10.13.理事長襲来
中間試験の結果はこれまで通り。つまり、私が1位で
うちのクラスの評議委員は変わらないけど、他のクラスは交代になったところもあり、今日の評議委員会は恒例の自己紹介だ。
「今日って自己紹介の日だよねぇ。帰っていいかなぁ」
何故か理事長が傍聴するといことになったとかで、いつもは省略される
「風紀委員長の
……えっ、それだけ?
「そう、貴方が」
会長のときも、他の役員のときも黙って聞いてただけなのに、何故か
「理事長、本日は傍聴のみということだったと思いますが? 不要な発言は控えて下さい」
「あら、
「公私混同はおやめ下さい、理事長」
「あら、公私混同しなかったらこんなところには顔を出したりしませんよ?」
「評議委員会に出席したいと言い出すから何かと思えば……。最初からこれが目的だったというわけですね。だったら別途機会を設けて――」
「だって、なかなか応じて下さらないんですもの
「それは……、そうなのだけれど」
「お母さんだって気になるのよ?
理事長の発言だから皆んな黙って聞いてるけど、広がっちゃうんだろうな、会長と
「今まで尽く断ってきたのですからね、名家との縁談も。お父様の説得にも聞く耳も持たなかったのですから。それが、今回は名前を聞いた途端に『お受けします』だなんて」
「余計なことを言わないでっ」
珍しく取り乱す会長。こんな会長は初めて見たかも。
やっぱ
「で、彼がそうなんですね。確かに解る気がします。
「だから余計な事を言わないでって言ってるじゃない(怒)。今日の評議委員会は中止よ、理事長の乱心によってね。次回、特に議題がなければこの続きを行うわ。勿論、部外者の立ち入りを禁じた上で。それから、今日ここで聞いた事は全て忘れることね。もし校内にこの件に関する噂が流れるような事があれば犯人を特定してそれなりの償いをしてもらうから覚悟なさい」
中断か。いつもより早く終わったからこの後
「
「えぇー」
「そちらのお嬢さんもよろしいですか?」
「私も、ですか」
気になるけど、なんで私まで。
理事長の目的は婚約についてのことなんだろうから、私に残れってことは……、身を引けと……
他の評議委員たちはざわつきながら会場を後にしていく。残されたのは会長と会長のお母さん、それに
「はじめまして、
やっぱりそうだよね。子供か……
「その事なんですけど、たぶん糞ジジイ、
「関係ないとでも?」
「僕には他に好きな人が居るから」
「何か問題でも?」
「問題でもって」
「宜しいんじゃないですか? 私の夫も他に女性を囲っていますし、
「私は……」
他に女性をって、
会長はそんな環境で育ってきたから平気なんだ。ふざけてるわけじゃなくて本気で言ってたんだ、『三人で楽しい事すればいい』って。
「あら、自分で言えないならお母さんが言ってあげましょうかしら?」
「余計な事は言わないでって言ってるじゃない」
「まあ、照れちゃって。良いではないですか、ここに部外者は居ないのですから。ねえ、
「えっ、私?」
「今は
やっぱりそうなんだ。この人、
「でも……」
「いいわけないじゃん、そんなの」
「
「僕はずっと
「あらあら、これは
「そんな、さっき会長は尽く断ったって」
「だって、それは
「会長はそれでいいんだ。自分の好きな人に他にも女の人が居て、いつも一緒に居られなくても」
「私は……」
「
「私の思惑……」
「それは困るわ。ちゃんと跡目は残してもらわないとね」
「あくまで仮定の話だよ。そんな事になならない、絶対にね」
「それはどういうことなのかしら?」
「
「確か妹さんがいたはずよね。それに病弱のお母様も。心配じゃないのかしら?」
「受けた恩は返した。あとは
「まあ、そう結論を焦ることもないわ。まだ結婚できる歳でもないのですから。もう少し世の中の仕組みがわかるようになってから決めたらいいんじゃないかしら」
「僕の考えは変わらない」
「そう。それならこちらにも考えがあるのだけれど……、
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