03.03.中華街デート

 いよいよGWに突入。

 母の日が近いからと珍しくとおるから誘ってくれたから、二人で中華街に出かけることになった♪

 まず向かったのは、衣装をレンタル出来て、写真撮影もしてもらえるところ。


 「ねえねえ、二人でチャイナドレス着ちゃおうよ」


 とおるが手に持つのは、赤と黒のチャイナドレス。


 「私は、こっちでいい……」


 私は無難そうな黒いカンフー服を選んだ。


 「えー、似合うと思うのにぃ」


 似合うとかそういう問題じゃなくて。私、男の子なんだけど、今。チャイナドレスなんて無理だよ。

 とおるはヘアアレンジのオプションまで付けて、チャイナ風お団子ヘアーに。


 「とおる……」


 「凜愛姫りあら、かっこいいねっ」


 「うん、ありがと。とおるも凄く可愛いよ」


 「えへへ。伊織いおりに言われると凄く嬉しいよ」


 可愛いというか、ボディーラインが強調されて、スリットから見える白い足も何か……


 「では、こちらへどうぞ」


 ポーズはカメラマンに言われるままなんだけど、結構密着させようとするんだよね。とおるったら甘い香りがするし、躊躇なく私にくっついてくるし。


 「どうしたの? 凜愛姫りあら


 「べ、別に……、何でもない」


 ドキドキしちゃうのは私だけなのかなあ。


 撮影が終わったらそのまま中華街へと繰り出す。衣装は夕方までに返せばいいみたい。


 「じゃあ、いこっか」


 「ちょっと、そんなにくっつかないでよ」


 「いいじゃーん。さっきはもっとくっついてたよ?」


 「あれは……」


 だってカメラマンが……


 「ん? もしかして体が反応しちゃう?」


 「もう、とおるなんか知らない」


 「冗談だってばー。待ってよ凜愛姫りあら


 一度は振り切ったものの、何度も何度もとおるが腕を絡ませて来る。


 「だから、そんなにくっつかないでって」


 「逸れちゃいそうなんだもん。凜愛姫りあらは嫌? 僕とこうしてるの」


 「嫌じゃ……ないけど」


 確かに凄い人混みで逸れちゃいそうなんだけど……

 まあ、そういう理由なら、仕方ないか……。うん、そういう理由なら。


    ◇◇◇


 「母の日のプレゼント、何がいいんだろう」


 「私はいつも花ぐらいしかあげてないけど?」


 「花か……、何か残るものがいいんだけどな……」


 そっか、初めての母の日なんだもんね、とおる


 南門を抜けて、今は元町をぶらぶらしてる。


 「そうだ、ジュエリーは? ネックレスなんてどうかなあ」


 「えー、でも高いんじゃ……」


 「お金は心配しなくていいから、ねえねえ、ちょっと覗いてみようよっ」


 「う、うん」


 あれ、とおるってこんなに積極的だったっけ?

 掴んでた腕をぐいぐい引っ張ってジュエリーショップに向かってっちゃうんだけど。周りからどう見えてるんだろう、私達。彼女におねだりされて嫌々ジュエリーショップに連れて行かれてるって感じかなあ。あはは……


 とおるが向かったのは表通りのお店じゃなくて、何故か一本入ったところにある小さなジュエリーショップ。店頭のポスターなんかも手作りっぽくて、置いてあるパンフレットは間違いなく手作りだ。

 えーっと……、“手作り結婚指輪教室”……。結婚……


 「いらっしゃいませー。あら、お似合いのお二人ね。手作り教室の予約の方かしら?」


 「い、いえ、私達は、そんな……、まだそこまでは……」


 「そこまで?」


 「あっ、いえ……」


 だって、そこのパンフレットには結婚指輪って……


 「ああ、うちでやってるのは結婚指輪だけじゃ無いのよ?」


 「へえっ?」


 「今日はお付き合いを初めたばかりだっていう高校生が来ることになってたから、つい貴方達かと。だって、仲良さそうなんですもの。人違いだったかしら?」


 仲良さそうって、とおるがしがみついてるだけだけど……


 「あの、私達は母の日のプレゼントを探しに……」


 「そうでしたか。ゆっくり見ていって下さいね」


 見えるのかな……、カップルに。とおると……


 「ねえ、これなんてどう?」


 「でもこれちょっと……」


 高いよ。


 「ブルーダイヤには “大切な人の幸せを願う” って思いが込められているのよ。プレゼントにはいいと思いますよ」


 大切な人の幸せ、か……。でもこれは……


 「ねえ、こっちは?」


 店員さんの説明を聞いてるのか聞いていないのか、次は四芒星の中心にダイヤモンドがはめ込まれてるデザインのネックレスを指差してる。これも高い……


 「とおる、それ、10万もしてるよ?」


 「うん、平気平気。初めての母の日だしね」


 そうかもしれないけど……


 「そんなに出せない……かな」


 とおると違って私はアルバイトもしてないから、その金額はちょっとね。


 「お金の事は心配しなくていいから」


 「でも、それじゃ私は……。私のお母さんなのに」


 「僕一人じゃ買いに来れなかったしね。二人からって事でいいじゃん。それに、今は僕の義母かあさんでもあるしねっ」


 「そうだね。じゃあ、ちゃんと返すから、今は貸しておいて」


 「いいってば」


 「そういうわけにはいかないから」


 「うーん、どうしてもって言うなら、体で払っちゃう?」


 「体、で……」


 「えっと……、ごめん」


 顔真っ赤にするぐらいなら言わないでよねっ。

 もう、ほんと今日はドキドキする。


 結局、衣装のレンタルも、母の日のプレゼントも、最後に買ったお土産の月餅の詰め合わせも、費用は全部とおる持ちだった。


 「全部僕がやってみたかったことばっかりだし、いい仕事が見つかったから気にしなくていいよ」


 って言ってたけど何の仕事?

 ずっとパソコンに向かってるみたいだし、変な事始めたんじゃないよね……

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