ライ麦畑で妻かえて
ジュン
ライ麦畑で妻かえて
妻と別居して五年経つ。原因は私の浮気だ。妻とは十年前に結婚した。恋愛結婚だ。ライ麦畑でプロポーズした。なぜかって?二人は同じ大学の文学部の学生だったから。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を二人とも愛読していた。だが、六年前、私は、ある女性に出会ってしまう。その女性は、美しくやさしい女性で、私は既婚者であることを告げたのだが、それでもいいと言うので、妻にばれないようにその女性と浮気していた。しかし、ずっとばれない浮気はない。妻は感づいた。浮気がばれて大喧嘩。すぐに離婚の話になった。多額の慰謝料を請求する妻。私は、ライ麦畑で憎い妻を、いま一緒にいる女性と取りかえる儀式を執り行うことを要求した。憎たらしい妻を虐めるために。妻との離婚は、近々成立する。待ち望んだ離婚がまもなく
「あなた、お仕事お疲れ様です。コーヒー淹れましたから、一休みしてください」
「ありがとう。作家だからって、自分たちの現況とは真逆の小説を書いてくださいなんて、面倒な仕事を依頼されてしまったなあ」
終わり
ライ麦畑で妻かえて ジュン @mizukubo
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