03.04.大切な人
「ブルーダイヤには “大切な人の幸せを願う” って思いが込められているのよ。プレゼントにはいいと思いますよ」
僕は今、元町のジュエリーショップに来ている。
大通りから一本入った路地にあるこじんまりとしたお店なんだけど、何故か引き寄せられるようにこのお店に入っていた。
大切な人の幸せを願う
この石に引き寄せられてたのかなあ……
お店に入って真っ先に目についたネックレス。決して大きな石でもないんだけど、透き通った青が綺麗で、何より込められた思いが心に響いた。
僕の大切な人……、
8月は
このまま買って帰りたいし、なんなら取り置きしておいてもらいたいけど、
「ねえ、こっちは?」
店員さんの説明を遮って、他のネックレスを指差す。四芒星の中心にダイヤモンドがはめ込まれてるデザインのネックレスを。別に適当にってわけじゃない。実際こっちのもいいと思う。透明なダイヤだってだけで。
僕の
でも、一番は
もし二人共こんな病気にならなくて、もし僕が告白していたら……、なんて時々思ったりもする。実際、僕から告白出来るかどうかも微妙なのにね。それに、考えてもどうにもならない事なのに。
僕の心は男のままだ。だから、誰かと付き合うことになるとすれば、それは女の子とだと思う。勿論、心も体も女の子。僕みたいに元は男だったってのも嫌だ。
だから、告白しようとは思えない、
それもあってか恋愛に積極的になろうと思えない。会長だって
逆に、
男子になったんだから、やっぱ女の子と付き合うのかなあ。それとも、男子と?
うーん、気になる。ねえ、
ネックレスを選びながらも、そんな事が頭から離れない。
「そうだね。じゃあ、ちゃんと返すから、今は貸しておいて」
「いいってば」
「そういうわけにはいかないから」
「うーん、どうしてもって言うなら、体で払っちゃう?」
「体、で……」
「えっと……、ごめん」
会長の真似してみたんだけど……、僕にはハードル高かったかな。顔が熱いよ。
◇◇◇
今は、帰りの電車の中。
疲れたのか、僕にもたれ掛かって眠ってしまっている。凄く近い所に
もうちょっとこうしててもいいよね……
手も握っちゃおうかな……
「
「ごめん、えっとこれは……」
寝言……か。どんな夢見てるんだろう。
「だいす……」
うん、僕も大好きだよ。
なーんって。『そんな事言ってない』って怒られるよね。“だいすけ”かもしれないし、“だいするの?”かもしれない。いや、“だいするの?”はないか。ほんと、どんな夢見てるんだろう、
大きく電車が揺れて、
「
「いいよ、そのままで」
「うん、じゃあもうちょっとだけ」
再び僕の肩に頭を乗せてくる。
「
「僕も。又行こうね、
「うん」
繋いだままの手をぎゅっと握ってくれた。このまま……ずっとこうしてたいな。
◇◇◇
「「ただいまー」」
「お帰りなさい。どう? 進展あった? もうキスぐらいしたの?」
ハイテンションな
「ないから。キスとか……してないから」
顔を赤らめながらだけど。
「なんだ、残念っ」
「もう、お母さん、
そう、僕と
「ねえ、
「そうだよ
……恋人同士じゃないんだ。
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