4 母親に遭遇しました

「お嬢様、馬車はこちらになります!」



エマがシャロンを見つけたのは入学式も終わり、徒歩のメイと別れて下校しようとしたが帰り方が分からなくて迷子になり掛けた時だった。助かった!とホッとしながら、いい加減道を覚えなきゃと思う。



「迎えに来てくれたのね、迷子になる所だったわ。ありがとう!」


「いえいえ、これくらい。学園はいかがでしたか?」


「お友達が出来たの。メイシー・ノースさんという方なの。とても明るくて良い子よ。」



ほとんど信じているものの、メイがまだ完全な味方とは確定していないのでわざとメイの情報を流してみて反応を見る。しかし、かえってきたのは



「まあ!おめでとうございます!!」



というなんの当たり障りもない返事だった。

良かった、メイは白のようだ。メイが味方である事を再認識しすると同時に、《良かった》と思う私の感情にもびっくりした。

前世では仕事ばかりで友達はおらず、中学高校時代の同級生も疎遠だったため、なんだかこの気持ちは新鮮だ。むず痒いような、嬉しいような。どちらにせよ、友人という最強の味方を手に入れて私は絶好調だった。


家に到着するまでは。



「さあ、着きましたよ。お帰りなさいませ、お嬢様。」


気持ちが高まっていた私は、 今日は朝決めたように私の今までの行動が分かるような物や痕跡を見つけたら終わり!休憩! と呟きながら、スキップの様な足取りで自室に向かった。一日目にして味方をつくり、今後の目標も定まった。これ以上の成果はない。



「いや、異世界めちゃくちゃイージーモードなんだが」



「ああ神様、やっと私の前に現れてくださったのですね。」



「へ?一般貴族ですが?」



不意打ちに神様、と声をかけられたことで貴族らしからぬ返事をしてしまった。慌てて謝罪しようと振り返ると、白いワンピースを着たとんでもない美人の女性がいた。



「奥様、こんな所にいらっしゃったのですね。さあ、お部屋に…お嬢様?」


「お嬢様?何を言ってるの、こちらにいらっしゃるのは偉大な、私達の神様よ。失礼の無いようにして。」



中々カオスな状況である。美少女(自称)に縋り付く美女を引っ張る使用人。先程からおかしな事を言っている美女の事を使用人が奥様と呼んでいるから、この美女が私の母親なのだろう。朝に会わなかったこと、私を神と勘違いしていること、何故かメイドが私と母を見て慌てていることなど、沢山聞きたいことがあったため、声を掛けようとした。


「あの…」


「嫌よ!私は帰らないわ!あなた達、また私をあそこに閉じ込めるのね。知ってるわ。」


「違います、奥様。落ち着いてください。奥様を閉じ込めたりしません。」


「神様!使用人が無礼を働いて申し訳ございません!!きっちり指導しますので、どうか見逃し下さい。」


「あの!私は、神様ではないです!」


「なるほど、姿を隠されているのですね。承知致しました。」



駄目だ。全く話が通じない。ここは使用人達に合わせて一芝居うつか。



「ウォーリー公爵夫人。確かに私は一般人とは違うものかも知れません。しかし、だからと言って姿を出して目立ちたいわけではありません。私は一般人として、あくまでここにいたいのです。だから夫人、どうかこの話は2人だけの秘密にしましょう。」



嘘は話してはいない。私は一般人とは違う前世持ちで、なるべく目立ちたくはない。それを神であるとの嘘はつかず、ストレートに話しただけだ。



「はい!神のみ心のままに。」


「では奥様、あちらに向かいましょう。」


*使用人の自然な誘導により、夫人は帰っていった!


と、現実逃避してみたものの、どうやらかなりウォーリー家の家庭内は不安定なようだ。

この世界にも新興宗教というものがあるらしい。しかし、公爵夫人が新興宗教とは如何なものなのだ。一歩間違えたら反王派に目をつけられるか、もしくは反王派の仲間入りレベルだ。

我儘令嬢、宗教母親ときたら、父親はどうくるのか。ここまでくるとただの溺愛父親とは思えない。全てに裏があるように感じてしまう。問題が解決するばかりか、増えてしまった。これは先に、今までの行動より父親の手掛かりを探すべきかもしれないと増える課題に頭を抱えながら今度こそ自室へと向かった。




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元レスバトラー、異世界転生する。 まいこのまいこ @maiko_maiko

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