10.09.体験授業(1)
「ごめんなさい、うかりしてて渡すのが前日になってしまいましたが、皆さん楽しんで来てくださいね」
まあ、僕も忘れてたんだけどね。担任が忘れちゃだめなんじゃないの?
2年の1学期。丁度中間試験が終わったこの時期は、進路を選択する上で参考にしろとでも言うかのように幾つかの大学の体験授業が予定されている。
どの大学に行くかは担任任せなんだけど、生徒各々に封筒が渡され、この中に体験先が記された紙入っているらしい。
僕は何処に行くんだろう。できれば理系がいいんだけど……
東京理系女子大学
は?
通称 “リケジョ”。その名が示す通り理系に特化した大学ではあるんだけど、入学の条件に女子であることが求められる。
うちの高校は理系女子の育成に力を入れているとかで、女子の成績優秀者はリケジョになるってのは聞いてた。
変えてもらわなきゃ。
「先生、女子大は無いんじゃない?」
「何か問題でも?」
「何かって……」
「いいな~姫ちゃん。女子大生か~、俺もそっちに行きてーよ」
「
何言ってるんだよ、
「そうだね。ぼくもそう思うよ」
「でも、
「先生、どういうつもり?」
「……」
まさかとは思うけど、男に戻ったこと忘れてた?
「制服変わってたの気付いてないとか?」
「もちろん気付いていたわよ。でも、
確かに
「そうそう、明日はちゃんと女の子の格好していってくださいね、
「……善処します」
「では、ホームルームはこれで――」
「ちょっと、ちょっと、僕の事はどうするつもり?」
逃げようとしてんじゃねーよ。
「名簿を出しちゃってるし、先方もいろいろと準備をしてくれているみたいだから、今更どうにもできないんじゃないかなぁ」
「どうにもって、じゃあ――」
「そういうことだから、
「宜しくねって、今更着られるわけないじゃん、
「ううっ、言わねーでくれ、姫ちゃん」
「あら、
「そうだね。寧ろぼくはそっちの方が好みだ」
「いや、姫ちゃん。そんな目で見られてもアドバイス出来ることは……、そうだな、パンチラを警戒してるなら、女物を履いとけ」
昨年の夏休み明け、
「履いてたんだ、あの時……」
「頼むからそんな目で見ないで」
◇◇◇
「やっぱ無理だよ、こんなの……」
翌朝、久しぶりにスカートを履いてみたんだけど、やはり股間が気になって仕方がない。
下着はボクサーパンツだよ? 女物なんて無理、無理。よく履いたよな、
ビュー
よりにもよって風も強いし……
「おはよう、
「
「うん……」
スカートを気にしている僕を見てそう言ってくれたんだろうけど、
「あら
「いや、これには事情が……」
「とー、うー♪」
「
なんて言われながら、
「これ履いて。そしたら少しは気にならなくなるでしょ?」
そっか、そういう女子高生いるもんね。ありがとう
「こら、匂いを嗅ごうとしない。ちゃんと洗濯してあるんだから」
ちっ……
「あと、これ」
「どうするの?」
「こうするのよ」
いきなり手にしたパッドを服の中に突っ込んできた。
「ちょっと、
「流石にここまでぺったんこな女子高生なんて居ないでしょ」
最近
「うー」
「止めて
「もう、ブラしてないじゃない。しょうがないなぁ」
そう言って部屋へと戻っていったんだけど、ブラなんてするわけないじゃん。真っ平らだしさあ。
「はい、これ……、貸してあげる」
渡されたのはピンクのブラ。これ、
「もちろん、洗濯してあるから……。ジロジロ見てないで早く着けてきて。中にこれ入れるの忘れないでね」
「あー、あー」
「ほら、早くぅ。遅刻しちゃうよ」
「わかったよ」
でも、このパッドは……。
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