他人の恋バナは蜜の味???②
笹根に恋愛相談を受けた日の翌日の昼休み。
取り敢えず今のところ返却された答案の中に悲惨な点数のものが無いことに安堵し、脱力していると、一人の女子生徒が昨日の笹根と同様昼休み開始直後に俺の机の前に立った。ああいや、彩芽ではないんだが……それなりの大物である。昨日と同じくらい。……要するに、リア充グループ、もとい笹根の幼馴染ハーレムグループの最後の一人である少女だ。当然ながら、名前は知らない。彩芽以外興味なかったからな俺。
「あの……高木君、今、時間ありますか?」
「……っ!!」
なにっ! 初見で俺の名前を知っていただと……!
感動で泣きそうだよ俺は……。
だが、この名の知らぬ女子生徒は、昨日の笹根と違い、女子なのだ。しかも当たり前のように大和撫子のような美貌をお持ちのようで……想像以上に話しやすかった見た目詐欺の笹根とは違い、こっちは本当に話しにくそうだ。なんというか、美の圧力で。ひえっ。
だから、俺の話す言葉がカタコトになるのもしょうがないわけでして……。
「は、ハイ。ナニカボクニヨウジデモ?」
「? ……ああ、はい。その……ちょっと相談があるんですけど……」
…………え、またですか?
昨日の今日だよ? なに、もしかして最近は相談ブームなの? 俺に相談するような相手いないからそういうのに疎かっただけで。いやでも相談相手が俺なのはおかしいだろ。今まで俺達関わり皆無だったですよね?(錯乱)
とまあ色々言ってるけど、人に頼られるってのは悪い気がしないもんなわけで。
「俺なんかでよければ、全然いいっすよ」
「ありがとうございます」
そういって少女は微笑を浮かべた。うっ、神々しい……。
「じゃ、じゃあ、ここではなんですので、食堂に行ってもいいですか? 相談料として奢らせてください」
「え、あ、はい……って、流石に奢ってもらわなくていいですよ。たかが相談一つでしょう?」
ん? じゃあ笹根はどうなんだって? あれは男だから別だ。それに俺の秘密を暴露するという大罪を犯したからな。やっぱ某ステーキ丼(2500円)を頼むべきだったかもしれん。
俺が普通に遠慮しようとしてもなお奢ろうとする少女を、「黒毛和牛ステーキ丼(2500円)頼みますよ?」「奢ります」「それなら、それにラーメンとデザートも付けますよ?」「奢ります……というか、そんなに食べられないでしょうに」「うぐっ……な、なら、逆に今日はパン一つで済ませるって言ったら?」「貴方がそれでいいなら、それを奢りますよ」「…………、……じゃあ、俺に自分で買わせてくれなかったら食堂の売り場のところで泣いて転がり回ります」「……そこまでいうのなら」と、カッコよく説得して、俺たちは食堂へ向かった。
食堂に行くまでの廊下や、食堂内での鋭くて痛い視線が俺に深々と突き刺さる中、俺は味噌ラーメン(500円)を、新戸さん――これまた移動中に聞いた。フルネームは新戸有咲――は「とろ~りチーズと国産牛100%のハンバーグステーキプレート」(1100円)を注文し、モーゼの十戒の如く割れていく人混みを突っ切って、適当な席に着いた。流石ハーレムグループ清楚担当ってか?(失礼)
「……で、相談でしたっけ」
「はい」
俺は味噌ラーメンをすする。……痛い。視線が痛い。「お前何新戸さんと喋ってるのに呑気にラーメン食ってんだよ一旦死ねば?」という怨念のこもった視線が。あのですね、空腹状態でしかも目の前からい良い匂い漂ってる中、相談受けてる間ずっと昼お預けというのは拷問だと思うんですよね。ええい野次馬よ散れ散れっ!
そんな風に新戸さんの次の言葉を待っていると……新戸さんが、覚悟を決めた顔で俺の目を見据えてきた。
「――私、好きな人がいるんです」
ガタガタガタッ!
人が泣いて転がり回ったり、発狂したり、絶望に打ちひしがれて倒れたりと、一瞬にして食堂はカオスとなる。
みんな元気だなぁ…………あ、唯音じゃん手ぇ振ってみよっかなー……って、何もする前に睨まれてそっぽ向かれちまったぜ。兄ちゃん悲しい。
こんな感じに俺が現実逃避している間にも、その情報が伝わると同時に様々な男子と偶に女子がバタバタと倒れていく。すげぇな新戸さん。陳腐な俺TUEEEアニメ見てるみたいだったわ。
そんな惨状を創り出した本人は、周りの人々のことを気に掛ける暇もなく、「言っちゃった」的な雰囲気で顔をほんのり赤く染めている。え、もしかしてこれって新手の告白なんですか? マジですか???
「……あ、高木君じゃないですよ」
「…………デスヨネー」
……いいもんっ! 僕の好きな人は彩芽だけだし? そんな風に言われたところで傷つかないし? 僕は強い子だからね! ……ぐすん、告白しても無いのにフラれたんだけど。僕前世で何かトンデモナイことやっちゃったのかなぁ?
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