第13話 知ってしまった真実

 俺はミエダに全てを話した。今の時代の人間と魔族、魔王と勇者、俺自身の境遇についてだ。それから、ミエダはいくつか質問(大半は俺のこと)をしたので、出来る限り答えた。俺のことがよほど気になるんだろう。まあ、一応俺が恩人だしな。


「ゼクト……私は……何て言ったらいいのかな?」


「そうだな、笑ってくれてもいいんだぞ?」


「笑えるわけないでしょ! こんなのあんまりよ!」


 ミエダは複雑そうな顔から一変して、怒り出した。笑わないんだな。


「才能ばかり重視してゼクトの努力を認めないなんて! 才能が無いから期待しない? 見てやらない? そんな連中はクズだわ!」


「禁忌の力に手を出したのに?」


「魔族の力で魔王の魔法で何が悪いのよ! 人間でそんな力を使えるなんて、むしろすごいわよ!」


「敵対種族の力だぞ? すごいけど人間側から見たら嫌な気にはなるんじゃないか? 魔族だって人間の魔法なんて使いたがらないだろ? それと同じじゃないか?」


「うっ……それは……そうかもしれないけど」


「争って傷つけあった記憶を思い出させる戦いをしたんだ。知らなかったとはいえ、俺のしたことは、人間の誇りを踏みにじるものだったんだ。罵倒されても仕方ないさ。」


「ゼクト……」


 ミエダは悲しそうな顔になった。無理もない。俺にかける言葉が分からないんだろう。目に涙を浮かべてるのも、今は悲しみを感じてるからか。せっかく封印から解放されたのに、悪いことしたな。それでも、聞いてほしかったのは事実だ。


「それでも……私は許せないわ、ゼクトを追い詰めた人間たちを……そして、エルロウドっていう魔王を!」


「え?エルロウド?魔王のこと?」


 どういうことだ? ここでミエダが魔王を許さないと言った。魔王と言っても、封印したガルケイドではなく、俺の時代の勇者に倒されたエルロウドのことのようだけど?


「なんで魔王エルロウドの名がでてくるんだ?」


「その魔王が元凶よ」


「元凶? 魔王エルロウドと俺の境遇が何の関係があるんだよ?」


「気付いてないの?ゼクトは、人間と魔族、両方の魔力がある。だから魔族の魔法が使えるようになったのよ」


「なっ、何だって!?」


「ゼクトが気を失ってる間に、ゼクトの体に回復魔法を使ってたんだけど、その過程で体の方を調べてみた時に分かったの」


「なんで俺の体に魔族の魔力が!?」


「人間の魔力は人より上程度だけど、魔族の魔力の方はかなり強力よ。上級魔族以上の力を感じたわ」


 俺に魔族の魔力がある? そんな馬鹿な!? ……もしや、これも呪いのせい? いや、ミエダは魔族の魔力があるから魔族の魔法が使えるようになったといってるが? それじゃあ、この髪は?


「ゼクト、髪を触ってるけど、魔族の魔力があるのは、禁術の代償…呪いじゃないわ」


「えっ? でも髪が……」


「魔族の魔法や禁術を人間が使って、その代償が髪の色が変わる程度で済むはずがない。最悪死ぬ。そもそも、魔族の魔法や禁術を最初に使った時に、体に異常が無い時点でおかしいのよ」


「…………」


 言われてみればそうだ。俺は訓練の過程で魔族の魔法を使っていた、何度もな。髪の変色がその時になってないのはおかしい。国の健康診断も受けてたが、特に異常は無かった。本当にどういうことなんだ?


「人間のゼクトが魔族の魔法を使っても髪の変色で済んでるのは、魔族の魔力を生まれつき持っているからなの」


「…………生まれつき?」


「そう。魔王エルロウドの呪いによるものよ。呪われたのはゼクトの両親だけどね」


「魔王の呪い!? 俺の両親!? 」


 俺の親父とお袋が呪われてるせいで、俺に魔族の魔力があった? それで魔族の魔法を使っても平気だったと? ……何だか話の展開に追いつけない。謎が深まる。


「……頭がこんがらがってきた。俺に分かりやすく説明してくれないか」


「分かったわ。まず、誰よりも強い魔族がいても、更に強い魔族が現れて殺されてしまう。殺される方の魔族は、自分の『血』よりも『力』を後世に残そうとする。それが私の知る時代の魔族の特徴だった」


「……うん」


「その方法は、勝った方の魔族に自分の『力』を渡すことなの」


「勝った方に渡す? どうしてそんなことを? 相手が憎くないのか?」


「当時は『血』よりも『力』が重視される社会だったの。魔族にとって『力』こそが誇りで後世に残すべきもの。たとえ後世に伝えるのが殺した相手でもね。今は分らないけど、もし、魔王エルロウドがその社会に従うような魔族だったら……分かるかな?」


「……自分を殺した勇者を、後世に『力』を伝える相手にするってことか。そして、その手段が呪いをかけることなのか」


「呪いを通じて、勇者からゼクトに『力』が伝わった。最初、それはゼクトの中でずっと眠っていて、人間側は見つけられなかったんだろうけど、ゼクトが言ってた本の影響で覚醒したんでしょうね」





 魔族? 『血』よりも『力』? 後世に残す? 私の知る時代? 『力』こそが誇り? 魔王の呪い? エルロウド? 殺した勇者? 『力』を伝える相手? 呪いを通じて? 俺に伝わった?  本の影響? 覚醒? え? え? ちょっと待ってよ? え?



 …………………………………………………………………………なんてことだ。

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