06 相思相愛



 私の体はなまっていない。


 だから、隙を見て、彼を助けようとした。


 しかし、王子は用意周到だった。


 気がつくと、沢山の兵士達が周りを囲んでいた。


 初めから私達が抵抗するのを見越していたらしい。

 王子は、きっと誰も信じていない人間なのだ。


 王子は、話の中で、思いを通じていたはずの姫の事を心配するまでもなく、いい迷惑だとなじった。


 きっと、心から信用できる人間がいないのだろう。


 私は王子の事を哀れに思った。

 しかし、だからといって状況が良くなるわけもない。


 哀れみの視線を向けられた事に気が付いた王子は、激怒し、捕まえていた彼をむごたらしくなぶると宣言した。


 状況はあきらかに不利。

 反撃をしても、二人共負けてしまうだろう。

 暗い未来の到来を悟った私は、せめてものお願いを口にした。


 どうか、ここで縛られている彼は助けてほしい。


 私が必死になって頼む姿が、どうやら面白かったらしい。

 王子は一度は、その願いを聞き入れたふりをした。


 しかし、彼を解放してすぐに、攻撃しようとしたのだ。


 まるで、一瞬でも解放したのだから、これで願いを聞いた事になるだろ、とでも言わんばかりに。


 私達は四面楚歌の状況に絶望した。


 だから、最後に自分の思いを伝える事にした。


 私の命を助けれくれた恩人に。


「こんな事に巻き込んでしまってごめんなさい。貴方の事が好きでした」


 そしたら、彼はあの時と同じ言葉を返した。


「俺も好きだよ。これからもずっと好きでいてくれ。ここで諦めてはいけない」


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