3 フラグが立ちました

「シャロン!私達同じ1組よ!」


「まあ、メイと同じクラスならば安心だわ、1年間よろしくね。」


「こちらこそ、よろしく!」



メイと一緒のクラスで本当に良かった。我儘令嬢と認識されている私はメイがいなければきっと孤立してしまうだろう。それまでの重い気分が少しだけ楽になった。




「それでは、前から順に自己紹介をお願いします。」


「ウェズレー・アーロン。よろしく。」



なんだか無愛想な人のようだ。学園で青春を謳歌する気は全くないらしい。失礼だが、私と同じ陰キャの香りがするので心の中で勝手に仲間認定をしておく。


「アーロン侯爵家のご子息。父親の侯爵は宰相を務めていらっしゃるわ。あなたの婚約者の側近の1人ね。」


すかさずメイが横から教えてくれる。どうやら将来的に父親と同じ宰相につくことを期待されているのにも関わらず、人嫌い故に1人で過ごす時間を大切にしたいらしい。



「時期宰相なら人脈を広げる努力くらいしろよ……」



おっと危ない、思わず口から本音が出ていたようだ。はっとして思わず俯く。今の言葉が誰にも聞かれてないことを願うしかない。もしかしたらメイと同じクラスになれたことで気持ちが緩んでしまっているのかもしれない。いけない、いけない。ここは異世界。何もかも元いた世界と勝手が違うのだ。特に私の公爵令嬢という立場上、一瞬のミスが命取りになりかねない。気を引き締めなければ。


気を取り直して前に向き直った私は、俯いている間にウェズレーが振り返ってじっとこちらを見ていたことにちっとも気づいてなかった。




「アイリス・ウェリトンです。私の家は石の加工をしています。石は石でも、うちで扱うのは…」



いよいよ次の番に自己紹介が迫っていた。私がこの自己紹介で狙うのはイメージアップである。なるべく爽やかに、親しみを持った挨拶をして、あれ?公爵令嬢なんか思ったのと違う?という反応を引き出す。学園には私を噂でしか知らないであろう平民の生徒・先生も多いので、反応はより大きく、噂はより速く広まるはずだ。ちなみに、噂を広めるにはメイも協力してもらうつもりだ。



「私の自己紹介はこれで終わりです!1年間よろしくお願いします!!」



順番が来たようだ。待ち時間の数分で考えた計画で、成功するか少し緊張するがボーッと立っているわけにはいかない。私は、私のやるべきことをしなければ。



「はじめまして。シャロン・ウォーリーです。まだまだ未熟な所も多いですが、皆さんと共に1年間勉強に励んでいきたいと思います。皆さん、よろしくお願いします!」


なるべく簡潔になるよう、しかし冷たくはならないように工夫した内容を少し高めの柔らかい声で話し、最後に笑顔をむける。緊張のあまり若干震えてしまったが、そんなことを気にしていられる余地はない。大切なのは、この後だ。どん底にある私の印象を上げるにはもっともっと努力しなければならない。

そしていつかは平民、貴族に関係なく人脈を広げてこの世界の謎を解く。そう決めたのだ。





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