今までの努力は一体……

「ていうか、これからどうすんの? 俺フラれちゃったけど」


 俺は某チョコできのこで山なお菓子をつまみながら、唯音に聞いた。ちなみに俺はきのこ派だ。喧嘩売られたら買うが? たけのこ派の奴ら。


「んー、兄貴が頑張る」

「んな無茶な……」


 フラれたからってそう簡単に諦められはしないけど、だからって終わった恋に執着するのって、なんか女々しくてヤなんだけど。それに、二回目告白したところで結果変わんねぇだろ。


「大丈夫大丈夫。きっとまたフラれるよっ!」

「大丈夫じゃねーだろそれ!」

「え、『フラれるかも……』って心配しなくて済むじゃん。安心じゃん」

「それ、根本的な解決になってないのわかって言ってる……?」


「冗談通じないなー」などと呟きながら、唯音は某チョコでたけのこで里なお菓子を開封した。なぬっ! 敵はここに居ったか!


「実際、二択じゃん? 兄貴が新しい恋を見つけるか、このまま一途に行くかの」

「まあ、そうだな……って、お前が何か行動起こすってのはないのかよ」

「え、だって、兄貴が回避してくれればあたしは何もしなくても回避できるじゃん」

「…………」


 いや、マジでこれ将来的に自宅警備員にしかならない説濃厚になってきてない? 動けよ働けよ。


「つーか、そもそもの話なんだけどさ」

「なんだよ」

「あたしら、なんで結婚する前提なのって話なわけ」

「……つまり?」

「だから、基本的にお互いに結婚する意志があって結婚するわけじゃん。でも、あたしらはお互いにそーゆー気持ち持ってないでしょ?」

「……なるほど。俺達がこのままお互いに結婚したいっていう意志を持たなければ、無理に他の相手を探さなくても結婚は回避できる、と」

「そそ」


 くっ、そこは盲点だったな……。

 運命の相手って言われたせいで何もしなくても結ばれてしまうんだと勝手に思ってたわ。叙述トリックってやつか(違う)。


「……でもさ、何かしら外部からの圧力だったり、それこそお見合い結婚みたいな感じで強制的に結婚させられるって可能性はあるよな。むしろ、神様クソジジイがそう言うくらいだから、強制的に結婚することになるんじゃないか?」

「あたしもそれは考えたけど、それにしたらおかしい点があるわけ」

「おかしい点?」


 唯音は、コップの中に残っていた炭酸水を飲み干してから口を開いた。


「だって、強制的に結婚させられるとして、その理由がないじゃん? お見合いなら『家族全体の利益を考えて~』みたいなのがありえるけど、義理とはいえ兄妹間。身内で結婚する理由なんて無いでしょ」

「あー、確かに」


 俺達が結婚して、そのことを利益に思う奴なんていないしなー。何世代か昔で、その家の血を残すためみたいな理由ならありそうだけど、ここは現代日本だし。


 あれ……ってことは、俺達、結婚することなくね?

 強制させられることも、まあ否定はできないけども可能性は低いし、お互いがお互いのことを好きにならなければ「運命の相手」ってのは破綻するくない?


「……俺達、本当に何もしなくても回避できるのか……俺の告白は一体……?」

「あの告白は無駄じゃなかったでしょ。兄貴が一生独身でよかったんなら別だけど」

「でも、あんなに急ぐ必要なかったわけじゃん。ほら、もう少しじっくり仲を縮めてく感じでさ」

「え、臆病な陰キャコミュ障兄貴にそんなことできるわけ?」

「うぐっ」

「なんなら、告白して初めて話す機会ができたくらいでしょ? それなのに『じっくりと』ね……」

「…………」


 完全に論破されてる……まずい、最近唯音に言い負かされてばっかだわ。あれか、恋愛が絡んでるから必然的に俺の立場が弱くなってるからか。うん、そういうことにしとこう。


「で、その告白に協力してくれた人に、何か言うことあるんじゃないの?」

「くっ……唯音様。ご協力いただき、ありがとうございました……」

「で?」

「お前はどんなに金に執着してるんだよ」


 先程も見た、唯音の作る丸をはたく。感謝はしてるけど、金は払いたくない。実のところ、そろそろ俺の財布が冬眠始めちゃいそうなのよ。

 まあ、もし告白が成功してたら払ってたな。……フラれたけど。


 その時、テーブルの上にあったスマホが震えた。


 ゲームの通知か、まだ仕事場にいるはずの母親から何かメールでも届いたか、と画面を見れば……。



 Ayame:今、時間あったりする?



「……唯音」

「ん? なに」

「……ヘルプ」


 え、女子からのメールって、なんて返したらいいの? 地味に身内以外の異性からメール来たの初めてで、僕どうしたらいいのかわかんない……!


 唯音にスマホの画面を見せると「……別に、無難に何か返せばいいじゃん」とあきれた目を向けられる。うるせぇ。こちとら好きな人からこんな内容のメール来たんだぞ。どうしろってんだ。


 あたふたしながらも必死に文を構築し……。


「……こんなんで大丈夫だと思う?」

「……漂う業務連絡感、なんとかしよ」


 え、そうか?

 ちなみに、俺の考えた文面は以下の通り。


 ShunS:はい。問題ありません。


 ……まあ確かに、業務連絡っぽい気もしないでもない。


「てか、普通に『大丈夫~』とかでいいじゃん」

「え、今日友達になったばっかなのに、距離近くない? キモがられない?」

「でた、コミュ障あるあるの、深く考えすぎるやーつ。実際、自分が考えてるほど相手は気にしてないから」

「……信じるぞ」

「はいはい」


 半信半疑ながらも、俺は唯音の言った通りにメールを送る。


 ShunS:大丈夫~


 Ayame:だったら、ちょっと聞きたいことあるんだけど…


 Ayame:その、どんなラノベが好きなのか、とか…


「唯音! 返事が返って来たぞ!」


 どうやら、キモがられてはなさそうだ。

 こりゃ、唯音に本当に金払う必要でてきそうだな……感謝感謝。




「ねぇ……ほんとに兄貴フラれたの?」

「え、普通にフラれたが?」

「えぇ……」




☆あとがき

間違って本日2話目投稿しました……

ちなみに、説明の必要ないかもしれませんが、駿朔がShunS、彩芽がAyameです。

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