を中心にして街は作られ、住まうのは主に人間種である。その人口は世界最大であり人類の街である。
夕暮れを過ぎ、夜を迎えたユアピトのとある路地裏で一筋の光が照らされた。
「ここがユアピト?」
長距離移動魔術にてエンジュアから飛んできた圭吾達だ。静乃はまた副作用により眠気に襲われて大きな欠伸をした。
「今度はちゃんと起きてろよ。もう背負うのは勘弁な」
「分かってるわよ」
静乃はそう言うもすごく眠たい眼だった。
「リリス? お前まだ動けるのか?」
移動魔術の消費魔力はリリスのほとんどを使う物でリリスは機能停止するのだが、今のリリスは正常に動いていた。
「主様から大量の魔力を送って貰っております。どうやら話は急用のようです」
「そうか……」
圭吾はジョンがここまでして俺達を呼びつける事は相当の事だと判断した。ジョンは万全の魔術師ではない。老いた魔術師なのだ。その為魔力量は劣る。それなのに傀儡に魔力を送り、呼びつけるのは大事だろうと圭吾は思った。
「私が案内します」
リリスの案内により二人は歩いていく。ユアピトの街並みは帝都と違い美しい。ごみ一つなく清潔であり、白い街灯の下、笑顔の人々
が行き交っていた。多くの人々が幸せに見えた。
リリスの案内で10分歩いたぐらいで白い校門の前に三人は到着した。
「ここだな」
「はい。こちらが聖マリサ・アスティアール学園正門です」
白く優雅なその大門は静乃をたじろいだ。ライトにより照らされている正門は選ばれた者しか通れない様な威圧感があり、庶民がくぐっていいような物でない気がしたからだ。
「何よこの門。威圧感感じるんだけど!?」
「そうでしょうか? しかし、主はこの中です。進みましょう」
「おやおやこれは橘君ではありませんか?」
その声は圭吾の振り向いた。そこにいたのはライット・ゲハルハンだった。圭吾の感知魔術に全く感知されずに現れたのだ。
「おっお前は!」
「おっと! ここでは戦いは辞めてくださいよ」
戦闘態勢に入ろうとした圭吾を制止するライットは戦う気など微塵も無かった。
「では、何のつもりだ? どうしてここにいる?」
「どうしてって……」
「これはゲハルゲン先生。お久しぶりです」
リリスはそう言って一礼した。それを見た圭吾は驚愕した。
「先…生だと?」
「ええ。先生は学園の教師です」
リリスの言葉に偽りはない。
「本当なのか?」
圭吾は半信半疑だ。
「本当ですよ。私はここで教師をやっています。そして魔術師として研究も行っていますよ」
「それで魔術会の会員ってわけか?」
「さあ、それはどうでしょうね?」
白々しいライットに圭吾は苛立った。
「とぼけるな!」
「辞めてください圭吾君。私はここでは教師なのです。あまり騒がないでください」
そう言ってライットはニッコリと笑った。そして圭吾を睨みつけた。睨みつけられた圭吾は恐怖を感じた。いくら義眼を変えてもライットの方が圧倒的に魔術の腕は上なのだ。
圭吾は戦闘態勢を解いた。
「よろしい。では、これで。買い物なんですよこれから」
そう言ってライットは街へと消えていった。
「えと……何、今のイケメンは?」
「魔術会の野郎だ」
「つまり東京をああにした奴らの一人って事?」
「そうだ」
「やさしそうに見えたけど?」
「お前にはそう見えたか……」
「えっ? 違うの?」
魔力も無く、魔術も使えない静乃にとってライットの恐ろしさは分からない。
「お話しはこれぐらいにして行きましょう。主様が待っておられます」
「ああ」
正門を潜り、長い道を進んでやっと校舎へと三人は辿り着いた。校舎は正門と同じく白く優雅な作りでだった。静乃はまたたじろぐがお構いなしにリリスは進む。
綺麗な廊下を進んで、大きな中庭に三人は出た。そして広大な中庭の道を進んでいくと家屋が見えてきた。
「あれが主様の家です」
歩きながらリリスが説明した。家屋は白く西洋風の物で、年月の長いのか古びた家屋だった。
「こちらです」
玄関から入ると古い外観とは異なり内装は綺麗だった。色鮮やかな壁紙、古くも大切にされ利用されたと思われる家具が圭吾と静乃の目に入った。
「ただいまかえりました」
「よし。圭吾だけわしの部屋に寄こせ」
リリスの挨拶に答えた声は家屋の奥から聞こえ、老人の声だった。静乃は圭吾との関係か気になる所だったが、お呼びではない。仕方ないと静乃は思った。
「リリス。貴様は圭吾が連れてきた娘の相手でもしとれ」
「分かりました」
リリスはそう言うと振り返り二人に言った。
「圭吾様はこのまま奥の部屋にお進みください。静乃様はリビングに案内します」
「分かった」
圭吾はそう言って一人奥へと進んだ。リリスはすぐそばのドアを開けて、静乃を招く。
「こちらがリビングになります」
静乃は躊躇うことなく入った。そこは欧米諸国で見かけるような特に変わった所はないリビングだった。
「お話は一時間程度で終わると聞いております。お茶を用意しますのでお座りになってお待ちください」
「お茶はいいわリリスさん。それより何かしない? 退屈じゃん」
「何かでありますか?」
「そう」
困った顔を見せないが、リリスは困った。リリスは周囲を見渡した。そしてとある本に目が止まった。
『治癒魔術入門編』。学園の教科書が机の上に無造作に置かれていた。
「静乃様はエンカーブレスレットをお持ちですよね」
リリスに問われ、それを嵌めた右手を見せた。
「これ?」
「はい。少し面白い事を思いつきました」
圭吾と別れて一時間程度が立った。一之瀬静乃は魔術を生まれて初めて使った。エンカーブレスレットにリリスが治癒魔術を組み込み、静乃は何回かの挑戦の後、治癒魔術を見事成功させたのだ。
わざと切り傷をつけた人差し指の切り傷を見事完治させたのである。
「やった! 成功だ! 今、魔法使えたんだよね私!?」
「そうです。まさかこんな短時間で成功させるとは魔術のセンスは高いようですね」
「そう!? 何か嬉しいな」
今まで助けられるばかりであった静乃にとって少しでも役に立てそうな可能性が出てきたこの成果は静乃にとって嬉しいものであった。東京の時から何もできない自分に引け目を感じていた静乃はどうにしかして圭吾に役に立てないかと旅の途中で思い始めていた。
エンカーブレスレットのおかげであるが、静乃は魔術を少し使える様になった。
「もう少し練習するからナイフ貸して」
「あまり深く傷つけないでください」
「分かってるって」
嬉しさのあまりつい深く傷つけてしまうんではないかとリリスは心配するのだった。
(リリス。娘をわしの部屋に寄こせ)
リリスの頭に直接主の声が響いた。テレパシーの魔術である。
「分かりました」
突如返事をしたリリスに静乃は驚いた。
「どっどうしたの?」
「静乃様。主があなたをお呼びです。奥の部屋に案内します」
「えっ? 分かった」
リリスと静乃はリビングから出て廊下を進んだ。そして一番奥の部屋の前に立った。
「こちらです。お入りください」
リリスが手をかざすドアのドアノブに静乃は手をかけ回し、そしてドアを開けてその部屋へと入った。すると圭吾の背中とその奥に灰色の長い髭を蓄えた老人の姿が目に入った。部屋は書斎であり本棚が左右にズラリと並んでいた。
老人はいかにも魔法使いの長老と思わせる姿だった。
「ほれ圭吾。その目で娘を見よ」
老人に言われた圭吾はゆっくりと静乃の方へと顔を向けた。
「そんな……」
静乃と目が合った圭吾は目を大きくし、驚愕した顔で静乃を見つめた。静乃が見たことがない圭吾の顔がそこにはあった。驚愕と失望が入り混じった顔だった。
「どっ……どうしたのよ……?」
圭吾のただらなぬ様子に静乃は不安を覚えた。
「信じられるか…………」
「えっ?」
圭吾はゆっくりと呟いた。
「魔王の義眼は俺達の世界だというのか…………」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます