第26話 魔力操作?
魔法は、詠唱という特定の言葉を唱えることによって体内の魔力を操り、その魔力を消費することで使うことができる。私の知ってる魔法の詠唱の常識をゼクトに話してみた。詠唱を使わない秘密を知るために。そして、ゼクトの話によると……。
「……それって、大昔に非効率だって言われた技術なんだけど」
「ええ!? そうだったの!?」
「うん。そんなものがなくても、というか、詠唱よりも魔力を集めることくらいできるんだけど」
「そうなの!? いったいどうやって!?」
大昔に非効率ですって!? 時代が違うと思ってたけど、そこまで違ってくるなんて! 私は興奮してゼクトに詰め寄ってしまった。
「ちょっ、落ち着け落ち着け、教えるからもう少し離れよう」
「え? はっ! ご、ごめん、興奮しすぎたわ……」
ゼクトに言われて気が付くと、互いの息が当たるところまで近づいてた。あのままだと触れ合ってキ……! とっ、とにかく今は詠唱が無い秘密を聞かないと!
「まず、魔力が流れる感覚って分かるかな? 魔法を使うときとか、使った後とかに」
「まあ、そのくらいなら分かるわ。詠唱をするときにはっきり感じるから」
「その流れを自分で操作する。つまり、感覚を頼りに魔力を動かすんだ。魔力操作って言ってな、これこそが魔法を効率よく扱うために必要不可欠なんだ」
「そんなこと、できるの? 聞いたことがないんだけど……」
「詠唱するときにはっきり感じるなら、ミエダもすぐできるんじゃないか? 俺は苦労したけどな……」
ゼクトの詳しい説明をまとめると、詠唱の代わりに『魔力操作』というものが魔法の使用に使われていて、詠唱の言葉で動かす魔力を、感覚だけを頼りに動かすらしい。つまり、体内の魔力の流れを感じ取り、その流れを掴み、肉体の一部のように操ること。……本当に聞いたことが無いけど、なんかできそうな気がしないでもないわね。
「感覚を頼りにね……。詠唱するときに感じるから、そこから掴めるかしら? ちょっと試してみるわ」
「そうか、出来るといいな」
「うん、ありがとう。危ないから上で試すわね」
「おう。気をつけろよ」
鍋の上に移動して試すのは、初めての試みだから失敗が怖いから。ゼクトは気をつけろと言ってくれたけど、その辺は分かってないみたいね。う~ん、とりあえず、詠唱から魔力の流れを掴んでみよう。まず、詠唱を始めて、その途中で感じられる魔力の流れに干渉する。具体的に言うと邪魔して流れを止める。もしそれができれば、魔力操作というのを掴めるきっかけにはなるかもしれない。詠唱を始めれば魔力が動く、逆に言えば、詠唱を止めれば魔力も止まるはず。
「わが怒りは火に変わり敵を打……!」
詠唱の中止とともに魔力の流れが止まる。これだ!
「ん? どうした?」
詠唱時の魔力が流れる感覚と、その流れが止まる感覚の二つが分かった。この二つの感覚はしっかり覚えたから、詠唱をせずにそれを再現すれば魔力操作に至るはず! ……精神を集中し、感覚を最大限に研ぎ澄ませ、詠唱しないで魔力の流れを掴む……!
……………………………………………………………………………………………!
「……分かる」
「ん?」
「分かる、分かるわ。魔力の流れ、動き、速さ、増減、行く道が分かる……! これが魔力操作! どうしてこんな簡単なことが分からなかったんだろう!」
「は、え? か、簡単?」
魔力の流れを掴めた! 魔力操作ができたんだわ! これでゼクトと同じように、詠唱抜きで魔法が使える! 私が詠唱してる間にゼクトが決めるなんて格好の悪いことはもうないんだわ! 早速、試さなくちゃ!
「ファイヤーシューティング!!」
あっ、しまった! 魔力の配分を間違えた! これだと……ち、力が……。
ドゥオッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
「うええええええええええええええええええ!!?」
ま、マズイ……。これは……あの国、を……消した、時と……おな……。
「「「グギャアアアアアアアアアアアアア!?」」」
「「「ギエエエエエエエエエエエエエン!?」」」
「「「ギャアアアアアアアアアアア!?」」」
魔力を間違って余計に使ったせいで、私は急激な魔力消耗に陥り、立てる力さえ失って鍋の中に落ちて行った。ゼクトの声や魔物の叫びが聞こえた気がしたけど、意識さえ失う寸前の私には聞く暇さえなかった。
ガシッ
「あ、あぶねえ! つ、っくう……! ま、間に合った!」
「はあ、はあ……!」
「おい、何があったんだ!! 今の爆発音は何だ!! いやそれよりなんでこんなに疲れたんだ!?」 「はあ、はあ……。魔力操作を、はあ、はあ、試し、て、みたんだ、けど、はあ、はあ……」
「それだけじゃねえだろ!?」
「ち、ちょっと、手元が、くるって……魔力の、大部分を、魔法に、つぎ込んじゃったの……」
「んな!? 操作を誤ったのか!? それであんな爆発音が!?」
「せ、正確、には……火の、魔法を、思いっきり、ぶっ放した、んだけどね、矢みたいに……」
「何い!?」
私は正直に話した。魔力操作を誤って、魔法を可能な限り最大出力でぶっ放したことをそのまま話してしまった。私の危険性をゼクトに話してしまったようなものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます