第27話 気まずい……

※数時間後


「ミエダ、もう大丈夫か?」


「ええ、十分回復したわ」


「そうか、ならもうそろそろ行こう」


「……うん」


 あれから、俺はミエダに回復魔法をかけ続けた。そして、少し休んでから俺たちは動き出した。……なんでだろう、鍋の外を見るのが少し怖い。ミエダもそんな感じみたいだ。


「い、行くわよ。何を思ってるのか分からなくもないけど……先へ進まないと……」


「分かってる、行こう……」


 俺たちは覚悟を決めて鍋の上まで登った、森が見渡せる位置に。そこで見たものは、驚くべき光景だった。


「こ、これは!? 森が、森が抉られてる!? しかも一直線に!」


「そ、そうね……私のファイヤーシューティングの炎の矢で森を焼きながら抉った結果ね」


 ミエダは落ち着いて言ってるが、俺は落ち着けない。こんな光景見たことないのだ! まるで二つに分けるかのように、森を直線状に抉ったような光景なんて! しかも抉られた部分が今も赤黒く熱を帯び続けているってことは、とてつもない高温だったのだろう。これが炎の矢を放ったからだって? とんでもない魔力量じゃないか! どんな魔力操作のミスだよ!


「ミ、ミエダさ~ん……」


「な、なにかしら、ゼクトくん……?」


「あなたがこれをやったんだよね……?」


「そ、そうよ……は、はは、すごいでしょ?」


「そうっすね……」


 俺たちは互いにぎこちなくなっていた。無理もないな。どう反応すればいいのか分からない。ミエダは無理して笑っているが俺はどうする? すごいと褒めるのか、このまま驚き続けるのか、怖がるのか……いや、怖がればミエダが傷つくだろ! せっかく無理してごまかそうとしてるのに怖がるなんてダメだ! 俺らしい反応をしろ! 俺らしい行動と言えば……これしかないな。


「ち、ちっくしょおおおおおおおおおお!!」


「ええ!? ちょ、ちょっと待って、どうしたのよ急に!?」


「く、悔しいんだよ! 先を越されるなんて~!」


「は、はあ? 先を越されるって、何言ってんの!?」


「だってそうだろうがよ~。この状況はつまり! ミエダが俺の助言ですっげえ強くなって魔物どもを一掃したってことだろ! 大活躍じゃねえか! 俺がやってやろうとしたのによ~、ちくしょー!」


「……悔しい? え? ええ~?」


 ……そうだ悔しがれ、悔しがるんだ俺よ。これなら傷つことはない、この反応ならミエダは傷つくことはない! 俺が呆れられるだけだ! ……俺はそう思いながら悔しがる態度をとる、まるで馬鹿な子供のように。実際、悔しいしな……。こんなことができたのは魔力操作ができたってことだ。こんな短時間で、それも俺がやり方を教えただけで習得できたんだ。ミエダ・ボリャ、彼女はヨミどころかブレンよりも魔法能力が優れている。あの二人がミエダを知ったら悔しがるだろう。今の俺みたいに。


「あ、あの~、ゼクト~……じ、実は私、そんなつも……」


「だがしかし!」


「ふぇ!?」


「次は俺だ! 俺が活躍してやるんだ! 負けねえぞ! いいな、ミエダ!」


「は、はい! わ、私も負けません! が、頑張ってね!」


「おう!」


 よし! うまくいったみたいだ。なんか気まずそうな顔をしてたが、それも上手くはぐらかした。この話は終わりにして後は、話題を変えよう。どう先に進めばいいかわかんないしな。


「話は変わるけど、もう先に進もうかな? ダンジョンに森があるパターンは知らないからどうする?」


「え、う~ん、私もこんなパターンはよく知らないけど、迷路や中が広い部屋だと何かしらの仕掛けや目印があったりするから、この場合は何か目立つものを目指せばいいんじゃない?」


「目立つもの? いったいどんな?」


「そうねえ、森の中に大きな何かが……あっ! あれなんかそんな感じよ!」


「あれって? あ!」


 目立つものを目指す。それを見つけたミエダが指さした先にあったのは、……あれ、抉った先? ではなく、怪しげな建物だった。やばい。少しズレていたら、抉られるところだったんだ。

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