第11話 魔女の復活

※数時間経過


「は!」


 ここは? 俺は一体? ……ああ……そうだ、ミエダを助けようとして……!?


「ゼクト! 目が覚めたのね!」


「ミエダ!」


「良かった! 早くお礼が言いたかったの!」


「ちょっ、ミエダ!?」


 起き上がるとミエダがすぐ隣どころか膝枕してくれてることが分かった。そして今度は抱きしめてきた。俺の人生で女の子に抱きしめられる日が! いやいやそうじゃないだろ! 今の状況を考えろ! ミエダがすぐ傍にいるってことは……


「封印を……壊せたんだな……」


「うん! そうよ!」


「俺たちで……俺たち二人で!」


「そうよ! ゼクトのおかげよ! 本当にありがとう! 私ひとりじゃダメだった! ずっと寂しかった! ずっとこのままだと思ってた! 死ぬしか助からないと思ってた! ゼクトが終わらせてくれた! この私の生涯をかけても感謝しきれないわ! うわああ~ん!」


「ミエダ……」


 ミエダは笑顔で泣いていた。こんなに喜んでくれて俺も嬉しいな。まあ、俺が本当に嬉しいのは、生まれて初めて命を懸けて誰かを助けられたことかもしれない。その相手がミエダみたいな子ならなおさらだ。それが誇らしいんだ。あれ? 俺も泣いてる? まあいいか。





 

 しばらくして(主にミエダの泣く時間)、ミエダが落ち着いたのでようやく二人で話し合うことができた。ようやくだ。……ミエダの方は、まだ興奮してるけどな。


「ゼクト、私にできることがあれば何でも言って! 私の命ある限りあなたの望みを叶えるわ」


「じゃあまずは、俺の話を聞いてほしいな」


「ええ、もちろん。約束だし」


 さて、何から話そうか? 俺の勇者の子供という立場を考えると、親父とお袋から話さないといけなさそうだな。そして人間と魔族の争いに決着がついたことも。長い話になるな。


「まず、人間と魔族の争いに決着がついた頃までさかのぼる。その当時の魔王『エルロウド』が勇者に倒されたんだ。正確には5人の勇者にな。」


「エルロウド? ……聞いたことないんだけど、ガルケイドはどうなったの?それと勇者って何?」


「俺はミエダに会うまで魔王の名はエルロウドしか知らない。魔族側の情報は滅多に入らないからガルケイドってやつがどうなったかは知らない。勇者というのは人類の歴史上において、魔王軍の幹部を倒したり戦争で大きな功績を上げたりすることで、各国に戦力・人格が認められた者のことを指すんだ。」


「『聖女』とは違う形で人間側の英雄ってわけね。5人がかりとはいえ、人間が魔王を倒すなんて……。時代が変わればそんなこともあるのね」


「さっき言った通り魔王が倒されたことで戦争が終わって、もうすでに16年の月日が経ってるんだ。その間は平和な世の中さ。勇者が馬鹿な子供を作るほどにな」


「人間と魔族の争いに決着か。平和な世の中になるなんて実現しないと思ってたわ。世界は変わったのね。ん? 勇者が馬鹿な子供を作るってどういうこと?」


「お前の目の前にいるのが馬鹿な勇者の子供だ」


「え!? ええええええええええええええええ!?」


 さすがに驚いたか。魔王を倒せるような奴の子供が目の前にいるんだ、魔王の娘だったミエダにしたら気が気でなくなるかな? 生まれた時代がもう少し遅かったら敵になってたかもしれないし。


「ゼクトが勇者の子供!? 勇者の息子なの!?」


「そうだ。そんな風に見えないかな?」


「いや、そんなことは……! そうか、分かった! 勇者の子供だから才能があって魔族の魔法や禁術を使えたのね!」


「違うな。むしろ逆だ。勇者の子供なのに魔族の魔法や禁術を使ってしまった、だからここにいるんだ」


「え? どういうこと? 勇者の子供なのにって……」


「俺は勇者の子供なのに才能が無かった。期待を裏切るほどに、それで誰も俺を見なくなった、どれだけ努力してもな。」


「……ゼクト?」


「俺はそんな環境が嫌になって強さを求めたんだ。皆を見返せる強さを」



 俺にとってつらい話になるのに、どうして、こんなに自然に話せるんだろう?



「努力だけじゃ足りないかった。それで俺は強くなる方法を模索した。そしてある本に行き着いたんだ。魔族の魔法もそこから覚えた。そこに魔王の魔法が紛れていたんだ」


「魔王の魔法!? そんなことが!?」


「俺はその魔法を大勢の前で見せてしまった、魔王を倒した親父にもな」


「…………どうなったの?」


「魔王のことを知る大人は親父を含めて怒りを向けていたよ。後は怖がらせちまったな。お袋だけは悲しそうにしてたがな。今思えば当然さ。全人類の最大の敵だった魔王の魔法を、勇者の子供が使うなんて、恥知らず、人間の誇りが無いって糾弾されるよ」


「そんな……」


「俺は絶望した。怒りと悲しみで頭がいっぱいになって、親父を殴り飛ばし、怒りの声も心配する声も聞かないで、すべてから逃げ出したんだ。行き着いた先がここだったんだ」


「!? ……そうだったの」


 思ったより落ち着いて話せたな。また、怒りや悲しみが込み上げてくることもなかった。


 ……笑い話にしようなんて思いつくほどだったから、先日のことなのに、もう俺にとっては昔のことなんだな。

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