第14話 冒険者登録
キャンディを口の中に放り込み、上機嫌のまま「こちらにどうぞ」と俺と炎狼に椅子を勧めてくれた受付嬢は、よく見るとカウンターの下に隠れている腰から下が、美しい鱗に覆われた蛇の姿になっていた。どうやら彼女も、人間ではないらしい。
俺と炎狼は椅子に座り、まずは申請書に必要事項を記入する。まだ転職もしていない俺達が記入するのは、名前と所在地だけだ。申請書を受け取った彼女は早速、ボードに挟んでいた書類をめくった。
「冒険者ギルドで統括していますのは、冒険者のランクと所属クラン、所在、現在請け負っている依頼が主になります。冒険者ランクは最高ランクのSS・S・A・B・C・D・E・Fの8段階に分けられます。最初は誰もが最低ランクのFから登録となりますが、高位の冒険者から推薦を受け、その実力が確認された場合、Cランクから登録されることも可能です。E・Fランクには制約がありませんが、Dランクからは、支払われる報酬の一部を、冒険者ギルドに上納して頂く形になっています」
成る程。それがギルドの運営費になるのかな。
「更にBランクに達しますと、一定期間ごとにギルドから査定が入ります。依頼の達成数、貢献度などに応じて臨時報酬が支払われますが、逆に降格対象となることもありますので、ご注意ください」
「ふむ、シビアなことだ」
炎狼の呟いた感想に、受付嬢は大きく頷く。
「Bランク以上の冒険者となりますと、達成に困難を極める依頼を請け負う機会も増えます。世間からの冒険者ギルドに対する信頼、そして冒険者自身のクオリティを維持する為に設けられているシステムです。ご了承ください」
つまり、冒険者ギルドは国営とは違うと言うことだ。ここら辺はまた後から調べる必要があるか。
「もちろん、冒険者ギルドに対する貢献はデメリットだけではありません。各都市間の通行税免除、ギルド直営宿泊施設に格安で宿泊出来る権利、怪我の治療や呪いの解呪を割引価格で受けられる権利、依頼未達成時の違約金援助など、多数のメリットがご用意されています。そして、冒険者ギルドに所属する冒険者が窮地に陥った場合、上位冒険者を救助に派遣することも可能です。これは通常かなり高額な依頼となりますが、一部依頼金をギルド側で負担できます」
「へぇ、それはありがたいな」
一部負担、という所もよく考えられている。
これが全額本人負担だと途方もない金額になってしまうし、全額ギルド負担であれば、今度は濫用者が出てしまう。一部負担の割合も、冒険者のランクやその時の状況を鑑みて決定するんだろう。
「また、Dランク以上の冒険者の皆様には、緊急任務が届くことがあります。これは冒険者ギルド経由の依頼ではなく、国王直轄で下される任務です。冒険者全体に届くこともあれば、個人指名のこともあります。滅多に無いことですが、その時請け負っている全ての依頼よりも優先される事案となりますので、覚えておいて下さい」
緊急クエストってやつだな。
これは、イベントとかに使われそうだ。
更に幾つか、一般的な倫理面に対する心得を説明される。迷惑行為の禁止や、獲物の横取り禁止などだ。
俺と炎狼が大丈夫だと頷くと、受付嬢はにっこりと微笑み、俺と炎狼に穴の開いたドッグタグの形をしたプレートを差し出した。
何の飾りもない鉄のプレートに刻まれているのは、俺の名前と、縦に5本、クロスさせて2本が刻まれた合計7本の傷。
「新たな冒険者の誕生を、ここに祝福致します。シオン様と炎狼様のご活躍を、冒険者ギルドスタッフ一同、心より応援しております」
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