第25話 詠唱?
ミエダな話によると、魔法の詠唱は必要不可欠なもの。詠唱は、魔法に必要な魔力を集めるために唱える言葉のことを指す。これを唱えることによって、体内の魔力を動かして魔法を使う……そうだ。魔法に必要なものが詠唱だって?
「……それって、大昔に非効率だって言われた技術なんだけど」
「ええ!? そうだったの!?」
「うん。そんなものがなくても、というか、詠唱よりも魔力を集めることくらいできるんだけど」
「そうなの!? いったいどうやって!?」
ミエダが詰め寄ってきた。魔法が本当に好きなようだ。美少女が目をキラキラさせて鼻息を荒げて迫ってくる。どう反応すればいいんだろう。おお!? ち、近い、近すぎる!
「ちょっ、落ち着け落ち着け、教えるからもう少し離れよう」
「え? はっ! ご、ごめん、興奮しすぎたわ……」
顔が近いことに気付いたミエダは顔を赤らめて離れた。互いの息が当たるところまで近づいたんだ、恥ずかしくなって当然……いや、今更気にすることないのかな? 今日、確か2回も抱き着かれたんだし。……とりあえず、今は無詠唱のことを教えないと!
「まず、魔力が流れる感覚って分かるかな? 魔法を使うときとか、使った後とかに」
「まあ、そのくらいなら分かるわ。詠唱をするときにはっきり感じるから」
「その流れを自分で操作する。つまり、感覚を頼りに魔力を動かすんだ。魔力操作って言ってな、魔法を効率よく扱うために、これこそが必要不可欠なんだ」
「そんなこと、できるの? 聞いたことがないんだけど……」
「詠唱するときにはっきり感じるなら、ミエダもすぐできるんじゃないか? 俺は苦労したけどな……」
詳しく説明できるのは、学園で魔力操作を教えてくれた先生が一生懸命教えてくれたからだ、怖かったけど。懇切丁寧に教えてくれたおかげで、俺は4番目に早く魔力操作を覚えることができたのだ。思えばここでも4番目だったんだっけ、嫌なこと思い出したな……。
「感覚を頼りにね……。詠唱するときに感じるから、そこから掴めるかしら? ちょっと試してみるわ」
「そうか、出来るといいな」
「うん、ありがとう。危ないから上で試すわね」
「おう。気をつけろよ」
ミエダは鍋の上に移動して、試してみるそうだ。すぐに習得できるとは思えないから、中で試してもいいと思うのは俺だけか?
「わが怒りは火に変わり敵を打……!」
「ん? どうした?」
ミエダは詠唱を唱えて途中でやめてしまった。どうやら何か掴めたようだ。もし、これでミエダも魔力操作ができるようになれば、強くなるのと同じだ。非効率な詠唱に頼らずに済むんだから。今度は、目を閉じてじっと静止しているけど、多分、集中しているんだろう。やっぱり、すぐに習得できないのかな? 俺の時のように。
「……分かる」
「ん?」
「分かる、分かるわ。魔力の流れ、動き、速さ、増減、行く道が分かる……! これが魔力操作! どうしてこんな簡単なことが分からなかったんだろう!」
「は、え? か、簡単?」
い、今の聞き間違いか? いや、確かに聞こえちゃった、簡単だって……。いやいやいやいや! 簡単にいくはずないから! いくらなんでも早すぎる! たった今習得できたんなら、それって……
「ファイヤーシューティング!!」
ドゥオッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
「うええええええええええええええええええ!!?」
な、何だ!? いきなりとんでもない爆発音が!! いや違う! 「ファイヤーシューティング!」って聞こえたぞ、まさか!? そんなことって!?
「「「グギャアアアアアアアアアアアアア!?」」」
「「「ギエエエエエエエエエエエエエン!?」」」
「「「ギャアアアアアアアアアアア!?」」」
今度は魔物たちの鳴き声が、悲鳴が聞こえる! 魔物たちにも被害があったってことだ! ということは、やっぱりそうなのか!? この衝撃音の正体は……って、ミエダが落っこちてきている! 一体何がどうなってんだ!?
ガシッ
「あ、あぶねえ! つ、っくう……! ま、間に合った!」
「はあ、はあ……!」
「おい、何があったんだ!! 今の爆発音は何だ!! いやそれよりなんでこんなに疲れたんだ!?」
「はあ、はあ……。魔力操作を、はあ、はあ、試し、て、みたんだ、けど、はあ、はあ……」
「それだけじゃねえだろ!?」
「ち、ちょっと、手元が、くるって……魔力の、大部分を、魔法に、つぎ込んじゃったの……」
「んな!? 操作を誤ったのか!? それであんな爆発音が!?」
「せ、正確、には……火の、魔法を、思いっきり、ぶっ放した、んだけどね、矢みたいに……」
「何い!?」
要約すると、ミエダは魔力操作を誤って、魔法を可能な限り最大出力でぶっ放した。先ほどの爆発音はそれが原因だそうだ。
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