第119話 緑の守り人
「こっちがアノン芋で作ったスイートポテト」
「甘い! 美味い!」
「こっちはトキン芋で作った大学芋」
「ホクホクしてる~~!」
「二人とも良い食べっぷりだなぁ。これなら芋の栽培は本格的に軌道に乗せて良さそうだ」
大柄な男性がニコニコしながら次々とサーヴしてくれる芋のスイーツを頬張り、ご満悦な声を上げる炎狼と俺の後ろでは、ベオウルフが額に手を当てて大きな溜め息を付いている。
「あのな……二人とも、緊張感は何処に行った」
「「……おでかけ中?」」
「早くお家に帰らせないかな??」
声を揃える俺達に、ベオウルフは更に頭を抱え、リィナとユージェンも苦笑気味の表情だ。ちなみにスズとアクアは俺達と同じテーブルで、一緒にスイーツを貪っていたりする。
「まぁ、焦っても仕方がないからな」
「こればっかりはねえ」
サウザラの首都であるリリは、ホルダほどではないが、人口が多い大きな街だ。
旱魃の原因となっていたダムの破壊については先に報告を飛ばしていて、ニギ村の方にはサウザラの冒険者ギルドから調査隊が入っているらしい。水不足の解決貢献に対しては後から褒賞があるだろうとのことだったが、まずはクエスト放棄のペナルティを受けるのが先だ。
俺達はリリでも大通りの目立つ場所に居を構えていた冒険者ギルドに赴き、パーティリーダーのダグラスが代表して、クエスト放棄の最終的な手続きをする。既に全員の所属ギルドであるホルダの冒険者ギルドからそれぞれに課せられるペナルティについて決定されていたみたいで、何故かひどく緊張した面持ちのギルド職員から別室への移動を促された俺達は、そこで衝撃の事実を告げられた。
準緊急クエストである『水運び』を放棄したパーティメンバーに対するペナルティは、凡そ、予想通りだった。ダグラスを筆頭とした[雪上の轍]の面々には、解決に苦労している、とある厄介な依頼を受託すること。ユージェンとアクアには、ギルドが受け持っている公共事業への奉仕活動を、一か月間請け負うこと。炎狼に対しては、半月間の間、クエスト報酬が半減されること。
しかし、最後に告知された俺のペナルティ内容については、さすがに驚いた。
「――冒険者シオン。あなたに対するペナルティは、ホルダの冒険者ギルドからの【追放】となります」
「……えっ?」
予想外すぎて咄嗟に言葉を返せない俺より先に、我に返ったパーティメンバー達から、激しい抗議の声が上がる。
「オイ、どういうこった!」
「ギルドは何を考えているの。これはさすがに、横暴すぎるわ」
「ひどい! いくらなんでも、あんまりです! おスズさんでも怒ります!!」
「凍らせに、行く?」
「事と次第によっては、クランの力を借りてでも、抗議を行いますよ」
「……ダグ」
言葉を発しないまま、俺にとんでもない告知をしてくれたギルド職員の顔を凝視しているダグラスの肩を、ハルがそっと叩いた。幼馴染に声をかけられ、漸く振り向いた彼の顔面からは、表情が抜け落ちてしまっている。
「ダメだよ、ダグ」
「……何故だ」
首を振るハルに返す言葉も、平坦だ。いつもの快活なダグラスの雰囲気とはかけ離れた、殊更静かな様子だというのに、滲み出る気配がまるで剝き出しの刃のよう。淡々とした殺気を向けられ続けたギルド職員の足は、可哀想な程に震えている。
「彼が決めたことじゃない。上の決定だよ。問い詰めるなら、ホルダのギルドマスターだ」
「……そうか」
後から聞いた話では、この状態に陥ったダグラスを言葉だけで抑制出来るのは、幼馴染のハルだけらしい。……置いていったら駄目じゃん、ハル。まぁ、あの時のハルが、それほどまでに追い詰められていたってことだよな。
ちょっとホルダの冒険者ギルドに先行するから連絡を待っていてくれと言い残し、俺と炎狼を残りのパーティメンバーに任せたダグラスとハルは、帰還石を使って先にホルダに戻ってしまった。
俺は残された面々から口々に「心配はいらない」と慰められたのだが、まぁ確かにかなり驚いたけれど、実はそこまで気にしていなかったりもする。
「ギルドマスター……ブライトさん、だっけ? あんまり変な考え持ってる人には見えないんだよな」
「確かにな。何か、理由があるんじゃないか?」
炎狼も俺と同意見みたいで、まずは焦らず、ダグラス達からの知らせを待とうというスタイルだ。
心配する他のメンバー達を他所に、折角隣国まで来たのだからとリリの街を観光してまわっていた俺達は、そこでスイーツの屋台を開いている[無垢なる旅人]の一人に出会った。
「やぁ! 君達も[無垢なる旅人]出身の冒険者かぁ。俺は
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