果たしてこいつに頼っていいのだろうか
コンコン、という二度のノックの後、唯音が「……何?」と反応する音が聞こえたが為に、俺は「俺だ。入るぞ」とだけ言って勝手に入らせてもらった。前に無言で入れば腹パン×10を食らったからな。俺が悪いのはわかってるけど、さすがに理不尽すぎんか?
「……兄貴って、もっと妹に対してもデリカシー持った方がいいんじゃない?」
「事前に入るって伝えたからいいだろ」
「私許可してないじゃん」
「まあまあ。細かいこと気にする女は嫌われるぞ?」
「これを細かいことと言える時点で兄貴はモテないと思う」
「余計な……」
余計なお世話だ、と言おうとしたが、こちとら片想い相手に告白するために妹の元に来た身。無駄にヘイトを買うこともないし、「モテない」と言われたのならその部分を改善しなければ。
めちゃくそ不本意ながら、ここは妹の言うことに従った方が正しそうだ。不本意だが。(←これ重要)
「で、何の用? 兄貴居るだけでどんどん空気穢れてくからなるはやで出てって欲しいんだけど」
「え、何俺ウイルスか何か? 義理の兄とはい、せめて人扱いして?」
「細かいこと気にする男も嫌われるよ。それと、早く本題を言えっつー……のっ!」
唯音の言葉と同時に飛んできた拳が、腹にぶち当たる――
――直前で俺は回避した。
「……ふっ、甘いな」
「うっわぁー、めっちゃムカつくんですけ、ど!」
「ぐはぁっっ!」
クソが……折角回避できたと思ってドヤってたのに……不意打ちって卑怯じゃない? 公平性に欠けると思う。
俺が腹を抑えて悶絶する姿を見て満足したのか、「で、用件は?」とドヤりながら言ってきた。その顔歪ませたろか?
けど、俺は我慢が出来る男だ。すぐ手が出るどこかの暴力女と違って、な。
「なあ、唯音も俺と結婚はヤだよな?」
「は? いまさら何言ってんの。もし結婚するってなったら血反吐を吐くくらい嫌」
「くっ……コホン。だったらよ、俺に協力しろ」
思わず足が出そうだったが、我慢我慢。
返答やいかに、と唯音の顔を見ていると、不意にその口元を歪ませた。
「――ああ、もしかして兄貴、告るの?」
「――っ! ばっ、そんなんじゃねーし!? ただ、ちょっと距離を縮めたいなって思っただけだし!?」
いきなり「告る」なんて言われたせいで、自分でも意味わからないほど取り乱す。
ま、まあ? 確かに告白しようとは思ってましたけど?
だけど、ここでそんなこと正直に言えば、煽りに煽られるのなんて目に見えてる。そんな屈辱、耐えられるわけが無いだろ。
とはいえ、時すでに遅く。
「ふーん、兄貴、遂に告るんだ~。ちなみに、告白のセリフとかもう考えちゃってたりするの? どーせ兄貴のことだから、くっさいセリフでも考えてるんでしょ~?」
「っ……」
……くっさいセリフに、赤いバラをもって「私のハートは貴女に撃ち抜かれました。貴女に、私の全てを捧げます」は入りますかー? 入りますねー。冷静に考えたらこれじゃあ最早プロポーズだし。恋は盲目とはよく言ったものだなぁ(遠い目)。
「……あのー、唯音様。私めに、少しでも告白成功確率が上がる方法を伝授していただけますでしょうか……?」
流石の俺でも、これでは告白が成功するのなんて夢のまた夢であることはわかる。
プライドや尊厳を捨ててでも、俺は
――と言うことで、土下座致しました。
「え、マジ? 兄貴、そこまで……愛の力、すごいわー」
「ふっ……愛の力に勝るものなど無いのだよ……」
「……キモ」
おい、俺の
「……まあ、兄貴が告白して成功すれば、あたしも兄貴と結婚するって悲劇を回避できるし、出来る範囲でいいなら協力するよ」
「……さんきゅーな、唯音」
俺との結婚を回避するために告白に協力するという、なんとも複雑な理由ゆえに反応に困るが、一応は協力してくれるということで感謝を述べる。
「んで、唯音先生。僕は何をやったら?」
「……んー、実のところそもそもの素材は悪くないはずないんだけどねー。兄貴、最近運動してないでしよ? 顎の下に贅肉がくっつき始めてるよ」
「っ……失敬な。体育の授業とか、しっかり参加してるぞ」
「いや、それじゃ足りるわけないじゃん。兄貴、バカ?」
「……ごもっともで」
まあ、確かに「最近運動不足だなぁ」とは思ってたよ?
でも、素直に認めたくないのが人情なんだよ。
「だから、とりあえず兄貴は痩せることと……あと、髪の毛長いせいでむさ苦しい雰囲気あるから、短くさっぱりさせた方がいいかな」
「むさ苦しいって……」
「事実だから甘んじて受け入れてよね。逆に言えばそれだけで印象変えれるんだから、まだいい方じゃん」
「ぐぬぬ……」
正論オブ正論なせいで、何にも反論できねぇ……。まさかこいつに言い負ける日が来るとはな。
ただ、こいつは女子なのだ。人のことを躊躇なく蹴るような乱暴者でも、女子なのだ。
告白相手も女子であるからして、女子の意見は重宝されるべき存在。いくら憎いと言えども、大人しく従うしかないのである。
「別に、従わなくてもいいけど? あたしにできるのは精々アドバイスくらいだし、従うか従わないか決めるのは兄貴だから」
「……いや、せっかくの女子目線のアドバイスだ。従わないわけにはいかない」
「ま、それが兄貴の判断なら。あたしは兄貴がフラれても痛くも痒くもないし。むしろ、さっさと告ってフラれてきなって感じ」
「え、何、フラれる前提なの!?」
「私か知るわけないじゃん。バカなの? アホなの?」
「くっ……」
俺が教えを乞う立場なのをいい事に、散々コケにしやがって……。
この恨み、いつか晴らさせてもらうぞ。
「――あ、あと、突然キャラ変するのも止めなよ。さっきの『唯音先生〜』みたいなの。あれ、キモいから」
「んなっ……」
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