幕間

幕間 天界にて

☆まえがき

今回は結構短めです。


「――これでよかったんじゃな?」


 神々や、死者の集まる場所――天界と呼ばれるその場所で、一人の神様がある男の後ろ姿に話しかけた。


「ああ、ありがとうな」

「全く……お主の娘とお主の友人の息子は、お主に似て厄介じゃったのう……」

「ひでぇこと言う爺さんだなぁ」


 そう言って男は振り向いた。


 まだ三十代前半か、二十代後半に見えるこの男。

 ――そう、この男こそが、神のメンタルを散々なものにした張本人である唯音の父親だ。


 その男に向けて、神は大きく溜め息をついた。


「お主が一回きりのお願いと言ったから聞いてやったものの、そうじゃなかったらすぐにここに戻ってきておったぞ? ……じゃが、お主がお願いをしたのもわからなくはないがな」

「俺の娘と、昴の息子を運命の人にする――いい案だったとは思わないか?」

「まあ、悪くはないじゃろうな。……にしては無理がある気もするがのぅ」

「どっちにしろ義理の兄妹だ。結婚を本当にするにしろ、なんにしろ、仲が良くなるには変わりないだろ」


 唯音と駿朔。この二人を運命の相手同士にしたのには、勿論理由があった。

 それも、片方の親である啓一からのお願いだ。


 啓一のお願いは、唯音と駿朔の仲を元に戻すこと。

 そのために神様にお願いをして、二人に伝えてもらったのだ。


 成長するにつれて、二人の距離感はどんどんと離れていくことになった。それは兄妹ならよくあることではある。

 だが、啓一は二人仲良く暮らしてほしかった。だから「お願い」をしたのだ。


「じゃが……『兄貴が運命の相手とか最悪。もう近づかないで!』となる可能性も否定できんじゃろ?」

「………………その時はその時だ」

「ずいぶん間があった気がするのじゃが、本当に大丈夫かの?」

「……あの二人なら、そんなことになるわけがないだろう」

「これは信頼していると見て良いのじゃろうか……」


 神様は少し呆れながらも――既に十分呆れているのだが――二人の観察を続けることにするのだった。


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