他人の恋バナは蜜の味???③
「……で、何でそのことを俺に?」
というか、その思い人とやらが誰なのか気になるんだけど……まあ、こういうのセンシティブな話題だろうから流石に聞かないけどさ。
「いえ、その……わ、私、知ってるんですよ。湊が彩芽のことを、す、好きなことを」
…………あ、えと……なんか話がめっちゃ飛躍してる気がしないでもないけど……もしかして、その……新戸さんは、笹根のことが好きってことなのか? 雰囲気的に。
そして、笹根が彩芽のことを好きだということを俺に言ったってことは、もしかして俺がそのことを知ってると知ってたってことか。俺が彩芽に振られたことをバラされたタイミングか昼の時間かにでも聞いて。
……。
…………。
………………で、俺にどうしろと???
いやまあ、新戸さんが笹根のことが好きなことはかろうじてわかった。そして、笹根が彩芽のことを好きなことも知ってるっぽい。
けど……それを知ったところで俺ぁ何も出来ないんだけど。せいぜい「頑張って!」と毒にも薬にもならない応援をすることしか出来んぞ。
「えっと……」
「…………」
そして、質問にようにも新戸さんは顔を真っ赤っかにして俯いちゃってる。あれ、俺がリア充グループだと思ってた人々は、実はほとんど恋愛初心者なわけ? どっちかっていうと異端なのは彩芽の方なの?
もうぼくわかんない! と、投げ出そうとしたタイミングで、ちょうど新戸さんが口を開いた。
「な、なのでっ、その……協力してくださいっっ!」
いやー、めっちゃ直球できたねぇ。相変わらずもろもろ跳ばしてる気がするけど。
「……まあ、協力するのは吝かでは無いんですけど……俺何も出来ませんよ? 笹根の野郎とは昨日初めて喋ったし、俺に出来ることがあると思えないんですけど」
「そ、それでも、ほら……仲良さげじゃないですか」
「…………」
え、俺達仲良さそうに見えてんの? 俺みたいな陰キャぼっちと根っからのリア充が? ……さ、流石にそれは申し訳ないというか……いやまあ
「……わかりました。いいでしょう、協力します」
考えてみれば、笹根は俺のライバルみたいなもんなわけで。新戸さんが笹根を落としてくれるのなら、敵が一人減るってこった。こりゃ乗るっきゃないですねぇ。
「それで、具体的な作戦とかは考えているんですか?」
「ま、まあ一応……ほら、夏休みの序盤に、この近くで夏祭りあるじゃないですか。そこで、その……こ、こ、告白を、と……」
え、待って……それって作戦って言える? どストレート過ぎませんかね? というかほんとに俺要る?
けれども、俺にそれを指摘する勇気がある訳でもなく。
「い、いいと思います、ヨ?」
「…………」
あ、やべ、ちょっと不自然になった。と焦るがもう遅く。
新戸さんに、じぃーっと睨まれた。
「わ、私はこれでも、真剣に恋について悩んでるんですっ! だから、思うところがあるんなら正直に言って下さい!」
「へ、へぇ。了解しやした」
思ったより強めの圧が飛んできて、思わずキャラがぶれ始める。不味い、軌道修正しなければ。
俺はコホン、と咳払いをしてから、新戸さんに向けて質問する。
「新戸さんは、笹根が彩芽のことを好きなことに気が付いているんですよね? それなら、ただ告白するだけで、笹根の心を奪えると、本当に思っているんですか?」
「うぐっ……」
「ほら、もうちょっとゆっくりとアピールしてくとか……」
ん? 関わり皆無の相手にいきなり告って見事フラれたくせに何偉そうに言ってんだって? うるせぇだからこそ経験者として忠告してるんだよっ!
だが、そんな忠告が裏目に出たというべきか。
「……そんなの、ずっと前からしてましたよ。ずっと、ずうっと前から。それなのに湊は彩芽のことばかり見ていて……私の努力も、無駄だったんですかね」
「んなっ……」
儚げな笑みを浮かべる新戸さん。
そんな彼女の姿を見て、思わず、口から声が漏れ出た。
……おい笹根。お前、新戸さんをこんな悲しそうな表情にさせやがって……やっぱりお前は処されるべき存在だ。男の敵だッ! 今度殴るっ!!
「それは、その……なんか、申し訳ないです……なんも知らなかったのに偉そうな口聞いて」
「いや、別にいいですよ。貴方の言いたいことが分からないわけではありませんでしたし」
「…………」
「…………」
なんとなく気まずくなり、お互い黙り込む。え、ちょっと待って沈黙はきついって……今更ながらどうにかしてコミュ力アップしたいぃ。
そんなこんなで俺は言葉を捻り出し、話題転換を狙う、
「そ、そうだ! それで、夏祭りの時は俺は何をすれば?」
「あっ、はい。えっと、高木君には、それとなぁく彩芽と私達を離して欲しいです」
「な、なるほど……」
うん……え、これ結構難しくね? 俺にそんなトーク技術無いんだけど。せいぜい会話を無難につなぐことしかできないと思うんだけど俺。
だが、協力すると言った手前。それにあんな話を聞いた後だと断る気も起きず。「まあなんとかなるさ〜」という適当思考で俺は頷く。
「ありがとうございます」
「いや、そんなお礼を言われるほどのことでも……」
頭を下げようとしてくる新戸さんを手で制しつつ。俺はあることに気が付く。
……もしかしてこれさ。期せずして、俺と彩芽の――夏祭りデートになるんじゃね!?
こうして俺&新戸さんの共同戦線が張られたのであった。
☆あとがき
更新休んでごめんなさい。
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